TECHNOLOGY EXPLAINER
接着強度試験
― 「N/mm²」は、条件つきの数字である
接着強度は、1つの量ではありません。力のかけ方(せん断・はく離・引張・衝撃)ごとに、ISO・ASTM・JIS の別々の試験法があります。 規格の抄録は、試験手順が設計情報を与えるものではないと明記しています。 同じ接着剤でも、被着体・前処理・硬化・温度・試験法が変われば、数字は何倍にも動きます。数字より先に、破面を見る必要があります。

- 接着強度試験とは何か(3行でつかむ)
- 試験の地図 ― 力のかけ方で規格が分かれる
- せん断試験 ― 重ね合わせ試験片は何を測っているか
- はく離試験 ― 「応力」ではなく「幅あたりの力」
- 引張・へき開・衝撃・クリープ・疲労
- 素材技術者の視点①:数字より先に破面を見る
- 本稿の計算:同じ接着剤で、数字はどれだけ動くか
- 素材技術者の視点②:数字を作っているのは試験片・前処理・硬化・環境
- 劣化試験 ― 湿熱が最も効く
- ばらつきと報告のしかた
- 電子部品の例:ダイシェア試験
- 課題・確認できなかった点/用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・提案であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
接着強度などの値は試験法・条件・出所とセットで書き、メーカーのデータシートの値はメーカー公称(代表値)と明記します。規格の本文は有料のため、番号・題名・適用範囲(公式ページに載る範囲)にとどめています。特定の製品や企業の優劣を論じる記事ではありません。
1. 接着強度試験とは何か(3行でつかむ)
「接着強度」と聞くと、1つの数字を思い浮かべがちです。しかし接着部の壊れ方は、力のかけ方で大きく変わります。 面に沿ってずらす力(せん断)、端から順にはがす力(はく離)、面に垂直に引き離す力(引張)、き裂を開く力(へき開)、瞬間的な力(衝撃)、繰り返す力(疲労)、長時間かけ続ける力(クリープ)。 そのそれぞれに、ISO・ASTM・JIS の試験法があります。
- 1つの量ではない:せん断強さ(N/mm²)とはく離強さ(N/mm、幅あたりの力)は、単位からして違います。同じ接着剤の2つの数字を、大小で比べることはできません事実(第4章)
- 設計値ではなく比較のための数字:ASTM D1002 は、この試験が主に比較のためのものであり、得られた値を構造接合部の設計許容応力として誤用すると事故につながりうる、と明記しています。ISO 4587 の抄録も、この試験手順が設計情報を与えないとしています事実
- 数字は系の合成値:同じ接着剤でも、被着体・前処理・硬化条件・試験温度・試験法で数字が何倍にも動きます(3M・ヘンケルの技術資料、第7章)。数字だけが一人歩きすると、再現できません事実
接着強度の数字は、接着剤の性質ではありません。「接着剤+被着体+前処理+硬化+試験条件」の合成値です。 そして、その数字がどこで壊れた結果なのか――凝集破壊か、界面破壊か、被着体破壊か――を添えて、はじめて意味を持ちます。
なお「接合強度試験」という語は、溶接・はんだ・ねじ締結・かしめなども含む広い言い方として使われます(本記事による解説)。 本稿が扱うのは、接着剤で貼り合わせた接合部の強度試験です。接着剤の種類や設計は、本シリーズ「接着剤」編で扱います。
2. 試験の地図 ― 力のかけ方で規格が分かれる
主な規格の番号と題名、現在の状態を表にまとめます。規格の状態は、各団体の公式ページを2026年10月に確認した時点のものです事実。
| 試験 | 規格(番号・版) | 題名(公式ページの表記) | 状態 |
|---|---|---|---|
| せん断 | ISO 4587:2003 | Adhesives — Determination of tensile lap-shear strength of rigid-to-rigid bonded assemblies | 有効(2021年に再確認) |
| JIS K 6850:1999 | 接着剤―剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法 | 有効(2023年確認)。ISO 4587:1995 を修正採用(MOD) | |
| ASTM D1002-10(2019) | Standard Test Method for Apparent Shear Strength of Single-Lap-Joint Adhesively Bonded Metal Specimens by Tension Loading (Metal-to-Metal) | 有効 | |
| ASTM D3163-01(2023) | Standard Test Method for Determining Strength of Adhesively Bonded Rigid Plastic Lap-Shear Joints in Shear by Tension Loading | 有効 | |
| ASTM D3165-07(2023) | Standard Test Method for Strength Properties of Adhesives in Shear by Tension Loading of Single-Lap-Joint Laminated Assemblies | 有効 | |
| ISO 13445:2003 | Adhesives — Determination of shear strength of adhesive bonds between rigid substrates by the block-shear method | 有効(2021年に再確認) | |
| はく離 | ISO 11339:2022 | Adhesives — T-peel test for flexible-to-flexible bonded assemblies | 有効(第4版) |
| JIS K 6854-3:1999 | 接着剤―はく離接着強さ試験方法―第3部:T形はく離 | 有効(2025年確認)。ISO 11339:1993 と同一(IDT) | |
| ASTM D1876-08(2023) | Standard Test Method for Peel Resistance of Adhesives (T-Peel Test) | 有効 | |
| ISO 8510-2:2006 | Adhesives — Peel test for a flexible-bonded-to-rigid test specimen assembly — Part 2: 180° peel | 有効(2025年に再確認) | |
| JIS K 6854-1:1999 / -2:1999 | 接着剤―はく離接着強さ試験方法―第1部:90度はく離 / 第2部:180度はく離 | 有効(2025年確認) | |
| ISO 4578:1997 | Adhesives — Determination of peel resistance of high-strength adhesive bonds — Floating-roller method | 有効(2023年に再確認) | |
| ASTM D3167-10(2025) | Standard Test Method for Floating Roller Peel Resistance of Adhesives | 有効 | |
| 引張 | ASTM D2095-96(2023) | Standard Test Method for Tensile Strength of Adhesives by Means of Bar and Rod Specimens | 有効 |
| JIS K 6849:1994 | 接着剤の引張り接着強さ試験方法 | 有効(2023年確認)。ISO 6922:1987 に対応(NEQ) | |
| へき開 | ASTM D3433-99(2020) | Standard Test Method for Fracture Strength in Cleavage of Adhesives in Bonded Metal Joints | 有効 |
| 衝撃 | ISO 9653:1998 | Adhesives — Test method for shear impact strength of adhesive bonds | 有効(2021年に再確認) |
| ISO 11343:2019 | Adhesives — Determination of dynamic resistance to cleavage of high-strength adhesive bonds under impact wedge conditions — Wedge impact method | 有効(2024年に再確認) | |
