TECHNOLOGY EXPLAINER
シリコーン
― 「無機の骨格に有機の枝」をもつ、ゴムにも接着剤にもなる材料
シリコーン(ポリシロキサン)は、ケイ素と酸素が交互につながる Si–O–Si の骨格に、メチル基などの有機基がついた高分子です。 信越化学は、炭素の鎖でできた一般の合成高分子に対し、シリコーンを主鎖がケイ素と酸素の「無機の合成高分子」と説明しています。 耐熱・耐寒・柔らかさ・低い表面エネルギーは、この構造から来ます。 接着・封止の現場では、その柔らかさが応力を逃がす強みであると同時に、接着の難しさや、低分子シロキサンによる接点障害、EU の D4・D5・D6 の制限といった論点にもつながります。

- シリコーンとは何か(3行でつかむ)
- Si–O 結合が決める4つの性質 ― 耐熱・耐寒・柔軟性・低表面エネルギー
- 素材技術者の視点①:「空気中の耐熱」と「密閉下の耐熱」は別の数字
- 硬化の3つの方式 ― 縮合型・付加型・過酸化物
- 素材技術者の視点②:付加型の「被毒」と縮合型の「副生成物」
- 種類を整理する ― オイル・ゴム・レジン・ゲル、そして接着剤・シーラント
- エポキシ・ウレタンとの違い ― 応力緩和と接着性
- 低分子シロキサンと接点障害
- D4・D5・D6 の REACH 制限
- 課題と、本稿で確認できなかったこと
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料・規則に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
製品の物性値はメーカー公称(代表値)であり、グレード・試験条件が異なるものを並べて優劣をつけることはしません。
会社名は出典の所在を示すもので、優劣を論じるものではありません。
1. シリコーンとは何か(3行でつかむ)
- 骨格が Si–O–Si の高分子です。信越化学は、一般の有機高分子の主鎖が炭素の繰り返しであるのに対し、シリコーンはケイ素(Si)と酸素(O)が繰り返すポリシロキサンを主鎖とする「無機の合成高分子」で、側鎖には有機の基を導入できると説明しています事実[参考資料1]。
- 同じ骨格から、オイル・ゴム・レジン・ゲルまで作り分けます。信越化学は、シリコーンを、オイル(フルイド)、ゴム、液状ゴム、レジン、シランに大別しています事実[参考資料2]。
- 接着・封止では「柔らかさ」が武器にも弱点にもなります。応力を逃がして部品を守る一方、強い接着や低分子成分の管理、化学物質規制への対応が別の課題になります(本記事による整理)。
原料について、信越化学は、シリコーンの主な原料は天然のシリカ(SiO2)、水、天然ガス由来のメタノールで、最も多く作られているポリジメチルシロキサンでは、構成要素の約60%がシリカと水に由来すると説明しています事実[参考資料1]。 Wacker は、約75年前の Müller–Rochow 法の開発によって、金属ケイ素と塩化メチルからメチルクロロシランが得られるようになり、これが工業生産の出発点になったと述べています事実[参考資料12]。 両社の説明は着目する段階が違うため、メタノールと塩化メチルの関係を含む製造工程の詳細は、本稿では扱いません。
この記事は、接着・封止の材料としてのシリコーンに絞ります。 エポキシとの違いの基礎は本シリーズ「エポキシ樹脂」編、ウレタンやゴムの加硫は「ポリウレタンとエラストマー」編、熱応力の基本式は「熱膨張係数」編、封止材の全体像は「アンダーフィル」「モールディング」編で扱っています。 車載向けの用途は「車載用シリコーンと封止材」編、接着剤全般の分類は「接着剤」編で詳しく扱います。
2. Si–O 結合が決める4つの性質 ― 耐熱・耐寒・柔軟性・低表面エネルギー
シリコーンの性質は、骨格の Si–O 結合と、そこから外へ向いたメチル基という、2つの構造から説明されます。 信越化学は、Si–O 結合の結合エネルギーが有機高分子の主鎖を作る C–C や C–O よりはるかに高く、約200℃でも切れないため、耐熱性と耐候性が高いと説明しています事実[参考資料3]。
| 性質 | 公表内容(出典の記載) | 出典 |
|---|---|---|
| 耐熱 | 信越化学:シリコーンゴムは150℃ではほとんど変化なく使い続けられ、200℃で10,000時間以上耐えるものがあり、短時間なら350℃に耐える製品もある。Wacker:シリコーンは最大300℃の広い温度範囲に耐える | [6][12] |
| 耐寒 | 信越化学:一般の有機ゴムの脆化点が−20〜−30℃であるのに対し、シリコーンゴムは−60〜−70℃。−100℃以下に耐える製品もある。Wacker:−50℃まで柔軟で、特殊品は−100℃まで | [6][12] |
| 柔軟性 | 信越化学:ジメチルシリコーンはSi–O 結合6個で360度のらせんを描く柔軟な構造で、分子間力が小さく、弾性・圧縮性・耐寒性が高い | [4][5] |
| 低い表面エネルギー | 信越化学:ポリマーの表面は疎水性のメチル基で覆われ、表面エネルギーが低い。ジメチルシリコーンオイルの表面張力は16〜21 mN/m(鉱油 29.7、水 72)、水の接触角は90°超 | [7][4] |
すべて事実(メーカー公表値。製品・グレード・試験条件の違いを含むため、数値の優劣を比べるものではありません)。
信越化学の2つの資料に載る結合エネルギーから、比を求めます本稿の計算。
- カタログ[参考資料6]:Si–O 433 kJ/mol、C–C 355 kJ/mol → 433 ÷ 355 = 約1.22
- ウェブページ[参考資料5]:Si–O 106 kcal/mol、C–C 85 kcal/mol → 106 ÷ 85 = 約1.25(1 kcal = 4.184 kJ として換算すると、それぞれ約443 kJ/mol と約356 kJ/mol)
前提と限界:同じ会社の資料でも、Si–O の値は 433 と約443 kJ/mol で異なります。 どちらの資料も、どの化合物の何の値(解離エネルギーか平均値か)かを明記していません。 このため、桁や数字の細部ではなく、「Si–O は C–C より約2割強い」という大小関係として読むのが安全です。 結合が強いことは、耐熱性が高いことの一因にすぎず、実際の使用寿命は配合・雰囲気・硬化剤で決まります(次章)。
3. 素材技術者の視点①:「空気中の耐熱」と「密閉下の耐熱」は別の数字
「シリコーンは150℃で使い続けられる」という数字は、多くが空気中で測ったものです。 信越化学のカタログには、条件による違いが明記されています事実[参考資料6]。
- 空気中:シリコーンゴムは加熱すると硬くなり、伸びが低下しながら劣化する。
- 密閉状態:劣化とともに柔らかくなり、高温での寿命は空気中より短くなる。この軟化はシロキサンポリマーの劣化によるとされる。
- 対策:配合の調整、別の硬化剤の使用、後硬化(ポストキュア)で軟化を防げる。そうした製品もある。
- 水蒸気:常圧の蒸気ではほとんど劣化しないが、150℃を超える高圧蒸気ではシロキサンポリマーが分解し、ゴムの性質が低下する。
