TECHNOLOGY EXPLAINER
ガラスのUV接着
― 「ガラスは紫外線を通す」が、通すのは全部ではない
ガラスどうし、ガラスと金属を、紫外線で数秒から数十秒で固めて貼り合わせる——ガラス家具、ガラス製品、光学部品、ディスプレイで使われる接着の方法です。 カギは「光がガラスを通って接着層に届くか」です。SCHOTT の公表値では、厚さ2 mm の高透過ガラス(B 270)は UVA を約84%通す一方、UVB は約19%、254 nm は0.1%未満です。この記事では、材料・光・界面(シラン)・耐湿・評価を、メーカーと学会の一次情報で整理します。

- ガラスのUV接着とは何か(3行でつかむ)
- 材料と工程 ― 何を、どの順で貼るか
- ガラスは紫外線を通すか ― 通す波長と、通さない波長
- 本稿の計算:ガラスを通ったあとに、結合面で何が残るか
- 素材技術者の視点①:ガラスは「種類」で別の相手になる
- 屈折率合わせ ― ガラスと接着剤の差を測る
- 界面を設計する ― プライマーとシランカップリング
- 耐湿・耐水 ― 水が界面に来たとき
- 接着強度の評価 ― 数字の読み方
- 素材技術者の視点②:同じ接着剤でも、相手で結果が変わる
- 用途 ― ガラス家具、ガラス製品、光学部品、ディスプレイ
- 確認できなかったこと/課題
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
製品データシートの値はメーカー公称(代表値)であり、グレード・試験方法・改訂日を添えて示します。グレードや試験条件が違う値を並べて優劣をつけることはしません。
1. ガラスのUV接着とは何か(3行でつかむ)
ここでの「ガラスのUV接着」は、紫外線や可視光で固まる透明な接着剤を、ガラスと、ガラスまたは金属などの間に塗り、ガラス越しに光を当てて固める接着のことです。光硬化の基本(光開始剤、ラジカル重合とカチオン重合、酸素阻害、収縮、評価)は本シリーズ「UV硬化樹脂透明タイプ」編で扱っています。この記事は、そのうちガラスを相手にしたときに固有の論点に絞ります。
- どう貼るか:Dymax の資料は、少なくとも片方の面が UV を通す接着で、片側の面に接着剤の滴またはビードを塗り、2面を合わせて接着剤を広げ、5〜10秒、適した紫外線を当てる手順を示しています。推奨ランプは同社の2000-EC フラッドランプです事実
- 何に使うか:Dymax は、同社のガラス接着剤が軟質ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛クリスタル、鋼、めっき金属、熱硬化性プラスチックなどに接着し、ガラスどうし・ガラスと金属の組み立てに使われ、環境に強い接着で熱サイクル時の性能も良好だと述べています事実
- 何が難しいか:Henkel は、接着が成功するには片方の基材が適切な光を通す必要があると述べています事実。ガラスの種類によっては UV を遮り、さらに水(湿気)が接着界面に来たときの耐久性と、相手の素材との組み合わせで結果が変わります(本記事による整理)
透明なガラスでも、接着剤が必要とする波長の光を全部は通しません。 SCHOTT の B 270(スーパーホワイトの改良ソーダ石灰ガラス)の公表値は、厚さ2.0 mm で、254 nm が 0.1%未満、380 nm が 90.8%、UVA が 84%、UVB が 19% です事実。 Henkel の資料は、さらにPVB 合わせガラスなどは 365 nm の光をすべて遮ると述べています事実。 「ガラスだから UV が通る」は、ガラスの種類・厚さ・波長を確認するまでは仮説です(本記事による解説)。
2. 材料と工程 ― 何を、どの順で貼るか
(1) 材料の系統
ガラス用の UV 接着剤は、多くがアクリル系(アクリルウレタンや変性アクリレート)の1液無溶剤です。公開されている製品情報から、ガラスに関するものを整理します(メーカー公称)。
| 製品(メーカー) | 化学系 | ガラスに関する記載 | 屈折率(公称) |
|---|---|---|---|
| Ultra Light-Weld 4-20260-VLV(Dymax) | アクリルウレタン | グラスウェア・ステムウェアの接着、ガラスケース、ガラスとレンガ・大理石の接着。可視光で硬化すれば UV を遮るガラスにも使えるとされる | 1.51(20 ℃、ASTM D542) |
| 425(Dymax) | アクリルウレタン | ガラスに水のように無色の接着を作るとし、食洗機に耐える接着、と記載。一方、並外れた耐湿性が必要な用途では評価が必要とも記載 | 1.50(20 ℃) |
| LOCTITE AA 3492(Henkel) | 変性アクリレート | ガラスどうし、ガラスと他の材料の接着、ポッティング、シール。装飾ガラス、成形したガラス食器、自動車の照明部品。365 nm の UV で硬化 | 1.48(未硬化の液) |
| LOCTITE AA 3311(Henkel) | アクリルウレタン | 主用途は PVC とポリカーボネートの接着。ガラスにも「優れた接着」を示すとされる。UV/可視光で硬化 | 1.5(硬化物) |
| DELO PHOTOBOND GB(DELO) | アクリレート系 | ガラス接着(ガラスどうし、異種ガラス)、装飾部材。耐 UV・耐候性、応力を均す。データシートの数値は確認できなかった | (確認できなかった) |
すべて事実(メーカー公称。Dymax 4-20260-VLV[参考資料5]・425[参考資料6]、Henkel AA 3492(2014年11月版)[参考資料7]・AA 3311(2026年4月版)[参考資料8]、DELO[参考資料9])。屈折率は、硬化物・未硬化の液の違い、測定法の違いがあるため、並べて優劣をつけるものではありません。
(2) 工程 ― 光が通る側と、通らなくてよい側
Dymax のデータシート(4-20260-VLV)は、貼り合わせる面をグリース、離型剤などの汚染のない清浄な状態にするよう求め、接着剤は光に反応するため光を遮る(遮光性の)吐出部品を使い、硬化後は部品が冷めてから試験や負荷をかけるよう述べています事実。Henkel の AA 3492 のデータシートは、結合面で放射照度を最低40 mW/cm²確保し、固定時間の5〜6倍の露光時間をとるよう勧めています事実。
DELO は、少なくとも片方の部品が硬化に使う波長を透過する必要があり、両方が不透明でも事前活性化で光硬化を使えること、影になる部分には光と加熱(+60 ℃から)または湿気を組み合わせる二重硬化があることを述べています事実。Dymax の資料は、すべての Light Weld 樹脂は硬化のために UV 光に完全に露出される必要があると注意しています事実。
3. ガラスは紫外線を通すか ― 通す波長と、通さない波長
ガラスの UV 透過は、ガラスの組成・厚さ・波長で決まります。SCHOTT の B 270 の公表値(スーパーホワイトの改良ソーダ石灰ガラス、厚さ2.0 mm)を例に見ます。
| 波長(厚さ2.0 mm) | 透過率 τ | 意味 |
|---|---|---|
| 254 nm(水銀ランプの輝線) | 0.1%未満 | ほぼ透過しない |
| 293 nm(λS) | 5% | 透過の立ち上がりの端(τ = 0.05) |
| 310 nm(λc) | 46% | UV 端波長(τ = 0.46) |
| 338 nm(λP) | 85% | 透過がほぼ上限になる波長(τ = 0.85) |
| 380 nm | 90.8% | UVA の高波長側 |