| ASTM D950-03(2020)e1 | Standard Test Method for Impact Strength of Adhesive Bonds | 有効 | |
| クリープ・疲労 | ASTM D2294-96(2024) | Standard Test Method for Creep Properties of Adhesives in Shear by Tension Loading (Metal-to-Metal) | 有効 |
| ISO 9664:1993 | Adhesives — Test methods for fatigue properties of structural adhesives in tensile shear | 有効(2021年に再確認) | |
| 劣化 | ISO 9142:2003 | Adhesives — Guide to the selection of standard laboratory ageing conditions for testing bonded joints | 有効(2021年に再確認) |
| ASTM D1151-00(2022) | Standard Practice for Effect of Moisture and Temperature on Adhesive Bonds | 有効 | |
| 破壊モード | ISO 10365:2022 | Adhesives — Designation of main failure patterns | 有効(第2版) |
| JIS K 6866:1999 | 接着剤―主要破壊様式の名称 | 有効(2023年確認)。ISO 10365:1992 と同一(IDT) | |
| ASTM D5573-99(2019) | Standard Practice for Classifying Failure Modes in Fiber-Reinforced-Plastic (FRP) Joints | 有効 | |
| 前処理・利用の指針 | ASTM D2651-01(2024) | Standard Guide for Preparation of Metal Surfaces for Adhesive Bonding | 有効 |
| ASTM D4896-01(2024) | Standard Guide for Use of Adhesive-Bonded Single Lap-Joint Specimen Test Results | 有効 |
すべて事実(ISO・ASTM・日本規格協会の各公式ページ[参考資料1〜30]。2026年10月確認)。規格本文は有料のため、試験片の寸法・速度・試験数などの細部は確認していません。
日本規格協会のページによると、JIS K 6850:1999 は ISO 4587:1995 を、JIS K 6854-3:1999 は ISO 11339:1993 を、JIS K 6866:1999 は ISO 10365:1992 を、それぞれ基にしています事実。 一方、ISO の現行版は 4587:2003、11339:2022、10365:2022 です事実。 版の違いが試験結果にどう影響するかは、規格本文が有料のため本稿では確認できませんでした。 試験報告には、規格の番号だけでなく、版(年)を書いてください(本記事による解説)。
3. せん断試験 ― 重ね合わせ試験片は何を測っているか
接着強度試験でもっとも広く使われるのが、2枚の板を端だけ重ねて接着し、両端を引っ張る重ね合わせ引張せん断試験です。 ISO 4587 は剛性どうしの被着体の重ね合わせ引張せん断強さを測る方法を事実、ASTM D1002 は金属の単一重ね合わせ試験片で接着剤の見かけの(apparent)せん断強さを測る方法を定めています事実。 題名にある「見かけの」という語が、この試験の性格を表しています。
ASTM D1002 の「意義と用途」の節は、この試験の限界を率直に述べています事実。
- この試験は主に比較のためのものです。ただし、被着体の表面処理条件の違いや、接着剤の環境耐久性の違いを見分けるのには使えます
- 得られた値を、構造接合部の設計許容応力として使うと、製品の破損・財産の損害・人身事故につながりうるとしています
- 小さな試験片で得た見かけのせん断強さは、被着体や接合プロセスが違えば、別の値になります。接着剤と被着体は熱・水分の膨張率が異なり、環境の変化で内部応力が生じます
ASTM D4896(単一重ね合わせ試験片の結果の使い方の指針)も、単一重ね合わせ試験片は安価で作りやすく、開発・評価・品質管理にもっとも広く使われると述べています。 同時に、薄い被着体の単一重ね合わせ試験片には多くの欠点があり、接着剤の「真のせん断強さ」を精度よく見積もるには別の特殊な試験片(厚い被着体の重ね合わせ試験片など)が開発されている、とも述べています事実。 その一例が ASTM D3983(非剛性接着剤のせん断強さとせん断弾性率を、厚い被着体の引張重ね合わせ試験片で測る方法)で、この規格は設計技術者が使える精度の値を与えうるとしています事実。
試験片の条件の実例 ― メーカーの技術資料から
標準の寸法は規格本文(有料)にありますが、3M の技術資料は、自社の重ね合わせ試験の条件を ASTM D1002・ISO 4587 を挙げて具体的に書いています事実。
| 項目 | 3M Scotch-Weld DP460NS 技術資料の記載(メーカー公称) |
|---|---|
| 試験片 | 幅25 mm(1 in)、重ね代12.7 mm(0.5 in)、被着体25 mm×102 mm(1 in×4 in) |
| 被着体の厚さ | 鋼1.5 mm、その他の金属1.3〜1.6 mm、ゴム・プラスチック3.2 mm |
| 接着層の厚さ | 0.13〜0.20 mm(5〜8 mil) |
| つかみ具の移動速度 | 金属2.5 mm/min、プラスチック51 mm/min、ゴム510 mm/min |
| 破壊の記録 | 凝集破壊(CF)、界面破壊(AF)、混合破壊(MF)、被着体破壊(SF)を区別して記載 |
すべて事実(3M DP460NS 技術資料、英語版、改訂2024年9月[参考資料31])。これは同社の試験条件であり、規格が要求する寸法・速度そのものではありません(規格本文は未確認)。
平均せん断応力は、破断荷重 F を接着面積(幅 b × 重ね代 l)で割った値です本稿の計算。
- 式:τ = F ÷ (b × l)
- 例:3M の技術資料にある、エッチング処理アルミニウムの24時間硬化後の値 4,500 lb/in²(≒ 31.0 MPa)。前提:幅1 in、重ね代0.5 in(技術資料の記載)。接着面積は 0.5 in²。F = 4,500 × 0.5 = 2,250 lbf = 約 10.0 kN
- 単位:1 N/mm² = 1 MPa。1 lb/in² = 約 0.006895 MPa
前提と限界:この値は、接着層全体に一様な応力がかかると仮定した平均です。図2のとおり、実際の応力は端に集中します。 また、被着体が曲がる試験片では、板の厚さ・降伏強さによっても破断荷重は変わります。
何がせん断強さを動かすか ― 論文の実験計画
da Silva らは、単一重ね合わせ継手の強度に影響する要因を、タグチ法で整理しました事実(2009年、International Journal of Adhesion and Adhesives[参考資料34])。 調べた変数は、接着剤の靭性と厚さ、被着体の降伏強さと厚さ、重ね代の長さ、試験速度、表面処理、耐久性(環境)の8つです。 18通りの組み合わせを各3回ずつ試験し、その結果、影響が最も大きいのは重ね代の長さであることを示しています。 論文は、接着剤が脆く重ね代が長い場合の強度予測がもっとも難しいとし、長期の温度・湿度の影響についてのデータと設計基準が不足していると述べています。
つまり、重ね代・被着体の厚さ・接着層の厚さ・試験速度は、すべて「数字を動かす変数」です。報告に書かなければ、他人が再現できません。
4. はく離試験 ― 「応力」ではなく「幅あたりの力」
はく離試験は、接着部を端から順にはがしていくときの抵抗を測ります。 ISO 11339 は、2本のたわむ被着体を T 字形に接着した試験片のはく離力から、T形はく離の抵抗を測る方法です。この方法はもともと金属の被着体向けに作られ、ほかのたわむ被着体にも使えるとされています事実。 ASTM D1876 は、同じ T 形試験片を引張試験機で引き、最初のピークのあとの、接着線の一定の長さにわたるはく離抵抗を求めます事実。
