COMPANY PROFILE / 接着・封止材
ダイマックス
― 光で数秒で固める接着剤・コーティング・封止材と、光源・塗布装置を一体で売る家族経営の会社
Dymaxは、1980年に米国コネチカット州で創業した光硬化(UV・可視光・LED)の接着剤・コーティング・封止材の専門メーカーです。 材料だけでなく、塗布装置と光硬化装置まで自社で作り、「材料と装置を一組で使うと最も性能が出る」という売り方をしています。 電子基板の保護・封止(コンフォーマルコーティング、チップ封止、ポッティング)、基板の補強、医療機器の組立、航空宇宙・防衛、自動車の電装部品が主な市場です。 家族経営の非上場企業で、売上などの財務は公表されていません。本稿では、何を確認でき、何を確認できなかったかを整理します。
- 30秒でわかるDymaxと、接着・封止材での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 接着・封止材にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は接着・封止材で何を目指しているか
- 接着・封止材分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集
- 出典
- 主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるダイマックスと、接着・封止材での立ち位置
トリントン318 Industrial Lane
非上場企業2代目・3代目が運営と同社が説明。財務は非公表
メーカー光硬化の材料と装置を一体で提供
航空宇宙・防衛、自動車電子基板の保護・封止が中心の一つ
Dymaxは「光で固める」ことに特化した、材料と装置の会社です 事実。 接着剤、コーティング、封止材、ポッティング材は、いずれも紫外線・可視光・LEDを当てると数秒で固まる1液タイプで、 光が届かない影の部分には、湿気・熱・活性剤で固める「二重硬化」を組み合わせます。 同社は電子基板の封止・ポッティングのページで「エポキシやシリコーンの置き換え」を掲げ、2026年7月に発売した補強用接着剤では「従来のアンダーフィルに代わる、速くて簡素な方法」と説明しています。 つまり樹脂系の封止材そのものを作る会社で、本シリーズの中でも、電子・封止の核心に最も近い企業の一つです。 半導体パッケージ内部のモールド封止(EMC)や異方導電フィルム(ACF)は、今回確認した公式資料には出てきませんでした 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

Dymaxのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、公式サイトから取得したロゴ画像を
img/dymax_logo.png として設置しています。
表記の注意:社名はDymax Corporationです。創業時は American Chemical and Engineering Company でした(同社の会社概要)。 各地域に現地法人があり、Dymax Europe GmbH(ドイツ)、Dymax Engineering Adhesives Ireland Ltd.(アイルランド)、Dymax Asia Pacific Pte. Ltd.(シンガポール)、Dymax Korea LLC、Dymax UV Adhesives & Equipment(Shenzhen)Co. Ltd. などがあります。 中国では、旧 Dymax Chemical(Shanghai)が2022年1月15日に Hanarey Chemical(Shanghai)へ社名変更し、現在は同社の中国のマスター販売店として説明されています。 同社は Multi-Cure、See-Cure、Ultra-Red、BlueWave など多数の登録商標の製品名を持ちます。製品名は「同社の製品群」として扱い、本稿では特定製品の優劣を論じません。
公式サイト:https://dymax.com/3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
Dymaxの主たる類型はUV硬化・特殊用途メーカーです。従たる類型は特にありません(半導体・電子材料メーカーのように、半導体メーカーの工程に材料を作り込む会社ではなく、 電子機器メーカーの基板の保護・補強・組立に使われる材料と装置を提供する会社です)。 どの材料・用途が中心かを、同社の資料で確認できた範囲で整理します。
| 材料・用途 | Dymaxでの位置づけ | 確認できた一次情報 | 区分 |
|---|---|---|---|
| UV・光硬化の接着剤(構造・医療) | 中心。UV/可視光で数秒で硬化。金属、ガラス、セラミック、プラスチックなどを接着。医療向けはUSP Class VI接着剤を1985年から | 公式サイトの製品・用途ページ、沿革 | 事実 |
| コンフォーマルコーティング(基板保護) | 中心。1液で、光で数秒で硬化し、すぐ出荷できると説明。影の部分は熱・湿気で二次硬化 | コンフォーマルコーティングのページ | 事実 |
