INSTITUTION PROFILE / 接着・封止材
ULソリューションズ
― 材料の難燃性などを試験・認証し、製品の市場投入の「関門」になる米国の認証機関
UL Solutionsは米国イリノイ州に本社を置く、製品の試験・検査・認証を行う民間企業で、2024年4月にニューヨーク証券取引所に上場しました。 接着剤や封止材そのものを作る会社ではありません。 接着・封止材との接点は、材料の燃えやすさ(UL 94)や、電気機器に使う高分子材料の評価(UL 746)を試験し、合格した材料に認証(Yellow Card)を出すことです。 電気機器メーカーが工場で使う材料にUL 94の等級を求めるため、材料メーカーにとっては、取引に入るうえで事実上の関門になる場面があります。 本稿では、その影響力の種類と届く範囲を、公式資料で確認できた範囲に絞って整理します。

- 30秒でわかるUL Solutions
- どんな機関か ― 影響力の「型」
- 接着・封止材で何をしているか
- 影響力の範囲(権限と地域)
- 関わっている組織と認証の流れ
- 今後の見通し
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるULソリューションズ
UL SolutionsはISOのような規格団体ではなく、規格に基づいて試験し、合格を証明して対価を得る事業者です。 UL 94のような規格を策定するのは、同社を支配する非営利のUL Standards & Engagementという別の組織で、同社の年次報告書も両者を区別して書いています 事実。 ULの解説資料によると、UL 94の等級が付いた材料の顧客は主に電気機器・電子製品の最終メーカーで、それらの会社は工場の生産でUL 94の等級付きの材料を使うことが求められていると書かれています。 この仕組みのため、材料メーカーにとっては事実上、取っておく必要のある証明になります 事実。
2. どんな機関か ― 影響力の「型」
接着・封止材の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では製品を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。 UL Solutionsは営利企業ですが、規格に基づく認証を通じて市場に影響する点で、主に「標準」の型に当てはまります。
3. 接着・封止材で何をしているか
UL Solutionsは、1941年からプラスチックの試験を行っていると自社サイトに書いています 事実。 接着・封止材に関わる仕組みは、大きく3つあります。
| 仕組み | 中身(UL Solutionsの公式資料の表記) | 接着・封止材との接点 |
|---|---|---|
| UL 94(難燃性) | UL 94は「Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」。小さな炎や放射熱に対する高分子材料の燃えやすさを、研究室の制御された条件で調べる小規模試験。IEC 60695-11-10、ISO 9772/9773などと整合している | 電気機器の部品に使う樹脂材料の等級(HB、V-0、V-1、V-2など)。封止材や接着剤を含むかは、確認した資料に書かれていない |
| UL 746シリーズ(高分子材料の評価) | UL 746A(短期の特性)、746B(長期の特性・熱老化)、746C(電気機器での使用)、746D(成形部品)、746E(工業用積層板・プリント配線板用材料など)、746F(フレキシブル回路用の誘電体フィルム)、746G(非フッ素・非PFAS材料の評価)など | プリント配線板の材料(746E)、ポリイミドなどのフレキシブル回路用フィルム(746F)、PFASを含まない材料の評価(746G)は、電子実装の材料と重なる |
| Yellow Card(プラスチック認証) | 高分子材料がUL Recognized Component Markを得ると、UL Solutionsが自動的にYellow Cardを発行する。材料の安全・性能に関わる特性を載せた情報カードで、UL Product iQとUL Prospectorのデータベースに掲載される | 材料メーカーは認証を宣伝に使え、材料を使う側は再試験を省いて、製品側の認証までの道のりを短くできる場合がある(UL Solutionsの説明) |
UL 94は、小さな炎に対する、決められた大きさの試験片の燃え方を見る試験です。 ULが公開した解説資料は、UL 94の結果は厚さ13.0mmを超える材料や表面積が1平方メートルを超える材料には、ほとんど当てはまらないと書いています。 また、建築基準法に相当するモデルコード(米国の建築・消防の標準規則)は、小規模なUL 94の等級を認めておらず、UL 94の等級で他の火災試験を代用する技術的な根拠はないとしています (この資料は2007年のニュースレターの再掲で、当時から変更があり得ると注記されています) 事実。 封止材(エポキシ樹脂など)やポッティング材の難燃性を評価するとき、UL 94の等級は材料同士を比べる目安にはなりますが、最終製品の安全は別の規格と試験で確かめます。 接着・封止材の難燃性については、技術解説の半導体封止材や車載用シリコーンと封止材も参照してください。