封止は、まさに「空気に触れにくい」使い方です。パッケージ、ポッティング、ハウジング内の充填は、密閉に近い条件になります。 そこで、カタログの耐熱年数を、そのまま封止部の寿命として読めない可能性があります(本記事による解説)。 耐熱温度を見るときは、「どの雰囲気で」「何を指標に(伸び、硬さ、質量変化)」測った値かを確かめるのが最初の一歩です。 信越化学のグラフは、寿命を「破断伸びが初期値の1/2になる時間」と定義しています[参考資料6]。
本シリーズ「ガラス転移点とクリープ」編で扱ったように、ゴム状の材料は使用温度でのふるまいが設計の中心になります。 シリコーンの耐寒性の高さは、ガラス転移温度が低いことと関係すると一般に説明されます(解説)。 ただし、信越化学・Wacker の資料から具体的な Tg の数値は確認できなかったため、本稿では数値を示しません。
4. 硬化の3つの方式 ― 縮合型・付加型・過酸化物
液状のシリコーンや生地状のゴムを、使える固体に変えるのが「硬化」です。 Wacker は、室温で硬化する RTV(room-temperature vulcanizing)を、1液型の RTV-1 と2液型の RTV-2 に分け、固形ゴムは熱で硬化する HTV として扱っています事実[参考資料13・14]。 硬化の化学は、大きく縮合型、付加型、過酸化物の3つに整理できます(この3分類は本記事の整理で、資料の記載を並べ替えたものです)。
| 方式 | 公表内容(出典の記載) | 出典 |
|---|---|---|
| 縮合型 RTV-1 (1液・湿気硬化) | Wacker:ポリシロキサン、硬化剤、フィラー、添加剤からなるそのまま使える系。塗布後、空気中の湿気に触れて架橋が始まり、表面に皮膜ができて徐々に内部へ進む。硬化中に副生成物が出る。架橋剤の種類により、少量の酢酸、アミン、またはアルコールなどの中性の副生成物が出る。信越化学:1液の液状ゴムはチューブやカートリッジから出してすぐ作業でき、硬化後は弾性ゴムになり、ほとんどの材料に接着する。使用温度範囲は−40〜+180℃。製品表では多くが縮合型(副生成物はアルコール)、一部はアセトン型 | [13][8][11] |
| RTV-2 (2液)縮合型 | Wacker:縮合型は有機スズ触媒を要し、常に副生成物が出る | [13] |
| 付加型 (2液・液状ゴム・ゲル) | Wacker:付加型は白金触媒を要し、副生成物は出ない。2液の RTV-2 には、紫外線で短時間に硬化させる特殊品もある。信越化学:2液の液状ゴムは、硬化剤を加えて硬化し、厚い部分でも内部まで均一に硬化し(深部硬化性)、硬化剤の種類・量や加熱で硬化時間を調整でき、主剤と硬化剤を別にして長期保管できる。製品表には縮合型と付加型の両方があり、付加型の例で「加熱で硬化時間を短縮」とある | [13][9] |
| 過酸化物硬化 (HTV・固形ゴム) | Wacker:固形ゴムには、過酸化物硬化(ELASTOSIL R)と、白金触媒の付加型(ELASTOSIL R plus)がある。過酸化物硬化の生地は、押出、カレンダー、圧縮・トランスファー成形、射出成形で加工でき、熱で硬化する | [14] |
すべて事実(メーカーの公表内容)。製品名は例示であり、優劣を示すものではありません。縮合型・付加型の化学反応式は本稿の資料に記載がなく、本記事では扱いません。
なお、付加型の反応は、一般には Si–H 基とビニル基(Si–CH=CH2)の間で白金触媒のもとで進むヒドロシリル化として説明されます。 本稿が参照した Wacker・信越化学の資料では、「白金触媒」「副生成物なし」までが確認できる範囲で、反応式そのものは記載を確認できていません(解説)。
5. 素材技術者の視点②:付加型の「被毒」と縮合型の「副生成物」
副生成物が出ない付加型は、厚い部分も内部まで均一に硬化させやすい方式です事実[参考資料9・13]。 その代わりに、白金触媒を妨げる成分が近くにあると硬化しません。 Dow は、付加型の硬化を阻害する成分の分類として、次のものを挙げています事実[参考資料15]。
- 窒素を含む化合物、硫黄を含む化合物、スズを含む化合物、リンを含む化合物
- ヒ素・アンチモン・セレン・テルルを含むもの
- 残留する溶剤やモノマー(ただし、硬化を阻害しない溶剤もある)
- 一部のプライマー(硬化を阻害しないプライマーもある)
具体的な物質名・濃度・阻害の機構は、同ページの見出しだけでは確認できませんでした。 それでも、設計上の意味は大きいです(本記事による解説)。
- スズが阻害物質の一つに挙がっていることは、縮合型(有機スズ触媒)のシリコーンと付加型を隣り合わせて使うときの注意点になります。
- 窒素・硫黄・リンを含む化合物は、他の樹脂・ゴム・フラックス・洗浄剤・プライマーの成分として現場に存在しえます。付加型を選ぶと、被着体や隣接部材との硬化相性の確認が設計項目になります。
- 信越化学の2液製品表で、縮合型の製品に「硬化阻害なし(No cure inhibition)」が特長として書かれているのは、この問題の裏返しとして読めます[参考資料9](本記事による解釈)。
一方、縮合型は、副生成物が出ることと、1液の場合は湿気が表面から内部へ拡散して進むことが性格を決めます。 厚い部分の硬化に時間がかかる、密閉空間では湿気が届きにくい、といった制約は、Wacker の「表面から皮膜ができて徐々に内部へ進む」という記述から読み取れます[参考資料13]。 また、副生成物の種類(酢酸・アミン・アルコール・アセトンなど)が、周辺の金属や部品に及ぼす影響は、製品ごとに確認すべき項目です。信越化学は、アセトン型の1液品について「金属を腐食しない」としています[参考資料11]。
6. 種類を整理する ― オイル・ゴム・レジン・ゲル、そして接着剤・シーラント
信越化学は、シリコーンの製品をフルイド(オイル)、ゴム、液状ゴム、レジン、シランに大別し、全体で5,000を超える製品があると述べています事実[参考資料2・20]。 接着・封止で使う「接着剤」「シーラント」「ポッティング材」「封止ゲル」という呼び名は、用途による呼び名で、化学的には架橋の密度の違いとして整理すると見通しがよくなります(本記事による整理)。
| 種類 | 公表内容(出典の記載) | 出典 |
|---|---|---|
| オイル(フルイド) | 信越化学:ジメチルシリコーンオイルは空気中150℃までほぼ変化せず、−50℃でも流動。メチルフェニル型は250℃で長期使用でき、−65℃でも流動。離型剤・消泡剤・撥水処理などに使われる | [7] |
| ゴム(成形用) | 信越化学:成形用は、固形のシリコーンゴムコンパウンド(ミラブル)と、液状ゴムを射出成形するLIMSに大別される | [5] |
| 液状ゴム(RTV) | Wacker:RTV は接着、シール、ポッティング、封止、コーティング、注型の分野に使われる。信越化学:1液はほとんどの材料に接着、2液は長期保管・深部硬化が特長 | [13][8][9] |
