INSTITUTION PROFILE / 接着・封止材
電子部品・実装技術会議(ECTC)
― 先端パッケージの接着・封止の新しい材料が発表される、半導体実装の国際会議
ECTC(Electronic Components and Technology Conference)は、IEEE Electronics Packaging Society(EPS)が主催する、半導体実装・電子部品の国際会議です。 規格や認証を決める機関ではありません(公式資料にそうした権限の記載はありません)。 接着・封止材との接点は、アンダーフィル、モールド材、導電性接着剤、仮接合用接着剤、ダイアタッチ材などの新しい材料と評価が、論文として発表され、議論される場であることです。 第76回(2026年5月)の登録参加者は2,730人、技術論文は420件でした。 本稿では、学会がどこまで業界に影響を持つのかを、会議の公式資料で確認できた範囲に絞って整理します。

- 30秒でわかるECTC
- どんな機関か ― 影響力の「型」
- 接着・封止材で何をしているか
- 影響力の範囲(権限と地域)
- 関わっている組織と流れ
- 今後の見通し
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる電子部品・実装技術会議(ECTC)
ECTCは「何が正しい材料か」を決める機関ではなく、「どんな材料と評価が出てきているか」が分かる場です。 EPSは、自らの目的を「科学的、文献的、教育的な性格のもの」と説明しています 事実。 それでも接着・封止材の技術者にとって重要なのは、チップレットやパネルレベルパッケージなど、次の世代のパッケージで要求される材料の課題が、毎年この場で出そろうからです。 第77回の論文募集要項は、Materials & Processingの対象に、キャピラリ・モールド・フィルム・ウェハレベルのアンダーフィルや、導電性・非導電性接着剤、仮接合用接着剤などを挙げています 事実。
2. どんな機関か ― 影響力の「型」
接着・封止材の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では製品を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。 ECTCは、会議と論文を通じて研究者・技術者を引き合わせる「場」の型です。
3. 接着・封止材で何をしているか
ECTCが接着・封止材に関わる仕組みは、論文発表・教育講座・展示の3つです。
| 仕組み | 中身(ECTCの公式資料の表記) | 接着・封止材との接点 |
|---|---|---|
| 論文の募集(第77回) | Materials & Processingの対象:ポリマー・はんだ・液体金属などのTIM、ダイアタッチ、低誘電の誘電体、キャピラリ・リワーク可能・モールド・フィルム・ウェハレベルのアンダーフィル、高熱伝導材料、仮接合用接着剤(UV・熱で剥離)、導電性・非導電性接着剤、界面の密着材料など | 接着・封止材のほぼ全分野が、募集トピックに入っている。抄録の締切は2026年10月5日、著者への通知は12月7日 |
| 発表の例(第76回) | Session 9「Advances in Thermal Materials and Encapsulation」(2026年5月27日午後、Materials & Processing)。例:高熱伝導モールド材(SPIL、Sumitomo Bakelite、MediaTekなど)、封止材向けの負熱膨張フィラー(Mitsubishi Chemical)、低反りの複合モールド材(ソウル大学) | ほかにも、Mitsui ChemicalsとASEの新しいポリマー接着剤によるCu/ポリマーのハイブリッド接合、Nopionの自己組織化接着剤による超微細接続、NISTによるパッケージ用エポキシの反応経路の制御、Intelの超大型ダイの封止、の発表がプログラムに載っている |
| 教育講座(PDC) | 第76回は16の講座。そのうちPDC 09「Polymers for Advanced Packaging」(講師:Jeff Gotro、InnoCentrix) | 高分子材料の基礎を学ぶ場。ほかに接合・信頼性・熱管理の講座もある |
| 展示 | 第76回の出展者一覧に、Henkel、Indium Corporation、DELO Industrial Adhesives、Dow、AI Technologyなどの材料メーカーが載っている。出展者は136社 | 各社が自社紹介文で、接着剤、封止、TIM、シリコーン材料を挙げている(メーカー自身の紹介) |
Session 9の発表題目を見ると、熱伝導率・熱膨張・反りが封止材の主要な課題として並んでいます。 技術解説のモールディング、熱膨張係数、半導体封止材で扱う課題が、論文として毎年更新される場です 事実。 ただし、論文は研究段階の結果が多く、発表された材料が量産で採用されるかどうかは、論文からは分かりません。 また、接着強さの試験方法のような測り方の標準は、ISOやSEMIなど別の機関が定め、ECTCはそれを定める場ではありません (本シリーズのISO、SEMIの機関解説を参照)。
4. 影響力の範囲(権限と地域)
| 観点 | ECTCが持っているもの | 持っていないもの |
|---|---|---|
| 権限 | プログラム委員会が発表を募り、セッションを編成し、賞を出す。Intel Best Student Paperなど、論文の賞もある | 規格や認証を定める権限、法令を決める権限(確認できなかった) |
| 地域 | 第76回の参加者は29か国から。米国で開催(2026年オーランド、2027年デンバー)。EPSは米国・欧州・アジア太平洋に支部を持つ | 各国の法令上の位置づけ。開催は米国内(2026年・2027年) |
| 接着・封止の守備範囲 | 材料と加工、パッケージング技術、フォトニクス、信頼性など、半導体実装の全体。接着・封止はその一部 | 接着剤・封止材だけの会議ではない。論文数のうち接着・封止の比率は公表されていない |
| 規模 | 登録参加者2,730人、技術論文420件、出展者136社、プログラム委員会240人超(第76回・第77回の募集要項) | EPSの会員数は、確認した公式ページに記載がなかった |
ECTCの公式資料には、規模の数字が資料ごとに少し違います。 開催前のプログラムは「約450件の論文」、開催後の公式サイトは「252件の発表と115の出展者」、第77回の募集要項は「420件の論文、136の出展者、登録2,730人」と書いています 事実。 数え方(口頭発表だけか、ポスターを含むか、時点がいつか)の違いと考えられますが、公式資料から断定はできません 未確定/将来。本稿では、開催後にまとめられた第77回の募集要項の数字を使いました。