| UVA の帯域平均 | 84% | UVA 帯域の平均(SCHOTT の表記は τUVA) |
| UVB の帯域平均 | 19% | (SCHOTT の表記は τUVB) |
すべて事実(SCHOTT B 270 の技術詳細[参考資料11]。厚さ2.0 mm の値で、非保証の代表値)。「意味」の列と、UVA・UVB の波長範囲の記載は本記事の整理で、SCHOTT のページに範囲の数値は明示されていません。
ここから読めるのは次の3点です(本記事による解説)。
- 365〜405 nm の UV-LED は、B 270 のようなガラスを十分に通ります。380 nm で90.8%、UVA の帯域で84%という公表値と整合します。ただし、365 nm そのものの透過率は SCHOTT のページに数値がなく、本稿では確認できませんでした
- 254 nm の水銀ランプの輝線は、ガラスを通りません。Henkel は表面硬化に 254 nm などの短波長が有効と述べています(本シリーズ「UV硬化樹脂透明タイプ」編)が、ガラス越しの接着では、この波長は接着層に届きません。接着層の硬化は 365 nm 前後以上の光に頼ります
- ガラスの種類が変われば図の曲線も変わります。SCHOTT は BOROFLOAT 33(ホウケイ酸ガラス)を、近赤外・紫外の領域で優れた透明性を持つと説明し、紫外域の透過率はグラフで示しています(数値は本稿では読み取りません)事実
(1) 光を通さないガラス
Henkel のガイドは、透明に見えても UV を遮るものの例を挙げています。大半の透明ガラスは UV を通しますが、Flint F ガラス(D.E.D.F. 5901)と PVB 合わせ安全ガラスは、UV 硬化に必要な 365 nm の光をすべて遮るとあります事実。このような基材には可視光で硬化する開始剤を含む製品が使えるとし、色付き・着色された基材越しでも硬化できる場合がある、としています事実。
Dymax の 4-20260-VLV のデータシートは、無色・着色ガラスに使え、可視光で硬化すれば UV を遮るガラスにも使えるとしています(メーカー公称)事実。Dymax のガラス接着のページは、LED または UV/可視光で硬化し、UV を遮るガラスや着色ガラスには、活性剤または熱で硬化する品種があると述べています事実。DELO も、365・400・460 nm の LED と、事前活性化・二重硬化で、片側が光を通さない場合に対応できるとしています事実。
4. 本稿の計算:ガラスを通ったあとに、結合面で何が残るか
接着剤に届く光量は「表面の放射照度 × 基材の透過率」です。Henkel の AA 3492 のデータシートは、接着(基材の間)に結合面で最低 40 mW/cm²を推奨しています(メーカー公称)事実。 逆算すると、表面で必要な放射照度は 40 ÷ 透過率 です本稿の計算。
- 基材なし:40 ÷ 1 = 40 mW/cm²
- B 270(厚さ2.0 mm)を通す場合:UVA の透過率 84% を使うと、40 ÷ 0.84 = 約48 mW/cm²
- UV を通すポリカーボネート(365 nm で約70%):40 ÷ 0.70 = 約57 mW/cm²
- UV 吸収タイプのポリカーボネート(365 nm で約3%):40 ÷ 0.03 = 約1,330 mW/cm²
前提と限界:透過率の84%は SCHOTT の UVA の帯域平均で、365 nm そのものの値ではありません。ポリカーボネートの約70%と約3%は Henkel のガイドの記載(365 nm、「約」)です事実。40 mW/cm² は AA 3492(UV 硬化品)の推奨値で、他の接着剤には当てはまりません。
B 270(厚さ2.0 mm)の公表値では、UVB が19%、254 nm が0.1%未満です事実。光が2枚のガラスを続けて通る構成(たとえば合わせ構造)を考えると、単純に掛け算して、UVA は 0.84 × 0.84 = 約71%、UVB は 0.19 × 0.19 = 約3.6% です本稿の計算。
前提と限界:各板の値を単純に掛けた粗い見積りで、板の間の界面反射が樹脂で減ることなどを考慮していません。UVA の71%は2枚目の板の手前で止まる場合(片側のガラス越し)より低めに出ます。
Henkel の AA 3492 のデータシートは、ガラス顕微鏡スライドの固定時間(0.1 N/mm² のせん断強さに達する時間)を、365 nm で測った放射照度ごとに示しています。強度×時間を計算します本稿の計算。
- 6 mW/cm² × 5〜20 秒 = 30〜120 mJ/cm²
- 30 mW/cm² × 4 秒 = 120 mJ/cm²
- 100 mW/cm² × 1 秒 = 100 mJ/cm²
同データシートは、完全硬化は固定時間の約6倍と見積もっています事実。100 mW/cm² なら 6 秒、30 mW/cm² なら 24 秒で、線量にして約0.6〜0.7 J/cm²です(100 × 6 = 600、30 × 24 = 720 mJ/cm²。本稿の計算)。
前提と限界:単一の波長(365 nm)で、同じ種類の光源での値と読めます。「UV硬化樹脂透明タイプ」編で見た Dymax 4-20260-VLV のように、光源と測定範囲が違うと強度×時間は1桁以上ばらつくことがあります。
Henkel の AA 3311(2026年4月版)のデータシートには、同じガラススライドでの固定時間が、LED 投光器(405 nm で 514 mW/cm²)で5秒、365 nm で 100 mW/cm² で5秒、ブラックライト(365 nm で 6 mW/cm²)で15秒と示されています事実。強度×時間にすると約2.6 J/cm²、約0.5 J/cm²、約0.09 J/cm² です本稿の計算。波長が違えば、同じ固定時間でも強度×時間が約5倍(2.57 ÷ 0.5 ≒ 5.1)違うことを示しています(本記事による解説。測定波長が 405 nm と 365 nm で異なり、光源も別と読めます)。
5. 素材技術者の視点①:ガラスは「種類」で別の相手になる
SCHOTT の公表値で、2種類のガラスを並べます(非保証の代表値)事実。
| 項目 | B 270(改良ソーダ石灰ガラス) | BOROFLOAT 33(ホウケイ酸ガラス) |
|---|---|---|
| 屈折率 nd(587.6 nm) | 1.5230 | 1.47140(技術詳細)/1.471(データシート) |
| 熱膨張係数(20〜300 ℃) | 9.4 × 10⁻⁶ K⁻¹(静的測定) | 3.25 × 10⁻⁶ K⁻¹(ISO 7991) |
| UV の扱い | 厚さ2.0 mm の透過率:254 nm 0.1%未満、380 nm 90.8%、UVA 84%、UVB 19% | 紫外・近赤外で優れた透明性(紫外域の透過率はグラフ。数値は本稿では読み取らない) |
| その他 | スーパーホワイト(変色を避けるため高純度原料を使用) | CTE はソーダ石灰ガラスの約1/3(SCHOTT の記載)。ヤング率 64 kN/mm² |
すべて事実(SCHOTT B 270[参考資料11]、BOROFLOAT 33 の技術詳細[参考資料12]およびデータシート[参考資料13]。非保証の代表値)。
- 屈折率:1.523 と 1.471 では、同じ接着剤(屈折率 1.50〜1.51)との差が約0.01〜0.04と変わります(次章)