せん断と大きく違うのは、単位です。はく離は「接着面積あたりの応力」ではなく、幅あたりの力(N/mm、lb/in 幅)で表します。3M の技術資料も、はく離を lb/in 幅で示しています事実。
| 試験(3M DP460NS、アルミニウム) | 試験温度 | 技術資料の値(メーカー公称) | N/mm に換算 |
|---|---|---|---|
| T形はく離(ASTM D1876、つかみ具速度 508 mm/min、幅25 mm) | −55 ℃ | 3〜5 lb/in 幅 | 約 0.5〜0.9 |
| 23 ℃ | 60 lb/in 幅 | 約 10.5 | |
| 82 ℃ | 20 lb/in 幅 | 約 3.5 | |
| ベルはく離(ASTM D3167 を記載、つかみ具速度 15 cm/min、幅12.7 mm) | −55 ℃ | 19 lb/in 幅 | 約 3.3 |
| 23 ℃ | 77 lb/in 幅 | 約 13.5 | |
| 82 ℃ | 39 lb/in 幅 | 約 6.8 |
はく離値は事実(3M DP460NS 技術資料[参考資料31]、メーカー公称)。N/mm への換算(1 lb/in = 約 0.1751 N/mm)は本稿の計算。
同じ接着剤・同じアルミニウムで、23 ℃ の T 形はく離は60 lb/in 幅、−55 ℃ では3〜5、82 ℃ では20に下がります事実。 低温でも高温でも下がる、つまり室温付近が最大の「山」です。せん断が低温で下がらず高温で大きく下がる(第7章)のと対照的です。
理由は、技術資料には書かれていません。解説として読むと、はく離は被着体を曲げながら端から順にはがすため、接着層が粘り強く(エネルギーを吸収して)変形できるかが効きます。 低温では接着層が脆くなり、高温では弾性率や強さが下がる、という二重の理由が考えられます(本記事による推測)。 ガラス転移点(Tg)の考え方は、本シリーズ「エポキシ樹脂」編、「ガラス転移点とクリープ」編で扱っています。
また、T形とベルはく離では、同じ接着剤・同じアルミでも数字が違います(23 ℃で60と77)。試験片の形・被着体の厚さ・速度が違うためで、ASTM D3167 も、被着体の厚さの変化が試験値に影響するため、厚さを材料規格で定めるべきとしています事実。 はく離値は、方法名と被着体の厚さを付けてはじめて比較できます。
5. 引張・へき開・衝撃・クリープ・疲労
せん断とはく離のほかにも、規格は用途ごとに用意されています。それぞれが「何を調べるための試験か」を、各規格の公式ページの記述から整理します事実。
| 試験 | 規格 | 公式ページの記述(要旨) |
|---|---|---|
| 引張 | ASTM D2095 | 棒・丸棒の突き合わせ試験片で、接着剤の相対的な引張強さを求める。仕様の合否判定・サービス評価・製造管理・研究開発に使えるが、荷重の速度・方向・種類が試験と異なる用途では意義が小さい |
| へき開 | ASTM D3433 | 金属接合部の接着剤の「へき開破壊強さ」を求める。き裂が安定に進むか、止まっては急に進む(run-arrest)かで荷重記録の形が変わる、という注記がある |
| 衝撃(せん断) | ISO 9653、ASTM D950 | ASTM D950:ゆっくり加えた同じ(あるいはより大きい)力では壊れない接着部が、急な衝撃では壊れうる。接着剤が急な荷重に敏感かどうかを比較する |
| 衝撃(へき開) | ISO 11343 | 高強度の接着部の、衝撃くさび条件での動的なへき開抵抗。自動車などで使われる薄鋼板や繊維強化プラスチックの被着体を選べる |
| クリープ | ASTM D2294 | せん断の引張荷重下での接着剤のクリープ特性。配合、温度、水分、荷重時間の影響を比較する研究開発に役立つ |
| 疲労 | ISO 9664 | 静的な平均応力に交番応力を重ねた繰り返し応力を試験片に与え、破断までの繰り返し数を求める |
すべて事実(ISO・ASTM の公式ページ[参考資料5・6・10・13・17〜19])。要旨は本記事による日本語要約です。
せん断・引張は破断時の応力(強さ)を見ますが、へき開(D3433)は、き裂の進みやすさ、すなわち破壊に要するエネルギーの側から接着部を見る試験です。 ASTM D3433 のページに G1c・G1a(き裂の発生・停止時のエネルギー解放率の記号)が現れるのは、そのためです(本記事による解説)。
接着剤が硬くて脆い(強さは高いが、き裂が走る)か、粘り強い(強さは同じでも、き裂が止まる)かは、応力の数字だけでは見えません。 衝撃・疲労・クリープは、その違いが表に出る試験です。ゴム粒子で強靭化したエポキシ、柔らかい弾性接着剤(ウレタン・シリコーン)を評価するとき、せん断強さだけで選ぶと誤ります。 クリープは、本シリーズ「ガラス転移点とクリープ」編、弾性接着剤は「ポリウレタンとエラストマー」編が参考になります。
6. 素材技術者の視点①:数字より先に破面を見る
試験が終わったら、試験機の数字を書き写す前に、壊れた面を見てください。 同じ「20 N/mm²」でも、接着剤の内部で割れたのか、被着体との界面ではがれたのか、被着体のほうが先に壊れたのかで、意味がまったく違います。

規格もこの考え方に沿っています事実。
- ISO 10365:2022:接着組立物の破壊パターンの主な名称を定め、それぞれの見え方を図で示します。接着組立物に対するあらゆる機械試験に、被着体や接着剤の種類を問わず適用できます
- JIS K 6866:1999:ISO 10365:1992 と同一の内容(IDT)の日本語の規格です
- ASTM D5573:繊維強化プラスチック(FRP)の接合部について、接着破壊・凝集破壊・薄層凝集破壊・繊維引裂き・軽い繊維引裂き・ストックブレイク・混合破壊を定義します。分類は顕微鏡を使わない目視で行い、どの破壊モードなら許容できるか(合否)は扱いません。混合破壊は、たとえば「接着破壊32%、繊維引裂き68%」のように割合で表します
被着体破壊(SF)の数字は、接着部の強さの下限です。被着体が先に壊れたので、接着部はそれ以上の力に耐えていた可能性があります。 3M の技術資料でも、繊維強化プラスチックの値には「SF」の注記があります事実。 逆に、界面破壊(AF)で出た高い数字は信用しにくいものです。前処理や汚れの少しの違いで、次の試験片では大きく下がる可能性があるからです(本記事による解説)。
また、破面は次の一手を教えてくれます。界面破壊なら、前処理・プライマー・濡れ(表面エネルギー)を見直します。凝集破壊なら、界面は十分で、接着剤そのもの(架橋密度・Tg・フィラー・強靭化)が強さを決めています。 被着体破壊なら、その被着体では接着剤の強さを測りきれないので、試験方法を変えるか、被着体を厚く・強くします(本記事による解説)。
同じ接着剤・同じ被着体でも、試験法で結論が変わる ― ヘンケル LOCTITE 401 の技術資料
ヘンケルのシアノアクリレート系接着剤 LOCTITE 401 の技術資料(2012年2月版)は、同じプラスチック被着体を、ISO 4587(重ね合わせ引張せん断)と ISO 13445(ブロックせん断)の2つで試験した値を並べています。 技術資料は、被着体破壊を起こした値に印(*)を付けています。
| 被着体 | ISO 4587(重ね合わせ)N/mm² | ISO 13445(ブロックせん断)N/mm² | 読み取り(本記事による解説) |
|---|---|---|---|
| ポリカーボネート | 9.6 * | 11 | 重ね合わせでは被着体破壊。ブロックせん断では印がなく、やや高い値 |
| ABS | 7.5 * | 23 * | どちらも被着体破壊。数字はABSの強さを見ている(接着剤の強さの下限) |
| PVC | 10 * | 2.6 | 重ね合わせでは被着体破壊で10 以上、ブロックせん断では印なしで2.6。試験法で結論が変わる |
| フェノール樹脂 | 12.6 * | 21.3 * | どちらも被着体破壊。試験法の違いで被着体の壊れる応力が異なる |
すべて事実(LOCTITE 401 技術資料、2012年2月版、スロバキア語版[参考資料33]、メーカー公称(代表値)。72時間・22 ℃ 硬化。* =技術資料が「被着体破壊」と注記した値)。同資料の ISO 4587 では、ほかに鋼(ブラスト)20、アルミニウム(エッチング)12.4、亜鉛ジクロメート2.5 N/mm² も示されています。
PVC の2.6 N/mm² は、被着体が壊れる前に接着部が壊れた値と読めます。同じ接着剤・同じ被着体なのに、一方では被着体破壊で10 N/mm² 以上、他方では2.6 N/mm² で壊れた、ということです事実。 なぜそうなるかは、技術資料には書かれていません。荷重のかかり方(ブロックせん断は被着体が厚く、重ね合わせは薄い板が曲がる)が違うことが一因と考えられますが、本稿では確認できていません(推測)。 いずれにせよ、「被着体破壊の数字」をほかの試験法の数字と並べて比べてはいけない、ということです。