| ゲル | Wacker:シリコーンゲルは架橋密度が非常に低く、硬化物はショア硬さの範囲を下回る極めて柔らかいゴムになる。Dow:ゲルは極めて柔らかくなりながら、エラストマーの寸法安定性を持つ特殊なクラスの封止材。信越化学:高耐熱ゲル KE-1066-A/B は使用温度範囲−40〜200℃(メーカー公称) | [13][16][19] |
| レジン | 信越化学:分子が3次元の網目構造で、硬い膜になる。耐熱性は250℃まで。塗料・コーティング・電気用途に使う | [10] |
すべて事実(メーカー公称。製品の例示であり、優劣を示すものではありません)。
ゴムは「型で成形する」材料でもある
接着・封止の記事でも、シリコーンのゴムとしての顔は欠かせません。 同じ配合のゴムが、シート・チューブ・ガスケットのような成形品にも、現場で塗るシーラントにもなるからです。 Wacker は、固形シリコーンゴムを押出、カレンダー、圧縮・トランスファー成形、射出成形で、液状ゴムを射出成形や低圧充填で加工できるとしています事実[参考資料14]。

7. エポキシ・ウレタンとの違い ― 応力緩和と接着性
接着・封止の材料は、「硬くて強い」「しなやかで強い」「とても柔らかく、温度に強い」という具合に、硬さの軸でおおまかに並べられます。 エポキシは前者、ポリウレタンエラストマーは中間、シリコーンは柔らかい側に広がります(本記事による整理)。 本シリーズ「熱膨張係数」編は、熱応力を弾性率 × 熱膨張係数の差 × 温度差とおおまかに見積もる考え方を扱っています。 この式に当てはめると、弾性率が小さい材料ほど、同じ熱膨張の差でも部品にかかる応力が小さくなることになります(解説)。
① 応力緩和:柔らかさが武器になる場面
Dow は、シリコーンゲルを極めて柔らかく硬化しながら、エラストマーの寸法安定性を持つ特殊なクラスの封止材と説明し、応力緩和、機械的・環境的な保護を提供するとしています事実[参考資料16]。 同社の2025年9月の発表では、EV の電池や太陽光・風力のインバーターに使う IGBT モジュール向けのシリコーンゲル DOWSIL EG-4175 が、最大180℃に耐え、振動を吸収し、小さな亀裂を自己修復するとしています(メーカーの主張)事実[参考資料16]。 信越化学のゲル KE-1066-A/B は、使用温度範囲−40〜200℃、200℃×2,000時間の後も針入度が30から29にとどまる(メーカー公称)としています事実[参考資料19]。 Dow の選定ガイドは、シリコーンが一般に、ウレタンやエポキシに対して、熱サイクルや熱膨張係数の不一致による機械的応力からの保護(とくにゲル)と、衝撃・振動からの保護で利点があると主張しています(メーカーの主張)事実[参考資料21]。 同社の技術論文は、シリコーンエラストマーに典型的な弾性率を0.1〜2 MPa、シリコーンレジンはフィラーなしで1 GPa 超になりうるとしています事実[参考資料22]。 弾性率は製品ごとに大きく変わるため、他の材料との比較値は、本稿では確認していません。 パワー半導体の封止については、本シリーズ「車載用シリコーンと封止材」編で詳しく扱います。
② 接着性:柔らかさの代償としての「強さ」
信越化学は、シリコーンゴムの室温での強度は有機ゴムより低いが、高温での強度の保持は優れるとしています。 グラフ上で両者は温度が上がると入れ替わり、一般的な引裂強さは約9.8 kN/mとされています事実[参考資料6]。 本稿で確認できた製品の接着に関する公称値は、次のとおりです。
| 製品(メーカー公称) | 公表されている値 | 出典・注記 |
|---|---|---|
| KE-3450(1液縮合型・アセトン型の接着シール材) | 硬さ(デュロメーター A)42、引張強さ 2.5 MPa、破断伸び 390 %、せん断接着強さ(Al/Al)1.6 MPa | 信越化学[11]。試験規格・被着体の条件・硬化条件はページに記載がなく確認できなかった |
| KE-1066-A/B(付加型の高耐熱ゲル) | 接着強さ 0.4 MPa(Al)、0.4 MPa(Cu)、針入度 30、体積抵抗率 15 TΩ·m、絶縁破壊強さ 16 kV/mm(23℃)。標準硬化条件 80℃×1時間 | 信越化学[19]。接着強さの試験法は記載を確認できなかった |
| DOWSIL EA-7158(1液・熱硬化の接着剤)/EG-4175(ゲル) | EA-7158:1液・高強度のシリコーンで、多くの基材にプライマーなしで良好に接着。EG-4175:プライマーなしの接着(自己プライミング)をうたう | Dow[16]。数値は記載を確認できなかった |
すべて事実(メーカー公称)。製品の種類・被着体・試験条件が異なるため、値を並べて優劣をつけるものではありません。
シリコーンは、表面エネルギーが低く、水をはじき、離型剤にも使われます事実[参考資料4・7]。 そのため、相手の表面にぬれ広がって密着することが、有機系の接着剤より難しい面があると考えられます(本記事による解説)。 Dow が EG-4175 と EA-7158 で「プライマーなしの接着」を特長に挙げ[16]、信越化学が2液製品に「初期接着が2時間以内に発現」「自己接着」といった特長を書いている[9]のは、接着を製品側で作り込む必要があることの表れと読めます(本記事による解釈)。 なお、EU 規則の適用除外には接着促進剤という用途が明記されており[18]、接着の補助成分が、規制・成分管理の対象としても現れることがわかります。
接着強度試験での読み方も変わります。 せん断強さの数値(MPa)だけで比べると、柔らかい材料は小さく出ます。 どこで壊れたか(被着体との界面か、材料の内部か)、変形に追従できたかが、柔らかい接着材では重要になります(本記事による解説)。 試験規格と破壊モードの読み方は、本シリーズ「接着強度試験」編で詳しく扱います。
信越化学は、シリコーンゴムを冷水・温水・沸騰水に長く浸けても吸水は約1%で、機械的強度や電気特性にほとんど影響しないとしています事実[参考資料6]。 一方で、同じ資料は、シリコーンゴムの薄膜が有機ゴムやプラスチックフィルムより気体・水蒸気を通しやすいことも述べ、ガスと水の分離膜としての応用が検討されているとしています事実[参考資料6]。
吸水率は「材料の中に取り込む水の量」で、透過性は「材料を通り抜ける水蒸気やガスの量」です。 水を吸わないことと、水蒸気を通さないことは別の性質で、気密・防湿が必要な封止でバリア材として期待してよいかは、別途確認が必要です(本記事による解説)。 バリア性の考え方は、本シリーズ「バリア性とコーティング」編を参照してください。
8. 低分子シロキサンと接点障害
シリコーンの硬化物やオイルには、重合度の低い環状・鎖状のシロキサン(低分子シロキサン)が、わずかに残ります。 これが揮発して電気接点に届くと、接点が働かなくなる接点障害が起こることがあります。 部品メーカーと材料メーカー、双方の公表内容を見てみます。
Omron のリレー FAQ(ID FAQE10061E、2021年10月1日更新)は、リレーの側面を、低分子シロキサン低減タイプも含めシリコーン系の被覆材で覆ってよいかという質問に、次のように答えています事実[参考資料17]。
- 答え:シロキサンを含まない被覆材を使う。低分子シロキサンを減らした被覆材でも、リレーの接点障害を起こすことがある。ウレタン系の被覆材は使える。