- 熱膨張:Dymax 4-20260-VLV の熱膨張係数は α1 が66、α2 が212 µm/m/℃(メーカー公称、一般に α1 は Tg 以下の値)です事実。B 270(9.4)に対して α1 は約7.0倍(66 ÷ 9.4)、BOROFLOAT 33(3.25)に対して約20倍(66 ÷ 3.25)です本稿の計算。ただし温度範囲や測定法がそろっていない値どうしの比で、目安です。熱膨張が小さいガラスほど、接着層との差が大きくなると読めます(本記事による解説)。熱膨張係数と接着層の信頼性は、本シリーズ「熱膨張係数」編で扱っています
- 表面の化学:Gelest のシランカップリング剤のガイドは、ナトリウムやリン酸を多く含むガラスは、シランに対して「最も厄介な基材」になりやすいと述べています。アルカリ金属とリン酸は、ケイ素との加水分解に強い結合を作らないばかりか、ケイ素–酸素結合の切断と再編を触媒する、とあります事実。さらに、バルクのガラスは製造時に不純物が表面に集まりやすく、表面のナトリウム濃度はバルク分析より桁違いに高いことが多い、としています事実。次々章で、この意味を見ます
6. 屈折率合わせ ― ガラスと接着剤の差を測る
ガラスの貼り合わせでは、接着層の屈折率がガラスに近いほど、接着線は目立ちにくくなります。「UV硬化樹脂透明タイプ」編で扱った界面反射の式(R = ((n₁ − n₂) ÷ (n₁ + n₂))²、垂直入射、吸収と多重反射は無視)で、SCHOTT の2種類のガラスと、公表されている接着剤の屈折率の組み合わせを計算します本稿の計算。
| ガラス(nd) | 接着剤(公称の屈折率) | 屈折率差 Δn | 1界面の反射率 R(本稿の計算) |
|---|---|---|---|
| B 270(1.5230) | 空気(1.0) | 0.523 | 約4.3% |
| BOROFLOAT 33(1.4714) | 空気(1.0) | 0.471 | 約3.6% |
| B 270(1.5230) | 4-20260-VLV(1.51) | 0.013 | 約0.0018% |
| B 270(1.5230) | 425(1.50)/AA 3311(1.5) | 0.023 | 約0.0058% |
| B 270(1.5230) | AA 3492(1.48、未硬化の液) | 0.043 | 約0.021% |
| BOROFLOAT 33(1.4714) | 4-20260-VLV(1.51) | 0.039 | 約0.017% |
| BOROFLOAT 33(1.4714) | 425(1.50)/AA 3311(1.5) | 0.029 | 約0.0093% |
| BOROFLOAT 33(1.4714) | AA 3492(1.48、未硬化の液) | 0.009 | 約0.00085% |
ガラスの屈折率は SCHOTT[参考資料11・12]、接着剤の屈折率はメーカー公称[参考資料5・6・7・8]。反射率はすべて本稿の計算です。接着剤の屈折率は、硬化物(4-20260-VLV、425、AA 3311)と未硬化の液(AA 3492)が混在し、波長・測定法も同じではありません。AA 3492 の硬化後の屈折率はデータシートに記載がなく、確認できませんでした。
読み方は3つです(本記事による解説)。
- 空気層は、どのガラスでも3.6〜4.3%の界面が2つ入るので、反射で約7〜8%を失います(B 270 では (1 − 0.043)² = 0.916、BOROFLOAT 33 では (1 − 0.036)² = 0.929。本稿の計算)。接着剤で空気層を埋める効果は、界面あたりの反射率が0.001〜0.02%程度に下がることです(表の値)
- ガラスと接着剤の屈折率差が0.01〜0.04の範囲なら、1界面の反射率は0.001〜0.02%です。この範囲では、接着線の見えやすさを決めるのは、屈折率差よりも気泡・厚みむら・はみ出し(フィレット)の可能性が高いと読めます。ただし、接着線の見え方についての一次情報は、本稿では確認できませんでした
- 異なるグレードの数値は、測定条件が違います。表は優劣ではなく、計算の手順を示す例です
7. 界面を設計する ― プライマーとシランカップリング
接着の強さは、接着剤そのものより界面で決まります。ガラスの表面はケイ素–水酸基(Si–OH)を持ち、シランカップリング剤は、その水酸基と接着剤の高分子の両方に結合する橋渡しの分子です。
(1) シランカップリング剤が界面で何をするか
Gelest のガイド(Arkles 著、第3版、2014年)は、シランカップリング剤の一般式を R–(CH₂)ₙ–Si–X₃ と表し、X が加水分解性の基(アルコキシなど)、R が有機官能基とします。X が加水分解してシラノールになり、無機表面のシラノールと縮合してシロキサン結合を作る、と説明しています事実。トリアルコキシシランの反応は4段階で、加水分解、オリゴマーへの縮合、基材の水酸基との水素結合、乾燥・硬化時の共有結合の形成(脱水)とされます事実。界面では通常、ケイ素1個から基材への結合は1本で、残る2つのシラノールは縮合した形か遊離の形で存在し、有機官能基 R が別の相と反応できる、とあります事実。
同ガイドは、結合の形成にはある程度の可逆性があり、水を除く(120 ℃で30〜90分の加熱、または2〜6時間の真空)と、結合が形成・切断・再形成して内部応力を緩和できるとも述べています事実。0.25%のシラン溶液をガラスに堆積させると、3〜8分子層になりうると計算されていることも述べています事実。
アクリル系の UV 接着剤では、有機官能基がメタクリル基やアクリル基の品種が使われます。Gelest は、アクリレート・メタクリレートがフリーラジカル重合を起こしやすいため、不飽和基を持つシランとの共重合で変性でき、メタクリル基やスチリル基のシランはビニルシランよりずっと付加しやすいと述べ、選択表には「アクリレート、UV 硬化」の区分があります事実。
(2) アクリル系UV樹脂とガラスの実験例
Dalle Vacche らの論文(International Journal of Adhesion and Adhesives、2019年、92巻、16〜22ページ、Politecnico di Torino)は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)鎖を持つ UV 硬化メタクリル樹脂のガラスへの接着を調べました。アクリル官能基を持つシランカップリング剤を、ガラス表面の処理(シラン化)に使う場合と、樹脂の添加剤として使う場合で、重ね合わせ継手のせん断強さと、湿潤環境や水への耐性を評価しています。要旨によると、シランは接着強さを高め、ガラスのシラン化のほうが、添加剤として加えるより効率的でした。PFPE 樹脂の接着強さは、フッ素を含まないアクリル樹脂より低かった一方、PFPE 鎖の疎水性が樹脂とガラスの界面での水分子の移動を妨げるため、耐水性は良好でした事実(要旨に基づく記載。本文は本稿では確認していません)。
Priola らの論文(International Journal of Adhesion and Adhesives、1990年、10巻、77〜80ページ)は、題名で、アルコキシシランのモノマーを含む UV 硬化樹脂のガラス表面への接着を扱っています(題名のみ確認し、本文は確認していません)。
Gelest は、ナトリウム・リン酸が多いガラスは「最も厄介」で、最初の段階は表面のイオンを脱イオン水で抽出して除くこと、さらに疎水性の二重脚(または多脚)シランを官能性シランと併用することが多いと述べています事実。ソーダ石灰ガラスは、まさにナトリウムを含みます(本記事による解説)。