7. 本稿の計算:同じ接着剤で、数字はどれだけ動くか
3M の2液エポキシ接着剤 Scotch-Weld DP460NS の技術資料は、同じ接着剤の重ね合わせせん断強さを、前処理・試験温度・硬化時間・被着体を変えて載せています。 ポルトガル語版(2020年4月)の表の値(kgf/cm²)と、英語版(2024年9月)の表の値(lb/in²)を MPa に換算して、並べます本稿の計算。
| 条件を変えたもの | 値の動き(DP460NS、重ね合わせせん断) | 基準に対する比(本稿の計算) |
|---|---|---|
| 表面処理(アルミニウム、23 ℃) | エッチング 316 → 溶剤拭き+研磨 188 → アルカリ脱脂のみ 162 kgf/cm² | エッチングを100%として 59%、51% |
| 試験温度(アルミニウム) | −55 ℃ 345、23 ℃ 327、82 ℃(15分)96、82 ℃(4時間)188、121 ℃(15分)30 kgf/cm² | 23 ℃ を100%として −55 ℃は106%、82 ℃(15分)は29%、121 ℃(15分)は9% |
| 硬化時間(23 ℃) | 4時間 3、6時間 68、24時間 316 kgf/cm² | 24時間を100%として 6時間は22%、4時間は1% |
| 硬化温度(60 ℃) | 60 ℃ 15分 342 kgf/cm² | 23 ℃・24時間(316)に対して108% |
値は事実(3M DP460NS 技術資料、ポルトガル語版 2020年4月[参考資料32]、メーカー公称)。比は本稿の計算(四捨五入)。
英語版(2024年9月)の被着体別の表を、同じ接着剤・同じ重ね合わせせん断(ASTM D1002・ISO 4587、23 ℃、7日硬化)で並べます。
| 被着体(前処理) | 技術資料の値 lb/in² | MPa に換算 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 銅(MEK/研磨/MEK) | 4,400 | 30.3 | 金属は2.5 mm/min |
| 冷間圧延鋼(同) | 3,600 | 24.8 | |
| 黄銅(同) | 3,400 | 23.4 | |
| アルミニウム(同) | 2,670 | 18.4 | エッチング処理(24時間硬化)は 4,500 ≒ 31.0 |
| ステンレス鋼(同) | 2,400 | 16.5 | |
| 繊維強化プラスチック(IPA拭き/研磨/IPA拭き) | 1,379 | 9.5 | 被着体破壊(SF)。プラスチックは51 mm/min |
| ABS(同) | 572 | 3.9 | |
| ポリカーボネート(同) | 390 | 2.7 | |
| PVC(同) | 313 | 2.2 | |
| アクリル樹脂(PMMA)(同) | 270 | 1.9 |
値は事実(3M DP460NS 技術資料、英語版 2024年9月[参考資料31]、メーカー公称)。MPa は本稿の計算(1 lb/in² = 0.006895 MPa)。プラスチックの試験では、つかみ具の速度が金属と異なります(第3章)。
- 被着体:最大の銅(4,400)と最小のアクリル(270)で、約16倍(4,400 ÷ 270 = 16.3)。金属どうしの最大と最小(銅とステンレス鋼)では約1.8倍
- 表面処理:同じアルミニウムで、エッチングに対してアルカリ脱脂のみは約半分(162 ÷ 316 = 0.51)
- 温度:82 ℃(15分)で室温の約3割(96 ÷ 327 = 0.29)。同じ82 ℃でも「4時間」の表記では約6割(188 ÷ 327 = 0.57)に戻ります
- 硬化:23 ℃ では6時間で24時間値の約2割、4時間ではほぼゼロ。60 ℃ では15分で24時間値を超えます
前提と限界:これは3M の2液エポキシ DP460NS の値で、アルミニウムではエッチング処理が最も高い値を示した、というだけの話です。他の接着剤や、他のロットに当てはまる数字ではありません。 また、2つの表(温度の表と被着体の表)で、同じ「エッチングしたアルミニウム、23 ℃」の値が327と316 kgf/cm² と異なります(約3.5%)。技術資料は理由を書いておらず、同じデータシートの中でも、表ごとに数%のずれがあります。 英語版(2024年9月)のアルミニウム(溶剤拭き+研磨)2,670 lb/in² = 18.4 MPa、エッチング4,500 lb/in² = 31.0 MPa は、ポルトガル語版(2020年4月)の188、316 kgf/cm² と換算で一致します(本稿の計算)。
表の82 ℃は、15分で96、30分で127、60分で185、4時間で188 kgf/cm² と、時間が長いほど強い値です事実。 技術資料は理由を述べていません。この時間を試験前の保持時間と読んだ場合、解説として、室温で硬化した接着剤が加熱で追加硬化(後硬化)して架橋が進み、Tg が上がるため、と考えられます(本記事による推測)。 もしそうなら、高温での強さは「温度」だけでなく「その温度にどれだけ置いたか」にも依存することになります。 Tg と硬化度の関係は、本シリーズ「エポキシ樹脂」編で扱っています。試験の報告に、試験温度での保持時間を書くべき理由がここにあります。
8. 素材技術者の視点②:数字を作っているのは試験片・前処理・硬化・環境
ここまでの例を、要因ごとに整理します。技術資料や規格の記述にもとづく「数字を動かす変数」の一覧です事実。
| 要因 | 出所つきの例 | 材料の側から見ると(本記事による解説) |
|---|---|---|
| 被着体の材質 | 同じ接着剤(DP460NS)で、銅 30.3 MPa、アルミニウム 18.4、ABS 3.9、アクリル 1.9(3M、メーカー公称、第7章) | 表面エネルギーと化学的な相性、被着体自体の強さ・弾性率の差。低表面エネルギーのプラスチックにはプライマーが必要になる(ヘンケルの技術資料は LOCTITE 770 または 7239 のプライマーの使用を勧める) |
| 表面処理 | エッチング 31.0 MPa に対し、アルカリ脱脂のみ 15.9(3M)。ASTM D2651 は、アルミニウム・ステンレス・炭素鋼・チタン・マグネシウム・銅合金について、機械的・化学的な前処理を挙げる | 界面の「汚れの除去」「酸化皮膜の制御」「粗さ」。処理後は汚染や損傷を避けるため、できるだけ早く接着かプライマー塗布を行うよう3Mの技術資料は求めている |
| 硬化条件 | 23 ℃ では6時間で24時間値の約2割、60 ℃ では15分で到達(3M) | 架橋が進まなければ凝集力も界面の反応も不十分。「完全硬化」まで待たずに試験した値は、強度の立ち上がりを見ているだけ |
| 試験温度・保持時間 | 82 ℃(15分)で室温の約3割、121 ℃(15分)で約1割(3M)。T形はく離は −55 ℃ と 82 ℃ の双方で低下 | Tg と使用温度の関係、後硬化の影響。温度の「山」と「谷」を同じ接着剤が持つ |
| 試験速度 | 3M は金属2.5、プラスチック51、ゴム510 mm/min と、被着体で速度を変えている | 高分子は粘弾性体で、速く引くほど硬く脆く振る舞う。速度が違えば数字は比べられない |
| 形状(重ね代・厚さ・接着層) | da Silva らの実験計画で、重ね代が最大の影響因子(論文の要旨)。ASTM D3167 は被着体の厚さが値に影響するとする | 板の曲がりと端部のピーク応力(図2)。接着層が厚いほど、体積収縮・熱膨張差による内部応力の効き方も変わる |
| 混合・塗布・助剤 | 3M:手混合など不正確な混合は結果に影響する(ポルトガル語版の注記)。ヘンケル:活性剤の使用は最終強度を下げうるので、試験で確認する | 2液の混合比のずれは未反応基と架橋密度のずれになる。助剤は硬化は早めても界面を弱めることがある |
| 状態調節・保管 | 3M:強度立ち上がりの試験を除き、接着部は23 ℃・相対湿度50%で7日硬化してから試験や劣化を行う(ポルトガル語版) | 吸湿した被着体・接着剤は、Tg や界面の状態が変わる。前日までの置き場所が数字に出る |
出所は事実(3M DP460NS 技術資料[参考資料31・32]、LOCTITE 401 技術資料[参考資料33]、ASTM D2651・D3167[参考資料21・16]、da Silva ら[参考資料34])。右の列は本記事の解説です。
接着強度が低かったとき、材料側から考える入口は3つです(本記事による整理)。