- 理由:シロキサンは透過性が高く、樹脂封止型リレーの内部に入り込む。低減品もシロキサンを含み、内部に入るまでの時間が延びるだけ。入ったあとは、接点に酸化ケイ素の膜ができて接点障害になる。このため、リレーの側面だけでもシリコーン系の被覆は使えない。
- その他:ウレタン・エポキシの被覆材は使えるが、微量のシロキサンを含むことがあるので、成分を確認する。基板上の成形・ポッティング・パッキンも、シリコーンを含まない樹脂を使う。
一方、信越化学は、1液縮合型のアセトン型製品 KE-3450 について、「電気接点障害の原因となる低分子シロキサンを低減した」としています。 同製品の低分子シロキサン量は ΣD3–D10 で 300 ppm 未満(メーカー公称)と記載されています事実[参考資料11]。
この2つの資料は、同じ問題を別の立場から述べています。 材料メーカーは、シロキサン量を下げた製品を出します。 部品メーカーは、低減品であっても内部に入るまでの時間が延びるだけだと述べます(上の Omron の記載)。 どちらも事実の記載であり、矛盾はありません(本記事による解説)。
- ppm は合格基準ではありません。ΣD3–D10 の測定条件(抽出法・加熱条件)は、KE-3450 のページからは確認できませんでした[参考資料11]。数値だけで実機の安全を保証するものではありません。
- 使えるかどうかは、部品の側が先に決めます。Omron のように、シリコーン系の被覆を使わないと部品側が指定することがあり、その場合は低減品かどうかを論じる前に、材料の選択肢から外れます。
- 被覆が「どこにあるか」も効きます。リレー本体に塗らず側面だけでも使えない、という記載は、シロキサンが空間を移動することを示します。同じ筐体内の別の部材の被覆も影響の対象です。
9. D4・D5・D6 の REACH 制限
シリコーンの原料・中間体には、環状のジメチルシロキサン、D4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、D5(デカメチルシクロペンタシロキサン)、D6(ドデカメチルシクロヘキサシロキサン)があります。 EU は、この3つを REACH の制限(附属書 XVII の項目70)の対象にしています。 欧州委員会は2024年5月16日に規則 (EU) 2024/1328 を採択し、同年5月17日に官報に掲載されました事実[参考資料18]。
この規則の骨子は、次のとおりです事実[参考資料18]。
- 背景:2018年6月13日に、欧州化学品庁の加盟国委員会が、D4・D5・D6 を非常に高い懸念を引き起こす物質(SVHC)で、非常に残留性が高く、非常に生物蓄積性が高い(vPvB)と特定した。D4 はPBT(残留性・生物蓄積性・毒性)の性質も持つとされた。D5・D6 も、D4 を0.1重量%以上含む場合は PBT の性質を持つとされた。
- リスク評価の結論:リスク評価委員会(RAC)は、環境への放出の総量をリスクの代理指標とし、化粧品が主な放出源であるとした。
- 1項(上市禁止):D4・D5・D6 を、物質そのもの・他の物質の構成成分・混合物として、各物質が0.1重量%以上の濃度で、2026年6月6日以降、上市してはならない。
接着・封止の材料として重要なのは、適用除外(4項〜6項)です。
| 項 | 適用除外の内容(規則の記載) |
|---|---|
| 4項(a) | D4・D5・D6 の上市のうち、シリコーンポリマー製造のモノマー、他のケイ素物質製造の中間体、重合のモノマー、混合物の配合・再包装、物品の製造、非金属の表面処理という産業用途 |
| 5項 | 1項(b)(他の物質の構成成分としての上市)は、シリコーンポリマーそのものの構成成分としての D4・D5・D6 には適用しない |
| 6項(a) | シリコーンポリマー由来の残留物として D4・D5・D6 を含む混合物で、接着、シール、接合(gluing)、注型の用途では、各物質の濃度が1重量%以下であれば、1項(c)(混合物としての上市)を適用しない |
| 6項(b) | 同じ残留物で、保護コーティング(船舶用を含む)では、D4 は0.5重量%以下、D5 または D6 は0.3重量%以下 |
| 6項(f) | 同じ残留物で、接着促進剤としての用途は、各物質0.5重量%以下 |
| 6項(g)(h) | 3D プリントは各物質1重量%以下。迅速な試作・型取り・石英フィラーで安定化した高性能用途は、D5 が1重量%以下、D6 が3重量%以下 |
すべて事実(規則 (EU) 2024/1328 の附属書の記載を要約)。ほかに、医療機器・歯科用印象材・馬用品・パッド印刷・美術品の洗浄などの適用除外があります。
6項(a) は、シリコーンポリマー由来の残留物としての D4・D5・D6 を含む混合物で、接着、シール、接合、注型の用途であれば、各物質の濃度が1重量%以下を適用除外の条件としています[参考資料18]。 このため、接着剤・シーラント・ポッティング材の製品では、環状シロキサンの残留量が、この上限との関係で管理項目になると読めます(本記事による解説)。 ただし、どの製品が適用除外に当たるか、2026年6月6日以降の運用や、欧州化学品庁(ECHA)による案内の内容までは、本稿では確認していません。 規則の遵守は、規則の本文と、所管当局・欧州化学品庁の案内で確認してください。
本稿の計算:「0.1%」「1%」と「300 ppm」は、何が違うのか
前章の KE-3450 の ΣD3–D10(300 ppm 未満)と、この規則の閾値を、同じ単位(ppm)に直して並べてみます本稿の計算。 質量基準を仮定すると、1重量%=10,000 ppm、0.1重量%=1,000 ppm、0.3重量%=3,000 ppm、0.5重量%=5,000 ppm、300 ppm=0.03重量%です。
前提と限界:KE-3450 の ppm が質量基準かどうかは、ページに明記がないため本稿が質量基準と仮定しました。 ΣD3–D10 は D3〜D10 の合計(接点障害の観点)、規則の閾値は D4・D5・D6 の各物質ごとの濃度(環境への放出の観点)です。 このため、この図から「規制より厳しい」「規制より甘い」といった評価は引き出せません。 言えるのは、同じシリコーン製品の中でも、接点障害と化学物質規制は、別の指標・別の桁で管理されているということです(本記事による解説)。
10. 課題と、本稿で確認できなかったこと
(1) 具体的な数値が確認できなかった項目
シリコーンのガラス転移温度と熱膨張係数の具体値、ゲルの弾性率は、本稿が参照した信越化学・Wacker・Dow の公開資料では確認できなかったため、記載していません。 弾性率については、Dow の技術論文にシリコーンエラストマーに典型的な値が0.1〜2 MPa、レジンが1 GPa 超という記載があるだけで[参考資料22]、製品ごとの値や試験条件は確認していません。 熱応力の見積もり(本シリーズ「熱膨張係数」編)にシリコーンの値を当てはめるには、使う製品のデータシートで、条件を揃えた値を確認する必要があります。
(2) 接着強さの試験条件