また、同ガイドの臨界表面張力の表は、ソーダ石灰ガラスで、乾いた状態が47、湿った状態が30.0 mN/m(表の単位は mN/m)です事実。臨界表面張力より表面張力の低い液体は、その表面を濡らす(接触角0)と同ガイドは説明しています。表は理由を述べていませんが、表面に水が吸着した状態では、濡らせる液体の範囲が大きく変わりうると読めます(本記事による解説)。 接着前のガラスは、洗浄だけでなく、乾燥と保管の状態も条件になる、ということです。Dymax のデータシートも、貼り合わせる面をグリースや離型剤のない清浄な状態にするよう求めています事実。
8. 耐湿・耐水 ― 水が界面に来たとき
ガラスの接着で最も効いてくるのは水です。Henkel の AA 3492(ガラスどうし、ガラスと他材料の接着用)のデータシートは、49 ℃・結露する湿度に2週間・4週間置いたあと、および食洗機のサイクル25回のあとに、強さが初期値の何%残るかを、相手ごとに示しています(メーカー公称、2014年11月版)事実。
| ガラスと組み合わせた相手 | 試験法 | 49 ℃・結露湿度 2週後 | 同 4週後 | 食洗機 25サイクル後 |
|---|---|---|---|---|
| ガラス(ガラスどうし) | 重ね合わせせん断 ISO 4587 | 100% | 100% | 100% |
| アルミニウム | ブロックせん断 ISO 13445 | 100% | 100% | 100% |
| ステンレス鋼 | ブロックせん断 ISO 13445 | 100% | 100% | 100% |
| G-10 エポキシガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 100% | 100% | 100% |
| ポリカーボネート | ブロックせん断 ISO 13445 | 100% | 90% | 60% |
| アクリル | ブロックせん断 ISO 13445 | 95% | 75% | 90% |
| ABS | ブロックせん断 ISO 13445 | 100% | 70% | 65% |
| PVC | ブロックせん断 ISO 13445 | 70% | 60% | 50% |
すべて事実(Henkel LOCTITE AA 3492 のデータシート、2014年11月版、メーカー公称、初期強さに対する%、試験は22 ℃で実施[参考資料7])。このデータシートは、硬化条件(光量・時間)を、135°はく離以外では示していません。
表のとおり、ガラス、アルミニウム、ステンレス、G-10 との組み合わせでは、4週間後も100%でした。一方、PVC は4週間で60%、ABS は70%、アクリルは75%に下がっています事実。 データシートは、どの界面で壊れたかを書いていません。ガラス側の界面が強いままで、プラスチック側の界面が水で弱くなったと読めます(本記事による解説)。ガラスと金属を貼る限りでは、この結果は有利ですが、プラスチックを含む組み合わせでは、ガラス側の界面がよくても全体は弱くなりうる、ということです。
Dymax の 425 のデータシートは、ガラスへの水のように無色の接着を作り、食洗機に耐えるとする一方、並外れた耐湿性が必要な用途では評価が必要と書いています(メーカー公称)事実。同社の別品種(431)は、高温・高湿の環境に耐え、低収縮で、ガラスどうし・ガラスと金属の用途を想定した接着剤と紹介されています事実。 用途の湿度条件に合わせて、品種を選ぶのが前提です(本記事による解説)。
熱についても、同じ表があります。AA 3492 は、ガラスどうしの重ね合わせせん断が、121 ℃・149 ℃で1,000時間後も100%でした。一方、アルミニウムの六角ボタンとガラスのねじりせん断(ASTM D3658)は、149 ℃で500時間後95%、1,000時間後55%でした事実。ガラスと金属では、熱膨張の差が効いてくると考えられます(本記事による解説)。
老化条件の選び方は、ISO 9142(接着剤の接合部を試験するための標準的な実験室での劣化条件の選択の手引き)が整理しています。単一条件、複合条件、サイクル、熱衝撃、湿度、水や塩水への浸漬などが対象です事実。
9. 接着強度の評価 ― 数字の読み方
同じ AA 3492 のデータシートに、初期の接着強さがあります。相手が違えば、数値は1桁近く違います。
| 相手とガラスの組み合わせ | 試験法 | 強さ(メーカー公称) |
|---|---|---|
| ガラス ― ガラス | 重ね合わせせん断 ISO 4587 | 4.1 N/mm² |
| 鋼 ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 8.3 N/mm² |
| アルミニウム ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 4.1 N/mm² |
| G-10 エポキシガラス ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 3.4 N/mm² |
| PVC ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 2.8 N/mm² |
| ステンレス鋼 ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 2.6 N/mm² |
| ポリカーボネート ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 1.2 N/mm² |
| ABS ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 1 N/mm² |
| アクリル ― ガラス | ブロックせん断 ISO 13445 | 1 N/mm² |
| 135°はく離(データシートは相手を「ガラス」とのみ記載) | 135°はく離(6 mW/cm²、365 nm、30秒で硬化) | 8.8 N/mm |
| アルミニウム六角ボタン ― ガラス | ねじりせん断 ASTM D3658 | 47.5 N·m 以上 |
すべて事実(Henkel LOCTITE AA 3492 のデータシート、2014年11月版、メーカー公称(代表値)[参考資料7])。ISO 4587 と ISO 13445 は別の試験で、数値を直接比べられません。硬化条件は、はく離以外では示されていません。
(1) 破壊のしかたを必ず見る
強さの数字は、どこが壊れたか(破壊モード)とセットで読みます。ISO 10365:2022 は、接着剤の接合部の主な破壊パターンの呼び方を定め、図で示しています事実。一般に、接着剤の中での破壊(凝集破壊)、界面での剥がれ(接着破壊)、貼られた材料の破壊(被着体の破壊)などに分けて記録します(本記事による例示)。AA 3311 のデータシートは、ポリカーボネートの重ね合わせせん断(5.2 N/mm²)で、被着体の破壊と明記しています(メーカー公称)事実。この場合、接着剤はポリカーボネートの強さ以上だった、という意味です(本記事による解説)。
TU Dresden の Weller、Vogt、Zastrau による報告(2010年、材料試験の学会の要旨集、査読なし)は、UV・光硬化アクリレートを使ったガラス–金属の接合部の強さを試験し、破壊は多くの場合、接着破壊だったと述べています。また、安全柵として設計したガラス構造を有限要素法で解析し、接着部の厚さと長さが、応力状態の均一さに大きく影響するという結果を得ています事実。接着部の形状が、材料の強さと同じくらい効く、という指摘です(本記事による解説)。