- 界面(濡れと密着):破面が界面破壊(AF)なら、まずここです。表面エネルギー、汚れ、酸化皮膜、プライマー、前処理から接着までの時間
- 接着剤自体(凝集):破面が凝集破壊(CF)なら、架橋密度、Tg、フィラー、強靭化の問題です。硬化が足りていなければ、ここに出ます。本シリーズ「エポキシ樹脂」編、「ポリマーブレンドとフィラー」編を参照
- 応力(硬化収縮と熱膨張差):被着体と接着剤の熱膨張率の差、硬化収縮は、試験の前から内部応力を作ります。ASTM D1002 も、この膨張率の差が環境変化で内部応力を生むと述べています事実。本シリーズ「熱膨張係数」編を参照
数字を1つ聞いたら、「どの被着体の、どの処理で、何日硬化して、何 ℃ で、どう壊れた数字か」を聞き返す――これが、接着強度の数字との付き合い方の基本です。
9. 劣化試験 ― 湿熱が最も効く
接着部は、製造直後より、湿気・熱・薬品にさらされたあとのほうが問題になります。 ISO 9142 は、気候的・化学的な環境の影響を調べるための、標準的な実験室での劣化(エージング)条件を選ぶ指針です。接着部の組立物に適用でき、接着剤を評価する一連の試験として使えます。 ただし同規格は、この方法で得た結果が必ずしも実際の使用寿命の決定には使えない、と注意しています。試験結果と、長期の使用での挙動のあいだに、直接の関係はないからです。特定の用途で経験が積まれていれば、相関づけられる場合がある、としています事実。
ASTM D1151 は、湿度と温度の連続曝露の条件を定め、性能を曝露後の強さ÷もとの強さの比で表します事実。
3M の技術資料(ポルトガル語版)は、エッチングしたアルミニウムの重ね合わせせん断を、環境に曝したあと23 ℃ で試験した値を載せています事実。DP460NS の値を MPa に換算し、23 ℃・50%RH・30日の値に対する比を計算しました本稿の計算。
| 環境(曝露後に23 ℃ で試験) | kgf/cm² | MPa | 対 23 ℃・50%RH |
|---|---|---|---|
| 23 ℃・50%RH、30日(基準) | 384 | 37.7 | 100% |
| 蒸留水に30日浸漬 | 320 | 31.4 | 83% |
| 水蒸気 49 ℃・100%RH、30日 | 276 | 27.1 | 72% |
| 水蒸気 93 ℃・100%RH、14日 | 237 | 23.2 | 62% |
| 冷却液/水(50/50)に82 ℃・30日浸漬 | 309 | 30.3 | 80% |
| イソプロピルアルコールに23 ℃・30日浸漬 | 374 | 36.7 | 97% |
| MEK に23 ℃・30日浸漬 | 281 | 27.6 | 73% |
| 塩水噴霧(5%、35 ℃)30日 | 366 | 35.9 | 95% |
| Skydrol LD-4 に66 ℃・30日浸漬 | 369 | 36.2 | 96% |
値は事実(3M DP460NS 技術資料、ポルトガル語版 2020年4月[参考資料32]、メーカー公称)。技術資料は「実際のバッチの値で、ほかの箇所の公表値より高いことがある」と注記しています。MPa と比は本稿の計算。
この表で最も下がったのは、93 ℃・100%RH の水蒸気14日(約62%)です本稿の計算。蒸留水に常温浸漬(83%)や塩水噴霧(95%)より、湿熱のほうが厳しい結果です。 溶剤では、イソプロピルアルコールはほぼ影響なし(97%)、MEK は約73%でした。
解説として読むと、水分は接着剤に吸われて可塑化するだけでなく、金属表面の酸化皮膜と接着剤の界面に入り込んで、密着を弱めます。それを温度が加速します。 だから湿熱試験のあとは、強度の数字とあわせて破面が凝集破壊から界面破壊に変わっていないかを見るべきです(本記事による解説・推測)。 なお同じ技術資料は、DP460 Off-White と DP460NS という同系列の2つのグレードで、同じ曝露に対する結果が異なる例も載せています(Skydrol 曝露後は260と369 kgf/cm²)事実。同じ系列でも、グレードが違えば劣化の仕方が違います。
10. ばらつきと報告のしかた
接着強度の試験は、ばらつきの大きい試験です。ASTM D1002 が「主に比較のため」としているのも、1回の測定値の絶対値より、同じ条件で比べたときの差に意味があるからです。 一方、本稿が確認した技術資料には、標準偏差や試験片数は書かれていません(3M・ヘンケルとも代表値のみ)。 3M の技術資料自身も、掲載値は代表値であり、規格値として使ってはならないと断っています。ヘンケルの技術資料(LOCTITE 401)も、記載のデータは情報提供のみ(LMS と記した品質試験項目を除く)としています事実。
そこで、試験を依頼するとき・報告を読むときのチェック項目を、これまでの章から整理します(本記事の提案で、規格の要求事項ではありません)。
| 区分 | 書くこと | なぜ必要か(本稿で見た例) |
|---|---|---|
| 規格 | 番号と版(年)、規格からの変更点 | JIS と ISO の版が異なる(第2章) |
| 試験片 | 重ね代、幅、板厚、接着層の厚さ | 重ね代が最大の影響因子(da Silva ら) |
| 被着体 | 材質・グレード、前処理、前処理から接着までの時間 | 同じ接着剤で約16倍(第7章) |
| 接着剤 | 品名・グレード・ロット、混合比と混合方法、塗布量、加圧 | 手混合は結果に影響(3M)。ロットの値が公称値と異なりうる |
| 硬化 | 温度・時間・雰囲気、後硬化の有無 | 6時間と24時間で約5倍(第7章) |
| 状態調節 | 温度・湿度・時間、劣化条件(ISO 9142 など) | 湿熱で約6割に低下(第9章) |
| 試験 | 温度・湿度、試験温度での保持時間、つかみ具の速度、試験機の種類 | 82 ℃で15分と4時間で約2倍(第7章) |
| 統計 | 試験片の数、平均と標準偏差(または最小・最大)、外れ値の扱い | 技術資料に書かれていない。1個の値で語らない |
| 破壊モード | CF・AF・SF・MF とその面積割合、被着体破壊の印 | 被着体破壊の値は下限(第6章) |
| 単位 | せん断はMPa(N/mm²)、はく離は N/mm(幅あたり)、荷重は N(kN) | 単位が違えば比べられない(第4章) |
「なぜ必要か」の根拠は本稿の各章に示した事実と本稿の計算によります。チェック項目の整理そのものは本記事の提案(解説)です。
11. 電子部品の例:ダイシェア試験
半導体では、接着剤の強さを MPa ではなく、荷重と破壊の種類で判定する試験が使われます。MIL-STD-883 の試験法 2019(ダイシェア強度)です。 ここでは、確認できた「MIL-STD-883G の試験法 2019.7(2003年3月7日)」の写しをもとに説明します。この写しは公式サイトのものではなく、最新の改訂版との差は確認できていません。
- 目的:半導体チップや表面実装受動部品を、パッケージのヘッダーや基板に取り付けた材料と手順の健全性を調べる。判断は、加えた力、破壊の種類、残った接着剤と金属層の見た目の3つによる事実
- 方法:チップの端に接触工具を当て、基板面と平行に、チップの辺に垂直な力を徐々に加える。力はチップが剥がれるか、規定の最小強度の2倍に達するかの早いほうまで加える事実
- エポキシ接着の不合格条件:規定の強さに満たない、または規定の2.0倍に満たない力で分離し、かつ接着剤が意図した面積の75%未満しか接着していないこと事実
- 分離の分類:(a)チップが割れてシリコンが残る、(b)チップと接着剤が分離、(c)チップと接着剤がパッケージから分離事実
- 最小の力:チップ面積が 64×10⁻⁴ in² を超えるものは2.5 kg(kgf)以上に耐える。5〜64×10⁻⁴ in² のものは、10⁻⁴ in² あたり0.04 kg を基準に定める事実
2.5 kgf = 24.5 N。64×10⁻⁴ in² = 約4.13 mm²。24.5 N ÷ 4.13 mm² = 約 5.9 MPa本稿の計算。
前提と限界:この値は面積が64×10⁻⁴ in² のチップの最小要求で、実力値ではありません。面積が大きいチップでも最小力は2.5 kg のままなので、たとえば10 mm 角(100 mm²)では 24.5 ÷ 100 = 約 0.25 MPa 相当に下がります。 つまり、この試験の合否基準は、応力ではなく力で決まっています。ダイアタッチ接着剤の評価で「ダイシェア強度」の数字を見たら、チップの大きさ、せん断速度、破壊の種類を確認してください。 ダイアタッチ材料そのものは、本シリーズ「ダイアタッチ」編で扱います。
12. 課題・確認できなかった点
(1) 規格本文の細部は確認していない
ISO・ASTM・JIS の本文は有料のため、試験片の寸法、つかみ具の速度、試験片の数、結果の報告様式、精度(再現性・繰返し性)は確認していません。 第3章の試験条件は、3M の技術資料に書かれた同社の条件で、規格の要求値ではありません。