KE-3450 のせん断接着強さ(Al/Al)1.6 MPa、KE-1066 の接着強さ 0.4 MPa は、ページに試験規格・被着体の条件・硬化条件の記載を確認できなかったため、メーカー公称値として示すにとどめています。 他社製品や他種の接着剤と値を並べて比べることはしていません。
(3) 低分子シロキサンの機構と測定法
接点で酸化ケイ素の膜ができるという説明は Omron の記載にとどまり、放電との関係などの詳しい機構、ΣD3–D10 の測定法は、本稿の一次情報では確認できませんでした。
(4) 化学物質規制の範囲
本稿が扱ったのはEU の REACH 制限(規則 (EU) 2024/1328)だけです。 日本の化審法を含む他の地域の制度、2026年6月6日以降の運用やガイダンス、個別製品が適用除外に当たるかどうかは、本稿では確認していません。
(5) 確認した企業の範囲
本稿は、信越化学、Wacker、Dow の公式の技術資料を中心に確認しました。 Momentive など他のメーカーの資料は、今回の確認範囲に含めていません。 会社名は出典の所在を示すもので、製品や会社の優劣を示すものではありません。
(6) 結合エネルギーの数値
同じ信越化学の資料でも Si–O の値が異なり(433 kJ/mol と約443 kJ/mol 相当)、どの化合物の何の値かの明記もありません。 本稿は、数値の細部ではなく大小関係(約2割強い)として扱っています。
- 骨格は Si–O–Si、側鎖はメチル基。信越化学の資料で Si–O は C–C より約2割強い結合エネルギーです事実。比は約1.22〜1.25です本稿の計算
- 空気中の耐熱と、密閉下の耐熱は別物。密閉では劣化とともに軟化し、寿命が短くなります事実
- 硬化は3方式。縮合型は副生成物が出る、付加型は副生成物なしで白金触媒、過酸化物は熱で硬化する固形ゴム向けです事実
- 付加型は、窒素・硫黄・スズ・リンなどに阻害されます。隣接材料との相性確認が設計項目になります事実
- 柔らかさは応力を逃がし、代わりに接着は製品側で作り込みます。ゲルは「極めて柔らかい」封止材です事実
- 低分子シロキサンは、低減品でも「ゼロ」ではありません。Omron は、リレーの近くにシリコーン系の被覆を使わないよう求めています事実
- D4・D5・D6 は、2026年6月6日から0.1%以上の上市が禁止。接着・シール・注型向けの残留物は1%以下が適用除外の条件です事実
11. 用語集
- シリコーン
- Si–O–Si の骨格(ポリシロキサン)に有機基がついた高分子の総称。オイル・ゴム・レジン・ゲルがある。
- シロキサン結合
- ケイ素と酸素の結合(Si–O–Si)。シリコーンの主鎖。
- PDMS
- ポリジメチルシロキサン。メチル基だけを持つ、最も広く使われるシリコーン。
- RTV
- room-temperature vulcanizing。室温で硬化する液状ゴム。1液型(RTV-1)と2液型(RTV-2)がある。
- HTV
- 熱で硬化する固形のシリコーンゴム。過酸化物硬化や白金触媒の付加型がある。
- LIMS/LSR
- 液状シリコーンゴムの射出成形(LIMS)と、その材料(LSR)。
- 縮合型
- 湿気や縮合反応で硬化する方式。副生成物(酢酸・アミン・アルコール・アセトンなど)が出る。
- 付加型
- 白金触媒で硬化し、副生成物が出ない方式。硬化阻害物質に注意が要る。
- 硬化阻害
- 付加型で白金触媒が働かず、硬化が止まる現象。窒素・硫黄・スズ・リンの化合物などが原因になりうる。
- ゲル
- 架橋密度が非常に低く、極めて柔らかいシリコーン。応力緩和の封止に使う。
- 低分子シロキサン
- 重合度の低い環状・鎖状のシロキサン。揮発して電気接点に届くと接点障害の原因になる。
- ΣD3–D10
- 環状シロキサン D3〜D10 の合計。低分子シロキサン量の指標としてメーカーが示す。
- D4・D5・D6
- 環状のジメチルシロキサン(4・5・6量体)。EU の REACH で制限される。
- SVHC
- 非常に高い懸念を引き起こす物質。REACH の候補物質リストに載る。
- vPvB/PBT
- 非常に残留性が高く生物蓄積性が高い/残留性・生物蓄積性・毒性を持つ、という分類。
- 適用除外(derogation)
- 制限の条文のうち、特定の用途・条件で制限を適用しないとする規定。
- プライマー
- 接着の前に被着体に塗り、密着を助ける下塗り剤。
- 脆化点
- 低温で材料がもろくなる温度。ゴムの耐寒性の目安。
12. 参考資料(一次情報)
- 信越化学「What is silicone made of?」 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin1.shtml
- 信越化学「How is silicone made?」 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin2.shtml
- 信越化学「Features attributable to siloxane bonds」 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin4.shtml
- 信越化学「Features attributable to molecular structure」 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin5.shtml
- 信越化学「What is Silicone Rubber for Molding?」(成形用シリコーンゴム選定ガイド) https://www.shinetsusilicone-global.com/guide/rubber/about/
- 信越化学「Characteristic properties of Silicone Rubber Compounds」(カタログ PDF) https://www.shinetsusilicone-global.com/catalog/pdf/rubber_e.pdf
- 信越化学「Silicone Fluids: The Unique Properties of Silicones」 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/oil/detail/about/index2.shtml
- 信越化学「One-component liquid rubbers」 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/one_rtv/index.shtml
- 信越化学「Two-component liquid rubbers (for electric and electronic applications)」 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/two_rtv_e/index.shtml