| 封止材(チップ封止・ワイヤボンド保護・LED封止) | 中心。チップ・オン・ボード、チップ・オン・フレックス、COB LED向け。1997年に「グロブトップ」封止材を製品化 | 封止材のページ、沿革 | 事実 |
| ポッティング材 | 中心の一つ。10〜30秒で硬化し、治具・炉・ラックが不要。「エポキシとシリコーンの置き換え」と説明 | ポッティング材のページ | 事実 |
| 基板補強(アンダーフィル代替・エッジボンド) | 中心の一つ。2026年7月に9310を発売。リフロー後も密着し、低温で手直しできると説明 | プレスリリース | 事実 |
| 熱界面材料(熱伝導接着剤) | 一部。ヒートシンクを基板に固定する熱伝導接着剤(Multi-Cure)。光・熱・活性剤で硬化 | 熱界面材料のページ | 事実 |
| ガスケット・マスキング材 | 一部。UV硬化のガスケット材(2001年に発売)、水溶性のマスキング材の処方(1996年の特許)、マスキング材の製品カテゴリ | 製品カテゴリのページ、沿革 | 事実 |
| 光硬化装置・塗布装置 | 中心の一つ。スポット、フラッド、コンベア、LEDライン照射器(BlueWave)、塗布バルブ、放射計 | 製品ページ、プレスリリース | 事実 |
| 半導体封止材(EMC)・ACF・はんだ | 同社の資料では確認できず | ― | 未確定/将来 |
4. 会社の規模
Dymaxは家族経営の非上場企業で、売上・利益などの財務は公表されていません。公式資料から確認できる規模を、表1つで示します 事実。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売上・利益 | 非公表。本稿では推計しない |
| 創業・本社 | 1980年に、Andy Bachmann と Clai Bachmann が Specialty Chemical Company の資産を買い取って創業(従業員3人)。本社は米国コネチカット州トリントン |
| 従業員・拠点 | 従業員550人超、世界8拠点(沿革ページ)。2026年7月にメキシコ・ケレタロの流通・技術センターが開所。北米、欧州(ドイツ、アイルランド)、アジア(シンガポール、香港、韓国、深圳)に現地法人 |
| 経営 | Greg Bachmann(Director and Chairman of Dymax Companies。2005年9月から。創業者の次の世代)。2026年初めにChris Ciampiが代行CFOに就任 |
| 特許 | 30件超(沿革ページ) |
| 品質・規制 | ISO 9001:2015の認証を取得し、GHS(化学品の分類と表示の国際基準)に適合(規制のページ) |
| 受賞 | 米誌Inc.の「急成長する非公開企業5,000社」に9回選出、UCONN Family Business of the Year(北米法人)、Singapore SME 1000(アジア太平洋法人、2020年)など |
財務が非公表のため、電子・封止の売上や、材料と装置の売上の比率は確認できません 未確定/将来。 なお同社の公式サイトの拠点の数は、沿革ページで「8拠点」、グローバル拠点のページで「7拠点」と書かれていて、一致していません (拠点一覧には、米国、メキシコ、ドイツ、アイルランド、シンガポール、香港、韓国、深圳の8法人・拠点が載っています)。 本稿は、一覧に載る8拠点を数えました。
5. 接着・封止材にかけているリソース
財務が非公表のため、金額は確認できません。何をどこまで確認できたかを、人・金・外部・大学の4点で整理します。
| 項目 | 確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(研究開発拠点・人員) | 従業員550人超。研究開発は、米国の本社のほか、ドイツ・ヴィースバーデンの研究所(2014年に研究所を収容できる大きな拠点へ移転)、中国・上海の研究開発センター(2017年開設)。社内のApplication Engineering部門が、社内ラボで接着の評価を行う。研究開発人員の総数は非公表 | 事実/非公表 |
| 金(研究開発費・設備投資) | 研究開発費・設備投資の金額は非公表。拠点投資の例:ケレタロの流通・技術センター(2026年7月)、ヴィースバーデンへの拡張(2011年・2014年)、アイルランド進出(2014年) | 事実/非公表 |
| 外部への出資・買収・合弁 | Bomar Oligomersの合弁(1990年)と過半数取得(2000年)、ADAC Technologiesの資産取得(2000年)、Dymax Europeの合弁(1995年)と100%取得(2002年)、Dymax Koreaの合弁(2010年)と完全子会社化(2013年)、Chemetallとの欧州合弁(1994年)。スタートアップへの出資は確認できず | 事実/確認できず(出資) |