5. 関わっている組織と流れ
EPSの公式ページによると、EPSはIEEEの38の技術学会の一つで、会議・ワークショップ・査読付きの論文誌を通じて情報を発信します。 EPSの旧称はCPMT(ECTCの公式ページに「formerly CPMT」と記載)です 事実。 ECTCの運営は、200人超(公式サイトのAboutの記載)〜240人超(第77回の募集要項の記載)の技術者・研究者の委員が担います。 接着・封止材メーカーが論文発表や展示で参加していることは第3章のとおりですが、各社がどの委員会に委員を出しているかは、今回確認していません。
6. 今後の見通し
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 第77回は2027年6月1〜4日、コロラド州デンバー(Gaylord Rockies Resort & Convention Center)で開催予定。抄録の締切は2026年10月5日、著者への通知は2026年12月7日 | ECTCの公式サイト、第77回の論文募集要項 | 未確定/将来 |
| 第76回のプログラムは、封止材の課題として熱伝導率・低反り・熱膨張を挙げた発表が多く、この傾向は第77回の募集要項の対象(高熱伝導材料、反り制御、仮接合)にも続く | 第76回の最終プログラム(Session 9)、第77回の募集要項のMaterials & Processing | 推測 |
| パネルレベルの統合が特別セッションの主題になっており、パネル向けの封止・接着材料の発表が今後も増える可能性がある | 第76回の特別セッション「New Packaging Technologies for Panel Level Integration」の記載と、第77回の募集要項(パネルレベルパッケージを対象に含む) | 推測 |
7. 用語集
- IEEE EPS
- IEEE Electronics Packaging Society。電子パッケージの研究者・技術者の学会で、旧称はCPMT。
- PDC
- Professional Development Course。会議の期間中に開かれる、1日単位の技術講座。
- アンダーフィル
- フリップチップ接続のバンプ周りに充填する樹脂。キャピラリ型、モールド型、フィルム型などがある(本シリーズの技術解説:アンダーフィル)。
- ダイアタッチ
- チップを基板やリードフレームに接着する工程と材料(本シリーズの技術解説:ダイアタッチ)。
- TIM
- Thermal Interface Material。熱を逃がすために部材の間に挟む材料(本シリーズの技術解説:熱界面材料TIM)。
8. 出典
- ECTC トップページ(第77回の日程・開催地、抄録の日程、第76回の概要)。 https://ectc.net/
- ECTC About ECTC(IEEE EPS〔旧称CPMT〕が主催、対象分野、200人超の委員、IEEE Xploreへの案内)。 https://ectc.net/about/
- ECTC 76th ECTC Highlights(252件の発表、36のセッション、115の出展者、特別セッション)。 https://ectc.net/76th-ectc-highlights/
- ECTC 第76回の最終プログラム(2026年5月26〜29日・オーランド、約450件の論文、Session 9、PDC一覧、出展者一覧)。 https://ectc.net/wp-content/uploads/2026/05/76-ECTCFinal-Web.v2.pdf
- ECTC 第77回の論文募集要項(登録参加者2,730人・29か国、420件の論文、136の出展者、918件の抄録、委員240人超、Materials & Processingの対象)。 https://ectc.net/wp-content/uploads/2026/08/77thCallforPapers-Web1.pdf
- IEEE Electronics Packaging Society About(IEEEの38の技術学会の一つ、目的、支部、組織)。 https://eps.ieee.org/about/
9. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 第77回の日程・開催地、抄録の締切(2026年10月5日)・通知(12月7日) | 事実 | 出典1 https://ectc.net/ |
| IEEE EPS(旧称CPMT)が主催、委員200人超 | 事実 | 出典2 https://ectc.net/about/ |
| 第76回の開催後の数字(252件の発表、115の出展者) | 事実 | 出典3 https://ectc.net/76th-ectc-highlights/ |
| 第76回の日程・会場、約450件の論文、Session 9の発表題目、PDC 09、出展者 | 事実 | 出典4 https://ectc.net/wp-content/uploads/2026/05/76-ECTCFinal-Web.v2.pdf |
| 登録参加者2,730人・29か国、420件の論文、136の出展者、918件の抄録、委員240人超、Materials & Processingの対象 | 事実 | 出典5 https://ectc.net/wp-content/uploads/2026/08/77thCallforPapers-Web1.pdf |
| EPSはIEEEの38の技術学会の一つ、目的は科学的・文献的・教育的、支部は米国・欧州・アジア太平洋 | 事実 | 出典6 https://eps.ieee.org/about/ |
| 機関の4つの型の区分、図2の整理 | 本稿の計算 | 本稿による整理 |
| 公式資料ごとの数字の違いの理由、論文中の接着・封止の比率、EPSの会員数、第1回の開催年、規格・認証の権限の有無 | 未確定/将来 | 確認した公式資料に記載なし。本稿では推計しない |
| 第6章の材料課題の傾向とパネル向け材料の発表の増加 | 推測 | 出典4・5の記述からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値はECTCの公式サイトと公式PDF、IEEE EPSの公式サイトに基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。