- 信越化学「Silicone resins」 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/resin/index.shtml
- 信越化学「One-component condensation cure liquid silicone rubber flame retardant type(KE-3450)」 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/notice/168/index2.shtml
- Wacker「SILICONES – Definition and Properties」 https://www.wacker.com/cms/en-us/products/product-groups/silicones/silicones.html
- Wacker「Room-Temperature-Vulcanizing Silicone Rubber (RTV-1/RTV-2)」 https://www.wacker.com/cms/en-us/products/product-groups/silicone-rubber/room-temperature-silicone-rubber.html
- Wacker「Solid Silicone Rubber (HTV)」 https://www.wacker.com/cms/en-us/products/product-groups/silicone-rubber/solid-silicone-rubber.html
- Dow「Gels, Encapsulants and Conformal Coatings」 https://www.dow.com/en-us/product-technology/pt-gels-encapsulants.html
- Dowプレスリリース「Dow launches DOWSIL™ EG-4175 Silicone Gel to enable higher voltage power electronics in electric vehicles and renewable energy technologies」2025年9月4日 https://corporate.dow.com/en-us/news/press-releases/dow-launches-dowsil-eg-4175-silicone-gel.html
- Omronリレー FAQ「If the side of a relay is coated with silicon that contains siloxane (low molecular-weight siloxane reducer) in the coating agent, will contact failure occur? What about urethane coating?」(ID FAQE10061E、2021年10月1日更新。現在は aratas.com のページに転送される) https://components.omron.com/eu-en/faq/relays/FAQE10061
- 欧州委員会Commission Regulation (EU) 2024/1328 of 16 May 2024 amending Annex XVII to Regulation (EC) No 1907/2006 (REACH) as regards octamethylcyclotetrasiloxane (D4), decamethylcyclopentasiloxane (D5) and dodecamethylcyclohexasiloxane (D6) https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1328/oj/eng
- 信越化学「Highly thermostable silicone gel(KE-1066-A/B)」 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/notice/165/index2.shtml
- 信越化学「What types of silicone products are available?」 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin3.shtml
- Dow「Encapsulants and gels selection guide」(Form No. 11-3922-01-1123、PDF) https://www.dow.com/documents/11/11-3922-01-silicone-encapsulants-and-gels.pdf
- Dow技術論文「Silicone Material Solutions for Battery Fire Protection」(Form No. 80-8541-01-0825、PDF) https://www.dow.com/documents/80/80-8541-01-silicone-material-solutions-for-battery-fire-protection.pdf
13. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| シリコーンが主鎖をケイ素と酸素とする「無機の合成高分子」で、側鎖に有機基を導入できること。主な原料がシリカ・水・メタノールで、ポリジメチルシロキサンの構成要素の約60%がシリカと水に由来すること | 信越化学「What is silicone made of?」出典1 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin1.shtml | 事実 |
| シリコーンがフルイド、ゴム、液状ゴム、レジン、シランに大別されること | 信越化学「How is silicone made?」出典2 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin2.shtml | 事実 |
| Si–O 結合が有機高分子の C–C・C–O より結合エネルギーが高く、約200℃でも切れず、耐熱性・耐候性が高いこと | 信越化学「Features attributable to siloxane bonds」出典3 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin4.shtml | 事実 |
| ジメチルシリコーンが Si–O 結合6個で360度のらせんを描く柔軟な構造であること。ポリマー表面が疎水性のメチル基で覆われ表面エネルギーが低く、耐寒性・撥水性・離型性があること | 信越化学「Features attributable to molecular structure」出典4 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin5.shtml | 事実 |