10. 素材技術者の視点②:同じ接着剤でも、相手で結果が変わる
AA 3492 のデータは、同じ接着剤・同じ試験法(ブロックせん断)で、鋼との組み合わせが8.3 N/mm²、ABS・アクリルとの組み合わせが1 N/mm²と、約8倍(8.3 ÷ 1.0)違います本稿の計算。しかも、湿気での強さの残り方は、ガラス・金属は100%、PVC は60%と、相手で逆転します事実。
つまり、接着剤単体の「ガラス接着剤」という看板では、性能は決まりません。ガラスの種類(組成・表面の状態)、相手の素材、接着層の形状、硬化の光量、使用環境の水分が、全部同時に結果を決めます(本記事による解説)。
実務では、次の順で確認するのが筋だと考えられます(本記事による整理)。
- 光:ガラスの透過率を、実際の厚さ・波長・光源で測り、結合面の放射照度を確認する(第3〜4章)
- 界面:ガラスの種類(ナトリウムの多さ)と表面の状態を確認し、必要ならシラン処理を評価する(第7章)
- 耐久:湿熱、温度サイクル、洗浄(食洗機など)を、実際の相手の組み合わせで試す(第8章、ISO 9142)
- 破壊:強さと破壊モード(ISO 10365)をセットで記録する(第9章)
11. 用途 ― ガラス家具、ガラス製品、光学部品、ディスプレイ
各社の公式資料で確認できる、ガラスの UV 接着の用途です。
- ガラス製品・家具:Dymax は、ステムウェアの組み立て、ヘッドランプ用ガラスの組み立て、噴水・家具の組み立て、アート・建築・防弾ガラスの組み立て、クリスタル製の置物・トロフィー・ノベルティ、ガラスと金属ブラケットの組み立てを挙げています事実。同社の 431 は、家具、容器ガラス、照明・家電のサブアセンブリを用途に挙げています事実。Henkel の AA 3492 は、粗面の装飾ガラス、成形したガラス食器、自動車の照明部品を挙げています事実。Dymax の 4-20260-VLV は、ガラスケースの組み立て、ステムウェア、ガラス食器、ガラスとレンガ・大理石の接着を挙げています事実
- ディスプレイ・光学部品:Dymax のディスプレイ接合の資料は、ガラスとガラス、ガラスとプラスチックを数秒で貼り合わせ、液晶ディスプレイ、カバーガラス、タッチスクリーンの貼り合わせに使われること、空気の巻き込みが少なく、オンデマンド硬化で位置を直せることを述べています事実。DELO の PHOTOBOND の OC シリーズは、ディスプレイ一体化やカバーガラス接着を用途に挙げています事実
- 構造用のガラス接着:TU Dresden の報告は、ガラス構造は従来、クランプやボルトで接合されるが、接着は荷重を均一に伝え、接触部の局所的な応力集中を減らす機会を与えると述べ、UV・光硬化アクリレートを、透明で無色、硬化時間が数分以内という利点とともに挙げています。比較対象は、建築当局が特定のファサード用途(構造シーラントグレージング)で広く認めているシリコーン接着剤です事実。UV 硬化アクリレートが、建築基準や構造用の認証を受けているかどうかは、本稿では確認できませんでした

12. 確認できなかったこと/課題
(1) 365 nm でのガラスごとの透過率
B 270 については 380 nm とUVA の帯域平均が確認できましたが、365 nm そのものの透過率、他のガラス(BOROFLOAT 33 など)の紫外域の数値は、公式ページがグラフでしか示しておらず、本稿では確認できませんでした。着色ガラス、低放射(Low-E)ガラス、合わせガラス、強化ガラスのUV 透過率の公式な数値も、確認できていません。
(2) 接着剤側のデータ
DELO の PHOTOBOND GB のデータシートは、公式サイトの専用ポータルで配布されており、数値を確認できませんでした。AA 3492 のデータシートは2014年11月版で、硬化条件が一部しか書かれておらず、硬化後の屈折率、破壊モードも示されていません。Dymax の 431・429 など、ガラス用の品種のデータシートの数値は、本稿では扱っていません。
(3) シラン処理の実際
市販の1液 UV 接着剤がシラン系の接着促進剤を含むか、ガラス側にプライマー処理を推奨しているかは、本稿が参照した公開資料では確認できませんでした。Dalle Vacche らの論文は要旨のみ、Priola らの論文は題名のみの確認です。
(4) 構造用途・規格
ガラス家具やガラス製品の荷重・耐久に関する規格、建築物でのガラスの UV 接着の認証・基準は、確認できませんでした。TU Dresden の報告は、査読のない学会要旨(2010年)です。
(5) 接着線の見え方
接着線の「見えやすさ」を、屈折率差・気泡・厚みで定量した一次情報は、確認できませんでした。第6章の反射率は、計算上の値です。
- ガラス越しに光を当てて固めます。少なくとも片方の面が光を通す必要があります事実
- ガラスは UV の全部を通しません。B 270(厚さ2.0 mm)は UVA が84%、UVB が19%、254 nm が0.1%未満です。PVB 合わせガラスなどは 365 nm を遮ります事実
- 結合面の光量から逆算します。40 mW/cm² を結合面で得るには、UV 吸収ポリカーボネート越しだと約1,330 mW/cm² が必要です本稿の計算
- 屈折率差が0.01〜0.04なら、1界面の反射は0.001〜0.02%で、空気層の約4%より桁違いに小さい本稿の計算
- 水が界面の弱点です。AA 3492 では、ガラス・金属は4週間の結露湿度で100%、PVC は60%でした事実
- 相手が変われば結果が変わります。同じ接着剤・同じ試験法で8.3 N/mm² から 1 N/mm² まで約8倍の差がありました本稿の計算
13. 用語集
- B 270
- SCHOTT のスーパーホワイトの改良ソーダ石灰ガラス(クラウンガラス)。UV〜近赤外で透過率が高い。
- BOROFLOAT 33
- SCHOTT のフロート法ホウケイ酸ガラス。熱膨張係数が小さい。
- 透過率(τ)
- 入った光のうち、材料を通り抜ける割合。厚さと波長で変わる。
- UVA/UVB/UVC
- 紫外線の波長区分。UVA が315〜400 nm、UVB が280〜315 nm、UVC が200〜280 nm(Henkel の区分)。
- 結合面の放射照度
- 接着層(結合面)に届く光の強さ。表面の放射照度に基材の透過率を掛けたもの。
- 固定時間
- ガラス板どうしで 0.1 N/mm² のせん断強さに達する時間。完全硬化ではない。
- 事前活性化
- 貼り合わせる前に光を当てて反応を始め、不透明な部品の間でも硬化させる方式。
- 屈折率差(Δn)
- 貼り合わせる2つの材料の屈折率の差。小さいほど界面の反射が小さい。
- シランカップリング剤
- 無機表面と有機高分子の両方に結合する橋渡し分子。加水分解性基と有機官能基を持つ。
- 二重脚(ジポーダル)シラン
- ケイ素を2つ持ち、基材に2か所で結合するシラン。加水分解に強く、プライマーに向く(Gelest)。
- 臨界表面張力
- これより表面張力の低い液体が、その固体表面を濡らす境界の値。
- ブロックせん断
- 基材に接着したブロックを横から押してせん断強さを測る試験(ISO 13445)。
- 重ね合わせせん断
- 2枚の板を重ねて貼り、引張りでせん断強さを測る試験(ISO 4587)。
- 破壊モード
- 凝集破壊、界面の接着破壊、被着体の破壊など、どこが壊れたか(ISO 10365)。
- 被着体の破壊
- 接着部ではなく、貼られた材料(ガラスなど)のほうが先に壊れること。
- 構造シーラントグレージング
- 建物のファサードで、ガラスをシリコーン接着剤で構造的に支える工法(TU Dresden の報告での記載)。