(2) 破壊パターンの個別の名称は確認していない
ISO 10365:2022 と JIS K 6866:1999 が定める個々の破壊パターンの名称と図は、本文が有料のため確認していません。図3の呼び名は ASTM D5573 と3M の用語です。JIS K 6866 が基にする ISO 10365:1992 と、現行の2022年版との差も確認していません。
(3) データシートの条件が揃っているとは限らない
3M の DP460NS の技術資料は、ポルトガル語版(2020年4月)と英語版(2024年9月)で値は換算上一致しましたが、同じ版の中でも温度の表と被着体の表で、同じ条件の値が約3.5%異なります。 (b) の温度表の括弧内の時間(15分〜4時間)が何を指すかも、定義が書かれていません。
(4) ばらつきの数字は確認できなかった
本稿が参照した技術資料・論文(要旨)に、標準偏差や変動係数の数値は確認できませんでした。そのため、本稿はばらつきの大きさを数字で示していません。
(5) 疲労・クリープ・衝撃の具体値は扱っていない
これらは規格の目的と考え方の整理にとどめ、材料ごとの具体的な数値は示していません。
- 接着強度は1つの量ではありません。せん断(N/mm²)、はく離(N/mm)、引張、へき開、衝撃、疲労、クリープで試験法が別にあります事実
- 規格の試験は「比較のため」のもので、設計値ではありません。ASTM D1002 は設計許容応力としての誤用を警告し、ISO 4587 の抄録も設計情報を与えないとしています事実
- 数字より先に破面を見ます。被着体破壊の数字は下限、界面破壊の高い数字は不安定です(本記事による解説)
- 同じ接着剤で数字が動きます。被着体で約16倍、表面処理で約半分、82 ℃(15分)で室温の約3割、湿熱で約6割。出所は3Mの技術資料(メーカー公称)です本稿の計算
- 試験法でも結論が変わります。LOCTITE 401 の PVC は、重ね合わせ(被着体破壊)10 N/mm² 以上に対し、ブロックせん断2.6 N/mm² でした事実
- 報告には、規格の版・試験片・被着体・前処理・硬化・試験条件・試験片数・破壊モードを添えます(本記事による提案)
13. 用語集
- 被着体
- 接着される側の材料(板・部品)。接着剤の側は「接着剤」。
- 重ね合わせ引張せん断
- 2枚の板の端を重ねて接着し、両端を引く試験。重ね代を接着面積に使う。
- 見かけのせん断強さ
- 破断荷重を接着面積で割った平均値。実際の応力は端に集中する。
- T形はく離
- 2枚のたわむ被着体をT字形に接着し、端から引きはがす試験。
- はく離強さ
- はがすときの力を幅で割った値(N/mm、lb/in 幅)。応力ではない。
- 凝集破壊(CF)
- 接着剤の内部で壊れること。両側の面に接着剤が残る。
- 界面破壊(AF)
- 接着剤と被着体の界面ではがれること。片方の面がきれいになる。
- 被着体破壊(SF)
- 接着部より先に被着体が壊れること。測れたのは接着部の強さの下限。
- FPL エッチ
- アルミニウムの前処理に使う酸性の浴(3Mの技術資料では重クロム酸ナトリウムと硫酸)。
- 状態調節
- 試験前に温度・湿度を一定にして置くこと。
- ダイシェア
- チップを横から押して接着の強さを調べる試験。
- メーカー公称(代表値)
- メーカーが技術資料に載せる代表的な値。規格値ではない。
14. 参考資料(一次情報)
- ISO ISO 4587:2003 Adhesives — Determination of tensile lap-shear strength of rigid-to-rigid bonded assemblies — iso.org
- ISO ISO 11339:2022 Adhesives — T-peel test for flexible-to-flexible bonded assemblies — iso.org
- ISO ISO 10365:2022 Adhesives — Designation of main failure patterns — iso.org
- ISO ISO 9142:2003 Adhesives — Guide to the selection of standard laboratory ageing conditions for testing bonded joints — iso.org
- ISO ISO 9653:1998 Adhesives — Test method for shear impact strength of adhesive bonds — iso.org
- ISO ISO 11343:2019 Adhesives — Determination of dynamic resistance to cleavage of high-strength adhesive bonds under impact wedge conditions — Wedge impact method — iso.org
- ISO ISO 13445:2003 Adhesives — Determination of shear strength of adhesive bonds between rigid substrates by the block-shear method — iso.org
- ISO ISO 8510-2:2006 Adhesives — Peel test for a flexible-bonded-to-rigid test specimen assembly — Part 2: 180° peel — iso.org
- ISO ISO 4578:1997 Adhesives — Determination of peel resistance of high-strength adhesive bonds — Floating-roller method — iso.org
- ISO ISO 9664:1993 Adhesives — Test methods for fatigue properties of structural adhesives in tensile shear — iso.org
- ASTM International ASTM D1002-10(2019) Standard Test Method for Apparent Shear Strength of Single-Lap-Joint Adhesively Bonded Metal Specimens by Tension Loading (Metal-to-Metal) — store.astm.org
- ASTM International ASTM D1876-08(2023) Standard Test Method for Peel Resistance of Adhesives (T-Peel Test) — store.astm.org
- ASTM International ASTM D2095-96(2023) Standard Test Method for Tensile Strength of Adhesives by Means of Bar and Rod Specimens — store.astm.org
- ASTM International ASTM D3163-01(2023) Standard Test Method for Determining Strength of Adhesively Bonded Rigid Plastic Lap-Shear Joints in Shear by Tension Loading — store.astm.org
- ASTM International ASTM D3165-07(2023) Standard Test Method for Strength Properties of Adhesives in Shear by Tension Loading of Single-Lap-Joint Laminated Assemblies — store.astm.org
- ASTM International ASTM D3167-10(2025) Standard Test Method for Floating Roller Peel Resistance of Adhesives — store.astm.org
- ASTM International ASTM D3433-99(2020) Standard Test Method for Fracture Strength in Cleavage of Adhesives in Bonded Metal Joints — store.astm.org