4. 影響力の範囲(権限と地域)
| 観点 | UL Solutionsが持っているもの | 持っていないもの |
|---|---|---|
| 権限 | 規格に基づいて試験し、認証し、マークの使用を認める権限。認証後も、検査・監視を続けないとマークを使えない(常時の検査が条件) | 法律を決める権限。認証を一般的に義務づける権限。UL 94などの規格の策定は、非営利の別組織が担う |
| 地域 | 顧客は110か国以上、8万社超。27か国に87の試験・認証拠点(2025年12月末)。UL Recognized Componentマークは、ISOやIECの要求への適合も併記できる | 各国の法令上の認証機関としての指定は国ごとに違い、本稿では国別の扱いを確認していない |
| 接着・封止の守備範囲 | 高分子材料の難燃性・電気特性・老化などの試験と認証(UL 94、UL 746)。プリント配線板用材料や、PFASを含まない材料の評価も扱う | 接着強さや半導体封止材の信頼性(温度サイクルなど)の規格。確認した資料に接着剤専用の認証制度は見当たらなかった |
| 規模 | 常勤14,587名、2025年の売上30.53億ドル。うち工業部門(プラスチックや電線を含む)が13.41億ドルで売上の44% | 接着・封止材だけの売上や試験件数は公表されていない |
UL Solutionsの年次報告書は、認証の売上のうち、新規の認証試験が約28%、マークを使い続けるための継続的な検査などが約33%と書いています 事実。 つまり認証は一度きりではなく、マークを使い続けるために検査と監視が続く仕組みです。 なお、法令が認証を要求するかどうかは国や用途で異なり、本稿では国別に確認していません。 国際規格が任意採用である点は、本シリーズのISOの機関解説を参照してください。
5. 関わっている組織と認証の流れ
UL Solutionsの年次報告書によると、UL Research Institutesは非営利で、人の安全に対する脅威の研究を担い、UL Standards & Engagementの唯一の会員です。 UL Standards & Engagementも非営利で、研究の成果を安全規格の策定などに結びつけます。 UL Solutionsは、UL Standards & Engagementが株式の61.6%、議決権の94.1%を持つ(2025年12月31日現在)上場会社です 事実。
本シリーズの企業解説に出てくる接着剤・封止材メーカーが、個別にどのUL認証を取得しているかは、今回確認した公式資料からは分からなかったため、本稿では書きません。 UL ProspectorやUL Product iQで個別の材料の認証情報を検索できますが、本稿では個別の材料の確認は行っていません。
6. 今後の見通し
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| UL 746Gは、フッ素を含まない材料(フッ素50ppm以下)とPFASを含まない材料(特定PFAS各25ppb未満・合計250ppb以下)を評価する枠組み。PFAS規制に対応する材料の需要を背景にしている | UL Solutionsの「Understanding the UL 746 Series」ページ | 事実 |
| 接着剤や封止材のPFAS不使用の証明に、この枠組みが使われる場面が増える可能性がある | 上記ページの「ongoing market demand for non-PFAS materials」という記述。接着剤・封止材への適用は確認できていない | 推測 |
| UL Solutionsは2026年の第1四半期から、事業の区分(セグメント)を再編した。新しい区分の中身は確認できなかった | 2025年度Form 10-K(Note 22 Subsequent Events に詳細があるとの記載) | 未確定/将来 |
7. 用語集
- TIC
- Testing, Inspection and Certification。試験・検査・認証の事業。
- UL 94
- プラスチック材料の燃えやすさを小さな炎で調べる試験規格。HB、V-0、V-1、V-2などの等級で表す。
- UL 746
- 電気機器に使う高分子材料の評価をまとめた規格群。A〜Hなど複数の部に分かれる。
- Yellow Card
- UL Recognized Component Markを得た高分子材料について、UL Solutionsが発行する特性情報カード。
- PFAS
- 有機フッ素化合物の総称。UL 746Gが、含まない材料の評価方法を定めている。
8. 出典
- UL Solutions Inc. Form 10-K(2025年12月期。米国証券取引委員会に2026年2月19日提出)。従業員数、売上、顧客数、拠点数、上場日、UL Standards & Engagementの持株比率と議決権、サービス区分の構成比、セグメント再編。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm
- UL Solutions Understanding the UL 746 Series of Standards(UL 94、UL 746A〜746Gの内容、PFAS評価の基準)。 https://www.ul.com/services/understanding-ul-746-series-standards
- UL Solutions UL Solutions Yellow Card Plastics Recognition Program(1941年からのプラスチック試験、Recognized Component Mark、Product iQ/Prospector掲載、再試験の省略)。 https://www.ul.com/services/ul-solutions-yellow-card-plastics-recognition-program
- UL Solutions How to Read the UL Solutions Yellow Card(Recognized Component Markで自動発行、White Cardとの関係)。 https://www.ul.com/resources/how-read-ul-yellow-card
- UL(The Code Authority、2007年第3号の再掲) Understanding UL 94 Certifications and Limitations(UL 94は小規模試験、建築のモデルコードでは認められない、顧客は電気機器メーカー)。 https://code-authorities.ul.com/wp-content/uploads/2014/04/ul_UL94CertificationsAndLimitations.pdf
- UL Solutions About(130年以上の歴史、110か国超の顧客)。 https://www.ul.com/about
9. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 本社所在地、1894年の起源、2024年4月16日の上場、常勤14,587名・パート264名、売上30.53億ドル、工業部門13.41億ドル(44%) | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm |
| 顧客8万社超・110か国超、27か国87拠点、認証試験約28%・継続認証約33%の構成比、マーク使用に継続検査が必要 | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm |
| UL Standards & Engagementが株式61.6%・議決権94.1%を保有し、安全規格の策定を担う。UL Research Institutesが唯一の会員 | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm |
| UL 94の題名・IEC/ISOとの整合、UL 746A〜746Gの内容、非フッ素・非PFASの基準値 | 事実 | 出典2 https://www.ul.com/services/understanding-ul-746-series-standards |
| 1941年からプラスチックを試験、Recognized Component Mark、再試験の省略 | 事実 | 出典3 https://www.ul.com/services/ul-solutions-yellow-card-plastics-recognition-program |
| Yellow CardはRecognized Component Markで自動発行、Product iQ/Prospectorに掲載 | 事実 | 出典4 https://www.ul.com/resources/how-read-ul-yellow-card |
| UL 94は小規模試験、13.0mm・1平方メートルの適用限界、建築モデルコードでは認められない、顧客は電気機器メーカー | 事実 | 出典5 https://code-authorities.ul.com/wp-content/uploads/2014/04/ul_UL94CertificationsAndLimitations.pdf |
| 機関の4つの型の区分、図2の整理 | 本稿の計算 | 本稿による整理 |
| UL 94・UL 746が封止材や接着剤を対象に含むか、個別メーカーの認証取得状況、接着剤専用の認証制度の有無 | 未確定/将来 | 確認した公式資料に記載なし。本稿では推計しない |
| 2026年からのセグメント再編の中身 | 未確定/将来 | 出典1にNote 22への参照のみ。本稿では内容を確認していない |
| 第6章のPFAS不使用証明の需要拡大 | 推測 | 出典2の記述からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値はUL Solutionsの年次報告書(Form 10-K)と公式サイト、ULの公開資料に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。