- オプティカルボンディング
- 画面とカバーガラスの間の空気層を、透明な樹脂で埋めて貼り合わせること。
14. 参考資料(一次情報)
- Henkel Corporation “Light Cure Adhesive Technology Guide”(10731/LT-2013、2013年9月)(PDF) — dm.henkel-dam.com
- Dymax “Guidelines for UV Curing Adhesives, Sealants, and Coatings”(Technical Bulletin TB092、2012年10月25日、© 2003–2022)(PDF) — dymax.com
- Dymax “Glass Bonding”(製品カテゴリーのページ) — dymax.com
- Dymax “New Adhesive Resists High Temperature and Moisture”(Ultra Light-Weld 431 のプレスリリース、日付の記載なし) — dymax.com
- Dymax “Ultra Light-Weld 4-20260-VLV Product Data Sheet”(DC327、Rev. C、2017年9月発行、2018年12月19日改訂)(PDF) — dymax.com
- Dymax “425 Product Data Sheet”(Multi-Purpose, Light-Curable Optical Adhesive、2024年5月3日改訂)(PDF) — dymax.com
- Henkel “Technical Data Sheet LOCTITE® AA 3492™”(2014年11月)(PDF) — datasheets.tdx.henkel.com
- Henkel “Technical Data Sheet LOCTITE® AA 3311™”(2026年4月)(PDF) — datasheets.tdx.henkel.com
- DELO Industrial Adhesives “DELO PHOTOBOND”(製品ページ) — delo-adhesives.com
- DELO Industrial Adhesives “Curing Process for adhesives”(Adhesive Know-how) — delo-adhesives.com
- SCHOTT “B 270®” 技術詳細(Technical details of B 270®) — schott.com
- SCHOTT “BOROFLOAT®” 技術詳細(Technical details) — schott.com
- SCHOTT “BOROFLOAT® 33 – Technical Data”(データシート。Edmund Optics が配布しているPDF) — edmundoptics.com
- Gelest, Inc.(Arkles ら) “Silane Coupling Agents: Connecting Across Boundaries”(第3版、2014年)(PDF) — gelest.com
- Dalle Vacche, Forzano, Vitale, Corrado, Bongiovanni Glass lap joints with UV-cured adhesives: Use of a perfluoropolyether methacrylic resin in the presence of an acrylic silane coupling agent, Int. J. Adhes. Adhes. 92, 16–22 (2019)(要旨のみ確認) — doi.org/10.1016/j.ijadhadh.2019.04.003
- Priola, Gozzelino, Ferrero Adhesion of UV-curable resins containing alkoxysilane monomers on glass surfaces, Int. J. Adhes. Adhes. 10, 77–80 (1990)(題名のみ確認) — doi.org/10.1016/0143-7496(90)90146-o
- Weller, Vogt, Zastrau(TU Dresden) Glass-Metal-Joints bonded with UV and Light Curing Acrylates, Books of Abstracts, Deutscher Verband für Materialforschung und -prüfung, p. 243 (2010)(要旨。査読なし) — fis.tu-dresden.de
- ISO ISO 4587:2003 Adhesives — Determination of tensile lap-shear strength of rigid-to-rigid bonded assemblies — iso.org
- ISO ISO 13445:2003 Adhesives — Determination of shear strength of adhesive bonds between rigid substrates by the block-shear method — iso.org
- ISO ISO 10365:2022 Adhesives — Designation of main failure patterns — iso.org
- ISO ISO 9142:2003 Adhesives — Guide to the selection of standard laboratory ageing conditions for testing bonded joints — iso.org
- Dymax “UV Display Bonding Adhesives Provide Fast, Clear, Bubble-Free, Optically Clear Bonds”(アプリケーションブレチン、日付の記載なし。販売店ellsworth.comが配布しているPDF) — ellsworth.com
15. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 接着が成功するには片方の基材が適切な光を通す必要があること。大半の透明ガラスは UV を通すが、Flint F ガラス(D.E.D.F. 5901)と PVB 合わせ安全ガラスは 365 nm をすべて遮ること。UV 透過ポリカーボネートは 365 nm を約70%、UV 吸収ポリカーボネートは約3%通すこと。UV を遮る基材には可視光開始剤の製品が使え、着色基材越しでも硬化できる場合があること。波長区分(UVC 200〜280 nm、UVB 280〜315 nm、UVA 315〜400 nm)。表面硬化に 254 nm が向くこと | Henkel Light Cure Adhesive Technology Guide(2013年9月)[参考資料 1]https://dm.henkel-dam.com/is/content/henkel/lt-2730-brochure-light-cure-adhesive-technology-guide | 事実 |