| 大学・研究機関・公的資金 | 地元の賞(Connecticut Economic Resource Center、UCONN Family Business of the Year)はあるが、大学や研究機関との共同研究、公的資金(NEDO、EUのプロジェクト、米国の助成など)は確認できなかった | 確認できず |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1980年 | Andy & Clai Bachmannが、Specialty Chemical Companyの資産を買い取ってDymax Corporationを創業 | 光硬化接着剤の事業の出発点 |
| 1981〜1985年 | ヘッドランプ向けの最初のUV硬化構造用接着剤(1981年)、最初のガラス接着剤(1982年)、USP Class VIの医療用接着剤の製品群(1985年) | 自動車・ガラス・医療の3用途の原型 |
| 1986年 | UV装置の製品群を発売。「UV硬化接着剤と硬化装置の両方を製造する唯一の会社になった」と記載 | 材料と装置を一体で売る方針の始まり(会社の記載) |
| 1990〜1995年 | Bomar Oligomersの合弁(1990年)、可視光硬化の製品群(1994年)、Chemetallとの欧州合弁(1994年)、トリガーキュアのコンフォーマルコーティング(1994年)、Dymax Europeの合弁(1995年) | 原料(オリゴマー)の確保と欧州展開 |
| 1997年 | 電子用封止材(グロブトップ材)を製品化。光硬化封止材の特許も取得 | 電子・封止への入口 |
| 1998年 | 二重硬化処方の特許、銅を腐食しない接着剤の特許 | 影の部分も固める技術の基礎 |
| 2000〜2003年 | ADAC Technologiesの資産取得とBomar Oligomersの過半数取得(2000年)、導電性の放射線硬化材料の特許(2001年)、Dymax Europeの100%取得(2002年)、アジア法人の設立(2003年) | 原料と販売網の内製化 |
| 2008〜2009年 | Ultra-Red蛍光接着剤、See-Cure技術(硬化状態を見て確認できる)、LED装置 | 検査しやすさと、LED光源への移行 |
| 2010〜2015年 | 韓国の合弁(2010年)と完全子会社化(2013年)、ヴィースバーデン移転、アイルランド進出(2014年)、Encompass技術、シンガポールにアジア太平洋法人(2015年) | アジア・欧州の拠点拡大 |
| 2017〜2019年 | 上海に研究開発センター(2017年)、タックフリーのフォームインプレイスガスケットと日光硬化コーティングの特許(2017年)、超低粘度コンフォーマルコーティング9452-FC(2018年)、二重硬化アクリル処方の特許(2019年) | コーティングとガスケットの高度化 |
| 2020〜2022年 | 創業40周年(2020年)、NASAの低アウトガス基準(ASTM E595)に適合する二重硬化コーティング9771(2021年)、中国のマスター販売店をHanareyに変更(2022年1月) | 宇宙・航空向け、中国での販売体制の整理 |
| 2026年7月〜9月 | メキシコ・ケレタロに流通・技術センター(7月1日)。基板補強用の接着剤9310を発売(7月30日)。BlueWave FXライン照射器を発売(9月9日)。ウェアラブル向けの電子コーティング9208-Wと再作業できる封止材9209-Wを発売(9月30日) | 米州の拠点強化と、材料・装置の同時の製品拡充 |
7. 今後の計画
さらに強化会長が「これは始まりにすぎない」と述べた(2026年7月)
高速ライン硬化2026年7〜9月の発売内容から(計画の数値は非公表)
2026年10月7〜8日PCB保護と熱応力管理を展示予定
同社の発表は、新製品、拠点の開所、展示会が中心で、売上目標、設備投資額、新たな買収・提携の計画は示されていません 未確定/将来。 ケレタロの拠点は「医療機器、自動車の電子部品、航空宇宙の需要が増えている」ことに対応するもので、会長は「これは始まりにすぎない」と述べています 事実。
次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。
設備投資額/売上目標/半導体パッケージ向け(EMC・ACF)の製品計画/新たな買収・提携の計画/公的資金の受領。
8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| エポキシ・シリコーン・熱硬化の工程を、光硬化で置き換えることを狙っている | ポッティング材のページで「エポキシとシリコーンの置き換え」を掲げ、9310を「従来のアンダーフィルに代わる速い方法」と説明。炉・治具・ラックが不要だと強調 | 事実(会社の説明) |
| 置き換えの訴求点は、性能の最高値より工程の速さと簡素化にある | ページの説明は「数秒で硬化」「炉・治具・ラック不要」「すぐ出荷」が中心で、他の工法に対する性能比較の数値は掲載されていない | 推測 |