| Si–O が106 kcal/mol、C–C が85 kcal/mol。分子間力が小さく、メチル基が自由に回転して撥水性・離型性を生むこと。成形用ゴムがミラブルと LIMS に大別されること | 信越化学「What is Silicone Rubber for Molding?」出典5 https://www.shinetsusilicone-global.com/guide/rubber/about/ | 事実 |
| Si–O が433 kJ/mol、C–C が355 kJ/mol。150℃でほとんど変化なく、200℃で10,000時間以上、短時間350℃に耐える製品があること。脆化点が有機ゴム−20〜−30℃、シリコーンゴム−60〜−70℃で、−100℃以下の製品もあること。空気中では加熱で硬化し、密閉下では軟化して寿命が空気中より短いこと、対策として配合・硬化剤・ポストキュア。150℃超の高圧蒸気でシロキサンポリマーが分解すること。吸水が約1%であること。薄膜の気体・水蒸気透過性が有機ゴム・プラスチックフィルムより高いこと。室温の強度が有機ゴムより低く、高温で逆転すること、引裂強さが約9.8 kN/m。寿命を「破断伸びが初期値の1/2になる時間」と定義していること | 信越化学「Characteristic properties of Silicone Rubber Compounds」出典6 https://www.shinetsusilicone-global.com/catalog/pdf/rubber_e.pdf | 事実 |
| ジメチルシリコーンオイルが空気中150℃までほぼ変化せず−50℃でも流動、メチルフェニル型が250℃で長期使用でき−65℃でも流動すること。表面張力が16〜21 mN/m(鉱油 29.7、水 72)、水の接触角が90°超。離型剤・消泡剤・撥水処理に使われること | 信越化学「Silicone Fluids」出典7 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/oil/detail/about/index2.shtml | 事実 |
| 1液の液状ゴムがチューブから出してすぐ作業でき、ほとんどの材料に接着し、使用温度範囲が−40〜+180℃であること。製品表で縮合型(副生成物はアルコール)が多く、アセトン型もあること | 信越化学「One-component liquid rubbers」出典8 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/one_rtv/index.shtml | 事実 |
| 2液の液状ゴムが深部硬化性・硬化速度の調整・長期保管の特長を持つこと。製品表に縮合型・付加型があり、KE-270 に「硬化阻害なし」、付加型に「加熱で硬化時間を短縮」の記載があること。「初期接着が2時間以内」「自己接着」の記載があること | 信越化学「Two-component liquid rubbers」出典9 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/two_rtv_e/index.shtml | 事実 |
| シリコーンレジンが3次元の網目構造で硬い膜になり、耐熱性が250℃までであること | 信越化学「Silicone resins」出典10 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/type/resin/index.shtml | 事実 |
| KE-3450 が1液縮合型(アセトン)で、低分子シロキサンを低減し、ΣD3–D10 が300 ppm 未満、せん断接着強さ(Al/Al)1.6 MPa、デュロメーター A 42、引張強さ2.5 MPa、破断伸び390%、UL94 V-0 で、金属を腐食しないこと | 信越化学 KE-3450 のページ出典11 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/notice/168/index2.shtml | 事実 |
| Müller–Rochow 法により金属ケイ素と塩化メチルからメチルクロロシランが得られ、工業生産の出発点になったこと。シリコーンが最大300℃、−50℃(特殊品−100℃)まで柔軟であること | Wacker「SILICONES – Definition and Properties」出典12 https://www.wacker.com/cms/en-us/products/product-groups/silicones/silicones.html | 事実 |
| RTV-1 が湿気で硬化し表面に皮膜ができ内部へ進むこと、副生成物(酢酸・アミン・アルコールなど)が出ること。RTV-2 の縮合型が有機スズ触媒を要し副生成物が出ること、付加型が白金触媒を要し副生成物が出ないこと、紫外線で短時間に硬化する特殊品があること。ゲルの架橋密度が非常に低く極めて柔らかいこと。RTV の用途(接着・シール・ポッティング・封止・コーティング・注型) | Wacker「RTV-1/RTV-2」出典13 https://www.wacker.com/cms/en-us/products/product-groups/silicone-rubber/room-temperature-silicone-rubber.html | 事実 |
| 固形シリコーンゴムに過酸化物硬化(ELASTOSIL R)と白金触媒の付加型(R plus)があること。押出・カレンダー・圧縮・トランスファー・射出成形で加工でき、熱で硬化すること。液状ゴムが射出成形と低圧充填で加工できること | Wacker「Solid Silicone Rubber (HTV)」出典14 https://www.wacker.com/cms/en-us/products/product-groups/silicone-rubber/solid-silicone-rubber.html | 事実 |
| 付加型の硬化阻害物質の分類(窒素・硫黄・スズ・リンの化合物、ヒ素・アンチモン・セレン・テルルを含むもの、残留溶剤・モノマー、一部のプライマー) | Dow「Gels, Encapsulants and Conformal Coatings」出典15 https://www.dow.com/en-us/product-technology/pt-gels-encapsulants.html | 事実 |
| ゲルが極めて柔らかく硬化しながらエラストマーの寸法安定性を持つ特殊なクラスの封止材であること。EG-4175 が最大180℃に耐え、振動を吸収し、小さな亀裂を自己修復し(メーカーの主張)、プライマーなしで接着すること。EA-7158 が1液・高強度で多くの基材にプライマーなしで接着し熱で速く硬化すること | Dow プレスリリース(2025年9月4日)出典16 https://corporate.dow.com/en-us/news/press-releases/dow-launches-dowsil-eg-4175-silicone-gel.html | 事実 |