| 少なくとも片方の面が UV を通す接着で、片側の面に滴またはビードを塗り、2面を合わせて広げ、2000-EC フラッドランプ(公称強度 20〜60 mW/cm²)で5〜10秒硬化する手順。すべての Light Weld 樹脂は完全に UV に露出される必要があること。基材の間(ガラス)の硬化時間が1〜4秒、面の上(空気に触れる)が40〜240秒の範囲であること | Dymax TB092(2012年10月25日)[参考資料 2]https://dymax.com/get-resource-file/7544/file/tb092_guidelines_for_uv_curing_ab.pdf | 事実 |
| Dymax のガラス接着剤が軟質ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛クリスタル、鋼、めっき金属、熱硬化性プラスチックに接着し、ガラスどうし・ガラスと金属の組み立てに使われ、環境に強い接着で熱サイクル時の性能が良好であること。LED または UV/可視光で硬化し、UV を遮るガラスや着色ガラスには活性剤または熱で硬化する品種があること。ステムウェア、ヘッドランプ用ガラス、噴水・家具、アート・建築・防弾ガラス、クリスタル製の置物・トロフィー、ガラスと金属ブラケットの用途 | Dymax ガラス接着のページ[参考資料 3]https://dymax.com/products/formulations/light-curable-materials/bonding/glass-bonding | 事実 |
| 431 がガラスどうし・ガラスと金属の接着用で、高温・高湿に耐え、低収縮で、家具、容器ガラス、照明・家電のサブアセンブリに適すること | Dymax 431 のプレスリリース(日付の記載なし)[参考資料 4]https://dymax.com/resources/news-and-media/press-releases/industrial/new-adhesive-resists-high-temperature-and-moisture | 事実 |
| 4-20260-VLV:アクリルウレタン、無色、屈折率 1.51(20 ℃、ASTM D542)、CTE α1 66・α2 212 µm/m/℃(DSTM 610)、Tg 83 ℃、無色・着色ガラスに使え、可視光で硬化すれば UV を遮るガラスにも使えること。グラスウェア・ステムウェア・ガラスケース・ガラスとレンガ・大理石の接着。貼り合わせる面の清浄、遮光性の吐出部品、硬化後に冷ましてから試験すること。メーカー公称の値で仕様ではないこと | Dymax 4-20260-VLV データシート(Rev. C、2017年9月発行、2018年12月19日改訂)[参考資料 5]https://dymax.com/content/download/7218/86249?version=1 | 事実 |
| 425:アクリルウレタン、屈折率 1.50(20 ℃)、ガラスに水のように無色の接着を作り、食洗機に耐えること、並外れた耐湿性が必要な用途では評価が必要であること | Dymax 425 データシート(2024年5月3日改訂)[参考資料 6]https://dymax.com/content/download/6890/85265?version=2 | 事実 |
| AA 3492:変性アクリレート、未硬化の屈折率 1.48、365 nm の UV で硬化、ガラスどうし・ガラスと他の材料の接着。固定時間(6 mW/cm² で5〜20秒、30 mW/cm² で4秒、100 mW/cm² で1秒、365 nm、ガラス顕微鏡スライド)、完全硬化は固定時間の約6倍。接着では結合面で最低40 mW/cm²、露光時間は固定時間の5〜6倍。ガラスどうしの重ね合わせせん断(ISO 4587)4.1 N/mm²、ブロックせん断(ISO 13445):鋼 8.3、アルミニウム 4.1、ステンレス 2.6、G-10 3.4、PVC 2.8、ABS 1、ポリカーボネート 1.2、アクリル 1 N/mm²、135°はく離 8.8 N/mm、ねじりせん断(ASTM D3658)47.5 N·m 以上。49 ℃・結露湿度2週・4週後と食洗機25サイクル後、121 ℃・149 ℃の熱老化後の強さの残り(表の%)。2014年11月版 | Henkel LOCTITE AA 3492 データシート(2014年11月)[参考資料 7]https://datasheets.tdx.henkel.com/LOCTITE-AA-3492-en_GL.pdf | 事実 |
| AA 3311:アクリルウレタン、PVC とポリカーボネートの接着が主用途でガラスにも優れた接着を示すこと、硬化物の屈折率 1.5、ガラススライドの固定時間(405 nm で 514 mW/cm² のとき5秒、365 nm で 100 mW/cm² のとき5秒、ブラックライト 365 nm で 6 mW/cm² のとき15秒)、ポリカーボネートの重ね合わせせん断 5.2 N/mm²(被着体の破壊)。2026年4月版 | Henkel LOCTITE AA 3311 データシート(2026年4月)[参考資料 8]https://datasheets.tdx.henkel.com/LOCTITE-AA-3311-en_GL.pdf | 事実 |
| PHOTOBOND がアクリレート系の光硬化接着剤であること。GB がガラス接着(ガラスどうし、異種ガラス)で、光学的に透明、耐 UV・耐候性、応力を均すこと。OC がディスプレイ一体化・カバーガラス接着などに使われること | DELO PHOTOBOND 製品ページ[参考資料 9]https://www.delo-adhesives.com/products/adhesives/detail/delo-photobond/ | 事実 |
| 光硬化に 365・400・460 nm の LED を使うこと。少なくとも片方の部品が透光性であること。事前活性化、光と加熱(+60 ℃から)または湿気の二重硬化 | DELO 硬化プロセスのページ[参考資料 10]https://www.delo-adhesives.com/academy/adhesive-know-how/curing-process | 事実 |
| B 270 が高透過のスーパーホワイト改良ソーダ石灰ガラスであること。屈折率 nd 1.5230、CTE 9.4 × 10⁻⁶ K⁻¹(20〜300 ℃、静的)。厚さ2.0 mm の透過率が254 nm で0.1%未満、380 nm で90.8%、λS(τ = 0.05)293 nm、λc(τ = 0.46)310 nm、λP(τ = 0.85)338 nm、τUVA 84%、τUVB 19%、非保証の代表値 | SCHOTT B 270 技術詳細[参考資料 11]https://www.schott.com/en-gb/products/b-270-p1000313/technical-details | 事実 |
| BOROFLOAT が紫外・近赤外で優れた透明性を持つこと。屈折率 nd 1.47140。CTE がソーダ石灰ガラスの約1/3であること | SCHOTT BOROFLOAT 技術詳細[参考資料 12]https://www.schott.com/en-gb/products/borofloat/technical-details | 事実 |
| BOROFLOAT 33:CTE 3.25 × 10⁻⁶ K⁻¹(20〜300 ℃、ISO 7991)、屈折率 1.471、ヤング率 64 kN/mm²、紫外域の透過率がグラフで示されること | SCHOTT BOROFLOAT 33 データシート[参考資料 13]https://www.edmundoptics.com/ViewDocument/schott-borofloat-technical-data-sheet-english.pdf | 事実 |