| 材料と装置をセットで売ることで、顧客の工程に深く入り込もうとしている | 「材料と装置は互いにぴったり合うように作られている」と説明。1986年から材料と装置の両方を製造。Tridakとの統合サービス、ECTの受託 | 推測 |
| 電子(基板保護・封止)と医療を2本柱と見ている | トップページの記述で、医療機器と電子機器の用途が最初に並び、新製品の発表も電子が多い | 推測 |
| メキシコ・中南米の需要の取り込みを強める | 2026年7月のケレタロ開所、10月のSMTA Guadalajara出展 | 事実(計画) |
「置き換えの訴求点は、性能の最高値より工程の速さと簡素化」と読む根拠は、同社のページが「何ができるか」より「何が要らなくなるか」を強調していることです。 ポッティング材のページは、硬化が10〜30秒で、「治具、ラック、炉」が要らず、床面積や在庫が減る、と書いています。 2026年7月の9310の発表も、「アンダーフィルの追加の工程と複雑さがなくなる」と述べます。 一方、封止材のページに載る性能の記述は、「湿度や熱衝撃に強い」「−40℃でも柔軟」など定性的なものが多く、 アンダーフィルやエポキシ・シリコーンとの性能の直接比較は掲載されていません 事実。 これは同社の主張を否定するものではなく、採用の決め手は工程の効率だと同社自身が考えていると読める、ということです 未確定/将来。
9. 接着・封止材分野の提携マッピング
Dymaxの関係は、原料(オリゴマー)と販売網を、合弁から買収・子会社化で内製化してきた点に特徴があります。 現在の提携は、自動塗布・硬化システムの統合を担うTridak、米州・欧州でのコーティング受託を担うElectronic Coating Technologies、中国の販売を担うHanareyなど、 工程と販売を補う相手が中心です。 一方、半導体メーカーや電子機器メーカーとの共同開発の事例は、公式サイトに社名の入った形では確認できませんでした 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
以下は、同社の用途・製品ページ、技術データシート、プレスリリースの記述です。数値はメーカー公称で、試験法が書かれている場合は併記します 事実。
| 製品群 | 同社ページの記述(メーカー公称) |
|---|---|
| 封止材(チップ封止) | UV/可視光で数秒で硬化し、ポリイミドやPETのフレックス基板への密着が良いと説明。二次硬化(熱または湿気)あり。LED用は耐黄変・光学的に透明。例:9624はCOB LEDの封止用で、公称粘度120 cP。−40℃でも柔軟なチップ・オン・フレックス用の品種もある |
| 封止・ポッティング樹脂 9001-E-V3.1(技術データシートの例) | 化学系はモディファイドウレタン、無溶剤の1液。粘度4,500 cP(ASTM 2556)、ガラス転移点 40℃(ASTM D5418)、弾性率 17 MPa(ASTM D638)、破断伸び 150%(ASTM D638)、硬度 D45(ASTM D2240)、線収縮 2.0%(Dymax標準法 DSTM 614)、吸水 2.6%(25℃・24時間、ASTM D570)。熱衝撃 >2,000サイクル(−40℃〜125℃、直径0.25 milのワイヤ)、85℃/85% RHで >1,000時間。硬化:150 mW/cm²(5000-EC)で30秒(膜厚0.005インチ)。二次熱硬化は110℃で60分、120℃で30分、150℃で15分(2024年11月20日改訂) |
| コンフォーマルコーティング | 1液、UV/可視光で数秒で硬化。影の部分は二次硬化(熱または湿気)。膜厚の目安:51〜510 µm(0.002〜0.020インチ)の品種、最大0.254 mmの品種など。UL 94は品種によりV-0またはV-1。LED(365/385/405 nm)で硬化できる低粘度品種や、TPOとPIP 3:1を含まない品種もある |
| ポッティング材 | UV/LEDで10〜30秒で硬化し、治具・ラック・炉が不要。浅いポッティング(0.25インチ=6 mm)向けと、深部まで硬化する樹脂がある。「エポキシやシリコーンの置き換え」と説明 |
| 基板補強用の接着剤 9310(2026年7月) | 微細ピッチの端子なし部品の補強用。光で数秒で硬化し、二次熱硬化で影の部分も硬化。リフロー後も密着。破断伸び145%で、熱膨張のひずみを吸収。高粘度でチキソ性があり、エッジボンドに向く。比較的低温で手直しできる(メーカー公称) |
| ウェアラブル向け 9208-W・9209-W(2026年9月) | 9208-W:湿気・腐食・熱ストレスのバリアとなる電子コーティング。9209-W:再作業(取り外し・交換)できる封止材。どちらも光+湿気の二重硬化で、IBOAフリー(9209-W) |
| 熱伝導接着剤 | ヒートシンクを基板に取り付ける、チキソ性の高い接着剤。光・熱・活性剤で硬化。光で露出部分をすぐ仮固定し、影は活性剤や熱で硬化する |