- ASTM International ASTM D2294-96(2024) Standard Test Method for Creep Properties of Adhesives in Shear by Tension Loading (Metal-to-Metal) — store.astm.org
- ASTM International ASTM D950-03(2020)e1 Standard Test Method for Impact Strength of Adhesive Bonds — store.astm.org
- ASTM International ASTM D1151-00(2022) Standard Practice for Effect of Moisture and Temperature on Adhesive Bonds — store.astm.org
- ASTM International ASTM D2651-01(2024) Standard Guide for Preparation of Metal Surfaces for Adhesive Bonding — store.astm.org
- ASTM International ASTM D4896-01(2024) Standard Guide for Use of Adhesive-Bonded Single Lap-Joint Specimen Test Results — store.astm.org
- ASTM International ASTM D5573-99(2019) Standard Practice for Classifying Failure Modes in Fiber-Reinforced-Plastic (FRP) Joints — store.astm.org
- ASTM International ASTM D3983-98(2019) Standard Test Method for Measuring Strength and Shear Modulus of Nonrigid Adhesives by the Thick-Adherend Tensile-Lap Specimen — store.astm.org
- 日本規格協会(JSA) JIS K 6850:1999 接着剤―剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法 — webdesk.jsa.or.jp
- 日本規格協会(JSA) JIS K 6854-1:1999 接着剤―はく離接着強さ試験方法―第1部:90度はく離 — webdesk.jsa.or.jp
- 日本規格協会(JSA) JIS K 6854-2:1999 接着剤―はく離接着強さ試験方法―第2部:180度はく離 — webdesk.jsa.or.jp
- 日本規格協会(JSA) JIS K 6854-3:1999 接着剤―はく離接着強さ試験方法―第3部:T形はく離 — webdesk.jsa.or.jp
- 日本規格協会(JSA) JIS K 6849:1994 接着剤の引張り接着強さ試験方法 — webdesk.jsa.or.jp
- 日本規格協会(JSA) JIS K 6866:1999 接着剤―主要破壊様式の名称 — webdesk.jsa.or.jp
- 3M 3M Scotch-Weld Epoxy Adhesive DP460NS, Technical Data Sheet, English-US, Last Revision Date September 2024 — multimedia.3m.com
- 3M Scotch-Weld Adesivo Epóxi DP460 Off-White e DP460NS, Boletim técnico(ポルトガル語)、2020年4月 — multimedia.3m.com
- ヘンケル(Henkel) LOCTITE 401 Technical Data Sheet(スロバキア語版)、2012年2月 — datasheets.tdx.henkel.com
- da Silva, L.F.M.; Carbas, R.J.C.; Critchlow, G.W.; Figueiredo, M.A.V.; Brown, K. Effect of material, geometry, surface treatment and environment on the shear strength of single lap joints. International Journal of Adhesion and Adhesives 29(6), 621–632 (2009). DOI 10.1016/j.ijadhadh.2009.02.012 — doi.org
- 米国防総省(MIL-STD-883) MIL-STD-883G, Method 2019.7 Die Shear Strength, 7 March 2003(写し。公式サイトのものではない) — q-tech.com
15. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| ISO 4587:2003 が剛性どうしの重ね合わせ引張せん断強さの試験法であり、試験手順は設計情報を与えないこと。有効(2021年に再確認) | ISO 公式ページ[参考資料 1]https://www.iso.org/standard/34852.html | 事実 |
| ISO 11339:2022(T形はく離、第4版。2本のたわむ被着体を T 字形に接着した試験片のはく離力で測る。もとは金属向けに開発)。設計情報を与えないこと | ISO 公式ページ[参考資料 2]https://www.iso.org/standard/82657.html | 事実 |
| ISO 10365:2022 が主な破壊パターンの名称を定めて図で示し、接着組立物へのあらゆる機械試験に被着体・接着剤を問わず適用できること(第2版、2022年1月) | ISO 公式ページ[参考資料 3]https://www.iso.org/standard/80800.html | 事実 |
| ISO 9142:2003 が気候・化学的環境の影響を調べる実験室劣化条件の指針であり、結果が必ずしも使用寿命の決定に使えないこと | ISO 公式ページ[参考資料 4]https://www.iso.org/standard/36282.html | 事実 |
| ISO 9653:1998(せん断衝撃)、ISO 11343:2019(くさび衝撃、金属薄板・FRPを選べる)、ISO 13445:2003(ブロックせん断)、ISO 8510-2:2006(180°はく離)、ISO 4578:1997(フローティングローラ)、ISO 9664:1993(疲労:静的な平均応力に交番応力を重ね、破断までの繰り返し数を求める)の題名と状態 | ISO 公式ページ[参考資料 5]https://www.iso.org/standard/28297.html ほか[参考資料 6・7・8・9・10] | 事実 |
| ASTM D1002 が金属の単一重ね合わせ試験片の「見かけのせん断強さ」を測る方法で、主に比較のためであり、表面処理条件・環境耐久性の識別に使えること。設計許容応力としての誤用が破損・人身事故につながりうること。被着体や接合プロセスが違えば値が変わること。有効(Last Updated 2019年4月30日) | ASTM 公式ページ[参考資料 11]https://store.astm.org/d1002-10r19.html | 事実 |
| ASTM D1876 が T 形試験片で相対的なはく離抵抗を求め、最初のピークのあとの接着線の一定長さにわたるはく離抵抗を求めること。ASTM D3167 が、被着体の厚さの変化が試験値に影響するため厚さを材料規格で定めるべきとすること | ASTM 公式ページ[参考資料 12]https://store.astm.org/d1876-08r23.html ほか[参考資料 16] | 事実 |
| ASTM D2095(棒材の引張。荷重の速度・方向・種類が試験と異なる用途では意義が小さい)、ASTM D3433(へき開。き裂の進み方で記録の形が変わる)、ASTM D950(衝撃。ゆっくりした荷重では壊れなくても急な荷重で壊れうる)、ASTM D2294(クリープ。配合・温度・水分・荷重時間の影響の比較)の適用範囲 | ASTM 公式ページ[参考資料 13]https://store.astm.org/d2095-96r23.html ほか[参考資料 17・18・19] | 事実 |