| リレーのシリコーン系被覆に関する Omron の回答(シロキサンフリーの被覆材を使う、低減品でも接点障害の可能性、シロキサンは透過性が高く樹脂封止型リレーに侵入、低減品は侵入までの時間が延びるだけ、接点に酸化ケイ素の膜、側面だけでも不可、ウレタン・エポキシは微量のシロキサンを含みうるため成分確認、基板上はシリコーンを含まない樹脂)。ID と更新日 | Omron リレー FAQ出典17 https://components.omron.com/eu-en/faq/relays/FAQE10061 | 事実 |
| 規則 (EU) 2024/1328 が2024年5月16日付で、同年5月17日に官報掲載されたこと。D4・D5・D6 の CAS・EC 番号。2018年6月13日の SVHC 特定(vPvB。D4 は PBT、D5・D6 は D4 を0.1%以上含む場合 PBT)。規則 (EU) 2018/35(2018年1月10日)。RAC の結論(化粧品が主な放出源)。1項(0.1重量%以上、2026年6月6日以降)、2項(ドライクリーニング)、3項(化粧品2027年、機器・医薬品2031年、D5 ドライクリーニング2034年)、4項(a)・5項・6項(a)(b)(f)(g)(h) の適用除外の内容。7項(密閉系ドライクリーニング) | Commission Regulation (EU) 2024/1328出典18 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1328/oj/eng | 事実 |
| KE-1066-A/B の使用温度範囲−40〜200℃、2成分付加型、標準硬化条件80℃×1時間、針入度30(200℃×2,000時間後29)、接着強さ0.4 MPa(Al・Cu)、体積抵抗率15 TΩ·m、絶縁破壊強さ16 kV/mm | 信越化学 KE-1066-A/B のページ出典19 https://www.shinetsusilicone-global.com/products/notice/165/index2.shtml | 事実 |
| 信越化学の製品が5,000を超えること | 信越化学「What types of silicone products are available?」出典20 https://www.shinetsusilicone-global.com/info/begin3.shtml | 事実 |
| シリコーンがウレタン・エポキシに対して、熱サイクルや熱膨張係数の不一致による機械的応力からの保護(とくにゲル)と、衝撃・振動からの保護で利点があるという Dow の主張 | Dow 選定ガイド(Form No. 11-3922-01-1123)出典21 https://www.dow.com/documents/11/11-3922-01-silicone-encapsulants-and-gels.pdf | 事実 |
| シリコーンエラストマーに典型的な弾性率が0.1〜2 MPa、シリコーンレジンがフィラーなしで1 GPa 超になりうること | Dow 技術論文(Form No. 80-8541-01-0825)出典22 https://www.dow.com/documents/80/80-8541-01-silicone-material-solutions-for-battery-fire-protection.pdf | 事実 |
| Si–O/C–C の比 433÷355=約1.22、106÷85=約1.25、1 kcal=4.184 kJ による換算(約443 kJ/mol、約356 kJ/mol)。1%=10,000 ppm、0.1%=1,000 ppm、300 ppm=0.03%、1%÷0.03%≒33倍、0.1%÷0.03%≒3.3倍。2024年6月6日の発効日(官報掲載の翌日から数えて20日目) | 本稿の計算。KE-3450 の ppm を質量基準と仮定した。ΣD3–D10(D3〜D10 の合計)と規則の閾値(D4・D5・D6 の各物質)は指標・目的が異なり、大小を比べる意図はない | 本稿の計算 |
| 2026年6月6日以降の運用、ECHA の案内、個別製品が適用除外に当たるかどうか。日本の化審法など EU 以外の制度 | 本稿の調査範囲では確認しておらず、記載していない | 解説 |
| シリコーンのガラス転移温度・熱膨張係数の具体値、ゲルの弾性率、製品ごとの弾性率の値。接着強さ(KE-3450、KE-1066)の試験規格・被着体・硬化条件。ΣD3–D10 の測定法。放電と酸化ケイ素膜の関係。Momentive など他のメーカーの資料 | 本稿が参照した公開資料では確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 付加型のヒドロシリル化反応の説明(Si–H とビニル基、白金触媒) | 一般的な化学の説明であり、本稿が参照した Wacker・信越化学の資料には反応式の記載を確認できていない | 解説 |
| 3つの硬化方式への整理。架橋密度による種類の整理と「用途名は配合に付けられた呼び名」という見方。硬さの軸でのエポキシ・ウレタン・シリコーンの位置づけ。空気中の耐熱データが封止部の寿命にそのまま当てはまらない可能性。付加型で隣接材料との相性確認が設計項目になること。「プライマーなし」が売り文句になる理由、接着強度試験の読み方、吸水と透過性が別の性質であること。低分子シロキサンの「低減」と「ゼロ」の間の設計上の読み取り。接着・封止の製品にとっての規制の意味。同一製品内で接点障害と化学物質規制が別の指標で管理されること | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない。ウレタン・エポキシの位置づけは本シリーズ「エポキシ樹脂」「ポリウレタンとエラストマー」「熱膨張係数」編による | 解説 |
| 図1・図2・図3・図5・図6・図7・図8が説明のための作図であること。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月3日/出典は一次情報(メーカーの公式資料、部品メーカーの FAQ、EU 規則)に限定しています。 製品の物性値はメーカー公称値であり、グレード・試験法・条件が異なるため、数値の優劣を比べるものではありません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 シリコーンのガラス転移温度と熱膨張係数、ゲルの弾性率、製品ごとの弾性率、接着強さの試験条件、ΣD3–D10 の測定法、放電との関係、EU 以外の化学物質規制、2026年6月6日以降の運用については、公開された一次情報で確認できなかった、あるいは扱わない方針のため記載していません。 規制の遵守は、規則の本文と所管当局の案内で確認してください。 図1・図2・図3・図5・図6・図7・図8はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の分子配置・製品の実物・断面を示すものではありません。