| 装置 | スポット、フラッド、コンベア、放射計。BlueWave FX ライン照射器(2026年9月):強度は最大4.2 W/cm²(作業距離25 mm)、長さ75 mmと150 mm、波長は365/385/405 nmから選択、CEおよびUKCAマーク |
| サービス | Application Engineeringによる接着の評価(社内ラボ)、コーティング受託(Electronic Coating Technologies)、自動化システムの統合(Tridak) |
9001-E-V3.1のデータは、封止材の設計思想をよく示しています(本シリーズの技術解説『ガラス転移点とクリープ』『熱膨張係数』『半導体封止材』も参照)。 Tgは40℃と低く、弾性率は17 MPa、破断伸びは150%と柔らかい材料です。 Tgは室温(約25℃)のすぐ上にあり、40℃を超える温度ではゴム状の領域に入るため、高温側の熱膨張はTgより上の係数(α2=180)が効きます。 同社が「高CTE・低Tg」を、部品への応力を下げる特長として掲げる理由は、硬い樹脂は熱膨張や収縮のひずみを部品に直接伝えるが、柔らかい樹脂はひずみを自分で吸収するからです(一般的な説明)。 とくに細いワイヤボンド(このデータシートは直径0.25 milのワイヤで熱衝撃を評価)では、硬い樹脂がワイヤを引きちぎる力を生むため、低弾性率が効きます。 ただし、硬化時の線収縮が2.0%あり、これは基板や部品との界面に残留応力を残しうる値です。柔らかさで応力を逃がす設計と言えます。 なお、この技術データシートのCTEは単位が「mm/m/℃」と印字されており、数値(α1=95、α2=180)の桁から見て単位の誤記の可能性があるため、本稿は単位を断定しません。
もう一つは光で固める材料に特有の課題:影の部分です。光は部品の下や、不透明な部材の裏には届きません。 同社はこれを、光硬化に熱・湿気・活性剤の二次硬化を足す二重硬化で解いています(各ページの記述)。 9001-E-V3.1は二次熱硬化に最大60分の加熱が必要で、「数秒で固まる」のは光が当たった部分だけだという点は、工程設計で見落としやすい点です。 光硬化は、膜厚(データシートの硬化条件は0.005インチ)と光の強度・波長に硬化の深さが依存します(一般的な説明)。
最後に、データシートの注意書きです。同社は「ここに示すデータは、過去の試験に基づく情報提供であり、規格値でも保証値でもない」と明記し、 この製品のデータは「2008年より前に収集」されたものとしています(2024年11月改訂)。 メーカー公称の値は、試験条件と改訂日がセットでないと使えないことを示す好例です。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 財務が見えない | 売上・利益・研究開発費・設備投資がすべて非公表。電子・封止の比率も確認できない | 未確定/将来 |
| 光が届かない部分の硬化 | 光硬化は、影の部分に二次硬化(熱・湿気・活性剤)が要る。9001-E-V3.1では最大60分の加熱が必要で、工程の簡素化という売り文句と両立しない場合がある | 事実 |
| 置き換えの壁 | エポキシ・シリコーン・アンダーフィルを置き換えるには、顧客が信頼性試験をやり直す必要がある。性能の直接比較は同社のページに載っていない | 推測 |
| 技術データの古さ | データシートの数値は「2008年より前に収集」されたものがあり、規格値・保証値ではないと明記されている。最新の組成での値とは限らない | 事実 |
| 材料と装置のセット販売の偏り | 顧客が他社の光源や塗布装置を使う場合の性能や保証の扱いは、確認できなかった | 未確定/将来 |
| 光重合開始剤など原料の規制 | 同社はTPOとPIP 3:1を含まない処方、IBOAフリー、MeHQやBHTの低減などを打ち出す。原料の規制や市場の要求が変わると、処方の見直しが必要になる可能性(規制の内容は本稿では確認していない) | 推測 |
| 拠点・販売網の再編 | 中国の現地法人は2022年に社名変更されHanareyがマスター販売店になった。拠点数の表記(7と8)が公式サイト内で一致していない | 事実 |
| 会社の主張の検証 | 「GHG排出が40%少ないバイオ由来オリゴマー」「エポキシ・シリコーンの置き換え」などは会社の説明で、算定方法や比較条件は確認できていない | 事実(会社の主張) |
12. 用語集
- 光硬化
- 紫外線・可視光・LEDの光を当てると、数秒で液体から固体になる仕組み。光重合開始剤が光を吸収して反応を始める。
- 二重硬化(デュアルキュア)
- 光と、熱・湿気・活性剤など、2つの仕組みを組み合わせて固める方式。光が届かない影の部分も固められる。
- 1液
- 混ぜる必要がない、そのまま使える接着剤・コーティング材。
- コンフォーマルコーティング
- 基板全体を薄い膜で覆い、湿気・ほこり・薬品から守る保護膜。
- グロブトップ
- チップとワイヤボンドを丸ごと覆う、盛り上がった形の封止材。
- ポッティング
- 部品や基板を樹脂の中に埋めて固める封止の方法。
- アンダーフィル/エッジボンド
- チップと基板の隙間を満たす樹脂/チップの周囲だけを接着して固定する方法。どちらも、はんだ接合部を熱ひずみや衝撃から守る。