| ASTM D3163(硬質プラスチック)、ASTM D3165(積層組立品)、ASTM D1151(湿度と温度の連続曝露。性能は曝露後の強さ÷もとの強さ)、ASTM D2651(金属の表面処理。アルミニウム・ステンレス・炭素鋼・チタン・マグネシウム・銅合金)の題名と適用範囲 | ASTM 公式ページ[参考資料 14]https://store.astm.org/d3163-01r23.html ほか[参考資料 15・20・21] | 事実 |
| ASTM D4896:単一重ね合わせ試験片は安価で広く使われるが、薄い被着体の試験片には多くの欠点があり、真のせん断強さを見積もる別の試験片がある。ASTM D3983:非剛性接着剤のせん断強さと弾性率を厚い被着体の試験片で測り、設計技術者が使える精度 | ASTM 公式ページ[参考資料 22]https://store.astm.org/d4896-01r24.html ほか[参考資料 24] | 事実 |
| ASTM D5573 が FRP 接合部の破壊モード(接着破壊・凝集破壊・薄層凝集破壊・繊維引裂き・軽い繊維引裂き・ストックブレイク・混合破壊)を目視で分類し、合否は扱わず、混合破壊を割合で例示すること | ASTM 公式ページ[参考資料 23]https://store.astm.org/d5573-99r19.html | 事実 |
| JIS K 6850:1999 が ISO 4587:1995 を修正採用(MOD)、JIS K 6854-3:1999 が ISO 11339:1993 と同一(IDT)、JIS K 6866:1999 が ISO 10365:1992 と同一(IDT)、JIS K 6849:1994 が ISO 6922:1987 に対応(NEQ)。各 JIS の題名と確認年 | 日本規格協会 Webdesk[参考資料 25]https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+K+6850%3A1999 ほか[参考資料 26・27・28・29・30] | 事実 |
| 3M DP460NS の試験条件(幅25 mm、重ね代12.7 mm、被着体25×102 mm、板厚、接着層0.13〜0.20 mm、金属2.5・プラスチック51・ゴム510 mm/min)。被着体別のせん断強さ(銅4,400、冷間圧延鋼3,600、黄銅3,400、アルミニウム2,670、ステンレス2,400、FRP 1,379〔SF〕、ABS 572、PC 390、PVC 313、PMMA 270 lb/in²)。24時間硬化のエッチング処理アルミニウム 4,500 lb/in²。T形はく離(−55 ℃ 3〜5、23 ℃ 60、82 ℃ 20 lb/in 幅)とベルはく離(19、77、39)。技術資料が代表値であり規格値として使ってはならないとする注記 | 3M 技術資料(英語版、改訂2024年9月)[参考資料 31]https://multimedia.3m.com/mws/media/2365896O | 事実 |
| 3M DP460NS の表面処理別(エッチング316、MEK/研磨/MEK 188、Oakite 脱脂162 kgf/cm²)、試験温度別(−55 ℃ 345、23 ℃ 327、82 ℃ 15分96・4時間188、121 ℃ 15分30)、硬化時間別(23 ℃ 4時間3・6時間68・24時間316、60 ℃ 15分342)、環境曝露後の値(23 ℃・50%RH 384、水83%など)。強度立ち上がりを除く試験片は23 ℃・50%RH で7日硬化。手混合の影響の注記。実バッチの値が公表値より高いことがある注記 | 3M 技術資料(ポルトガル語版、2020年4月)[参考資料 32]https://multimedia.3m.com/mws/media/1857254O/product-data-sheet-structural-adhesives-dp460ns-460-off-white.pdf | 事実 |
| LOCTITE 401(72時間・22 ℃ 硬化)の ISO 4587 の値(鋼20、アルミニウム12.4、亜鉛ジクロメート2.5、ABS 7.5*、PVC 10*、フェノール12.6*、ポリカーボネート9.6*、ニトリル1.2*、ネオプレン1.1* N/mm²)と ISO 13445 の値(ポリカーボネート11、ABS 23*、PVC 2.6、フェノール21.3*)。*=被着体破壊。低表面エネルギーのプラスチックへのプライマー(770、7239)の使用。活性剤が最終強度を下げうる注記 | ヘンケル 技術資料(スロバキア語版、2012年2月)[参考資料 33]https://datasheets.tdx.henkel.com/LOCTITE-401-sk_SK.pdf | 事実 |
| 重ね合わせ継手の強度に影響する8変数をタグチ法(18通り×各3回)で調べ、最も影響が大きいのは重ね代の長さ。長期の温度・湿度のデータと設計基準が不足していること | da Silva ら(2009)の要旨[参考資料 34]https://doi.org/10.1016/j.ijadhadh.2009.02.012 | 事実 |
| MIL-STD-883G 試験法 2019.7(2003年3月7日):目的、力の方向、2倍の最小強度まで加える手順、エポキシ接着の不合格条件(2.0倍未満かつ接着75%未満)、分離の分類、最小の力(64×10⁻⁴ in² 超で2.5 kg) | MIL-STD-883G 試験法 2019.7 の写し[参考資料 35]https://q-tech.com/wp-content/uploads/STD-883-2019.pdf | 事実 |
| kgf/cm²・lb/in² の MPa 換算、lb/in 幅の N/mm 換算、破断荷重(4,500 lb/in² × 0.5 in² = 約10.0 kN)、各条件の比(59%、51%、106%、29%、9%、22%、1%、108%、約16倍、約1.8倍)、環境曝露後の保持率(83%、72%、62%、80%、97%、73%、95%、96%)、2.5 kgf = 24.5 N、約5.9 MPa、約0.25 MPa、重ね合わせ試験片の換算の一致の確認 | 本稿の計算。参考資料31・32・35の値を、1 kgf/cm² = 0.0980665 MPa、1 lb/in² = 0.006895 MPa、1 lb/in = 0.1751 N/mm、1 in² = 645.16 mm² で換算した。前提と限界は各章に記載 | 本稿の計算 |
| JIS が参照する ISO の版が古いことが試験結果に与える影響。規格本文の寸法・速度・試験片数・精度。ISO 10365・JIS K 6866 の個別の破壊パターンの名称 | 規格本文が有料のため確認していない。確認できたのは題名・抄録・状態のみ | 解説 |
| LOCTITE 401 の PVC で、重ね合わせとブロックせん断の結論が異なる理由。DP460NS の82 ℃で時間が長いほど強い理由。T形はく離が温度に対して山型になる理由。水と熱が界面を攻める解釈 | 技術資料に理由が書かれていない。本記事の推測・解説 | 解説 |
| 破面から読み取れること、素材技術者の視点(界面・接着剤・応力の3つに分ける整理)、要因一覧の右列、チェック項目、強みと限界の整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各団体・各社が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1・図2・図3・図5が実際の試験片・測定結果ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月3日/出典は一次情報(ISO・ASTM・日本規格協会の公式ページ、3M・ヘンケルの技術資料、査読論文の要旨)に限定しています。メーカーの値はメーカー公称(代表値)で、規格値ではありません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 規格本文の細部(試験片の寸法・速度・試験片数・精度)、ISO 10365 と JIS K 6866 の個別の破壊パターン、JIS と ISO の版の違いの影響、試験結果のばらつきの数値、MIL-STD-883 の最新改訂は、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 図1・図2・図3・図5はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の試験片・試験機・破面・測定結果を示すものではありません。