- Tg(ガラス転移点)
- 樹脂が硬い状態からやわらかい状態に変わる温度の目安。
- CTE(熱膨張係数)
- 温度が上がったときの材料の伸びの割合。α1はTgより下、α2はTgより上の値。
- オリゴマー
- 光硬化樹脂の骨格になる、分子量の小さな高分子。接着剤の硬さや柔らかさを左右する。
- 放射計
- 光硬化の光の強さ(mW/cm²など)を測る計器。ランプの劣化を見つけるのに使う。
- メーカー公称
- メーカー自身が示す性能値。試験条件と改訂日が一緒でないと、他社品と比べられない。

13. 出典
- Dymax History(公式サイト、沿革ページ)。従業員550人超、8拠点、特許30件超、2・3代目の家族経営。 https://dymax.com/about-dymax/history
- Dymax History: 1980年代(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/history?era=1461
- Dymax History: 1990年代(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/history?era=1462
- Dymax History: 2000年代(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/history?era=1463
- Dymax History: 2010年代(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/history?era=1901
- Dymax History: 2020年代(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/history?era=1985
- Dymax Our Company(公式サイト)。創業時の名称、事業の説明。 https://dymax.com/about-dymax/our-company
- Dymax Management Team(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/management-team
- Dymax Global Contacts(公式サイト)。拠点・現地法人、Hanareyへの社名変更。 https://dymax.com/sales-support/contact-us/global-contacts
- Dymax Regulatory(公式サイト)。ISO 9001:2015、GHS。 https://dymax.com/about-dymax/regulatory
- Dymax Sustainability(公式サイト)。環境への取り組み。 https://dymax.com/about-dymax/sustainability
- Dymax Awards(公式サイト)。 https://dymax.com/about-dymax/awards
- Dymax Encapsulants for Microelectronic Component Protection(公式サイト、封止材のページ)。 https://dymax.com/markets/electronics/consumer/encapsulation
- Dymax Potting Compounds For Consumer Electronic Components(公式サイト、ポッティング材のページ)。 https://dymax.com/markets/electronics/consumer/potting-compounds
- Dymax Conformal Coatings for Consumer Electronics PCB Protection(公式サイト)。 https://dymax.com/markets/electronics/consumer/conformal-coatings
- Dymax Light-Curable Materials For Thermal Interfaces(公式サイト)。 https://dymax.com/markets/electronics/consumer/thermal-interface-materials
- Dymax Multi-Cure 9001-E-V3.1(公式サイト、製品ページ)。 https://dymax.com/products/formulations/light-curable-materials/encapsulating/9001-e-v3.1
- Dymax Multi-Cure 9001-E-V3.1 Product Data Sheet(技術データシート、2024年11月20日改訂)。 https://dymax.com/brandfolder/download?fieldIdentifier=file&contentId=3829&filename=asseetFilePlaceholder.pdf
- Dymax Dymax Launches 9310 Adhesive for High-Reliability PCB Reinforcement(プレスリリース、2026年7月30日)。 https://dymax.com/resources/news-and-media/press-releases/electronics/dymax-launches-9310-adhesive-for-high-reliability-pcb-reinforcement
- Dymax Dymax Opens New Distribution and Technical Center in Querétaro, Strengthening Regional Support Across Mexico and Latin America(プレスリリース、2026年7月1日)。 https://dymax.com/resources/news-and-media/press-releases/corporate/dymax-opens-new-distribution-and-technical-center-in-quer%C3%A9taro,-strengthening-regional-support-across-mexico-and-latin-america
- Dymax Dymax Expands Light-Curable Product Portfolio for Consumer Wearable Assembly(プレスリリース、2026年9月30日)。 https://dymax.com/resources/news-and-media/press-releases/electronics/dymax-expands-light-curable-product-portfolio-for-consumer-wearable-assembly
- Dymax Dymax Launches BlueWave FX Line Emitters to Boost Throughput in High-Speed Linear UV/Visible Curing(プレスリリース、2026年9月9日)。 https://dymax.com/resources/news-and-media/press-releases/equipment/dymax-launches-bluewave-R-fx-line-emitters-to-boost-throughput-in-high-speed-linear-uv-visible-curing
- Dymax Dymax to Showcase Light-Curing Technologies for PCB Protection and Thermal-Stress Management at SMTA Guadalajara(プレスリリース、2026年9月24日)。 https://dymax.com/resources/news-and-media/press-releases/trade-show/dymax-to-showcase-light-curing-technologies-for-pcb-protection-and-thermal-stress-management-at-smta-guadalajara
- Dymax Conformal Coating Services for Electronics Applications(公式サイト、サービスのページ)。Electronic Coating Technologies。 https://dymax.com/services/coating-services
- Dymax Automated and Robotic Dispensing and Curing System Design and Implementation(公式サイト、Tridakのページ)。 https://dymax.com/services/tridak-system-integration
- Dymax Working with Dymax(公式サイト)。Application Engineeringと社内ラボ。 https://dymax.com/about-dymax/working-with-dymax
- Dymax 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://dymax.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の内容は、Dymaxの公式サイトと公式プレスリリース、技術データシートに基づきます。同社は家族経営の非上場企業で財務を公表していないため、調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の性能値は同社の製品ページ・技術データシートのメーカー公称で、規格値・保証値ではありません。