| シランカップリング剤の一般式と、X(加水分解性基)・R(有機官能基)の役割。トリアルコキシシランの4段階の反応(加水分解、縮合、水素結合、共有結合)。界面で通常ケイ素1個から1本の結合であること。結合形成の可逆性と、水を除く条件(120 ℃・30〜90分、または真空2〜6時間)。0.25%の溶液で3〜8分子層になりうること。二重脚シランが最大10⁵倍の加水分解抵抗を示しうること。アクリレート・メタクリレートが不飽和シランと共重合でき、メタクリル基がビニルシランより付加しやすいこと。選択表の「アクリレート、UV 硬化」。ナトリウム・リン酸を多く含むガラスが最も厄介で、表面イオンの除去が最初の段階であること。バルクガラスは表面に不純物が集まり、表面のナトリウム濃度がバルク分析より桁違いに高いことが多いこと。臨界表面張力(ソーダ石灰ガラスの乾いた状態47、湿った状態30.0) | Gelest, Silane Coupling Agents: Connecting Across Boundaries(第3版、2014年)[参考資料 14]https://www.gelest.com/wp-content/uploads/Goods-PDF-brochures-couplingagents.pdf | 事実 |
| PFPE 鎖を持つ UV 硬化メタクリル樹脂のガラスへの接着。アクリル官能基を持つシランを、ガラスのシラン化または添加剤として使い、重ね合わせ継手のせん断強さと湿潤環境・水への耐性を評価したこと。シランが接着強さを高め、ガラスのシラン化が添加剤より効率的であったこと。フッ素を含まないアクリル樹脂より接着強さが低く、PFPE 鎖の疎水性により耐水性は良好であったこと(要旨に基づく) | Dalle Vacche ら(2019年)[参考資料 15]https://doi.org/10.1016/j.ijadhadh.2019.04.003 | 事実 |
| Priola らの論文が、アルコキシシランのモノマーを含む UV 硬化樹脂のガラス表面への接着を扱う International Journal of Adhesion and Adhesives 10巻の論文であること(題名・書誌のみ確認) | Priola ら(1990年)[参考資料 16]https://doi.org/10.1016/0143-7496(90)90146-o | 事実 |
| ガラスのクランプ・ボルト接合に対し接着が荷重を均一に伝え局所的な応力集中を減らす機会を与えること。UV・光硬化アクリレートが透明で無色、硬化時間が数分以内であること。建築当局が特定のファサード用途(構造シーラントグレージング)で広く認めているシリコーン接着剤との比較。ガラス–金属の試験で破壊は多くの場合、接着破壊であったこと。安全柵のガラス構造の有限要素解析で、接着部の厚さと長さが応力状態の均一さに大きく影響すること。2010年の要旨集で査読なし | Weller ら(TU Dresden、2010年)[参考資料 17]https://fis.tu-dresden.de/portal/en/publications/glassmetaljoints-bonded-with-uv-and-light-curing-acrylates(4d89b74b-6f79-4502-8d81-6b71dc6c968a).html | 事実 |
| ISO 4587:2003 が剛性体どうしの引張り重ね合わせせん断強さの試験法であること。ISO 13445:2003 がブロックせん断法によるせん断強さの試験法であること。ISO 10365:2022 が接着部の主な破壊パターンの呼び方を定めること。ISO 9142:2003 が接合部を試験する標準的な実験室での劣化条件の選択の手引きであること | ISO 4587[参考資料 18]https://www.iso.org/standard/34852.htmlISO 13445[参考資料 19]https://www.iso.org/standard/34853.htmlISO 10365[参考資料 20]https://www.iso.org/standard/80800.htmlISO 9142[参考資料 21]https://www.iso.org/standard/36282.html | 事実 |
| Dymax のディスプレイ接合用の資料:ガラスとガラス、ガラスとプラスチックを数秒で貼り合わせること、LCD・カバーガラス・タッチスクリーンの貼り合わせに使われること、空気の巻き込みが少ないこと、オンデマンド硬化で位置を直せること | Dymax ディスプレイ接合のブレチン(日付の記載なし)[参考資料 22]https://www.ellsworth.com/globalassets/literature-library/manufacturer/dymax/dymax-bulletin-uv-display-bonding-adhesives.pdf | 事実 |
| 結合面で 40 mW/cm² を得るのに必要な表面の放射照度(40 ÷ 透過率:基材なし 40、B 270 の UVA 84% で約48、UV 透過ポリカーボネート 70% で約57、UV 吸収ポリカーボネート 3% で約1,330 mW/cm²)。2枚続けて通した場合の UVA 約71%、UVB 約3.6%。AA 3492 の固定時間までの強度×時間(30〜120 mJ/cm²、120 mJ/cm²、100 mJ/cm²)と完全硬化までの線量の見積り(600〜720 mJ/cm²)。AA 3311 の強度×時間(約2.6 J/cm²、約0.5 J/cm²、約0.09 J/cm²)と約5.1倍。空気とガラスの界面反射率(B 270 約4.3%、BOROFLOAT 33 約3.6%)と2界面の損失(約8.4%、約7.1%)、ガラスと接着剤の組み合わせ別の反射率。接着剤とガラスの CTE の比(66 ÷ 9.4 ≒ 7.0、66 ÷ 3.25 ≒ 20)。強さの比(8.3 ÷ 1.0 ≒ 8倍) | 本稿の計算。反射率の式は R = ((n₁−n₂)÷(n₁+n₂))²(垂直入射、吸収と多重反射を無視)。透過率は UVA の帯域平均で 365 nm の値ではない。CTE は温度範囲・測定法がそろっていない値どうしの比。メーカー公称値からの計算で公表値ではなく、製品間の優劣を示すものではない | 本稿の計算 |
| ガラスの種類・厚さ・波長を確認するまでは「ガラスだから UV が通る」は仮説であるという整理。254 nm はガラス越しに接着層へ届かず 365 nm 前後以上の光に頼るという読み取り。熱膨張が小さいガラスほど接着層との差が大きいという読み取り。ソーダ石灰ガラスがナトリウムを含み、シランが効きにくい可能性があるという読み取り。湿った状態の臨界表面張力が下がることの読み取り。プラスチック側の界面が水で先に弱くなったという読み取り。ガラスと金属の熱膨張の差が熱老化で効くという推測。接着線の見えやすさを決めるのが気泡・厚みむら・フィレットの可能性が高いという読み取り。確認の順序(光、界面、耐久、破壊)の整理。被着体の破壊が接着剤の強さがポリカーボネート以上を意味するという読み取り | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない(データシートは、どの界面で壊れたかを示していない) | 解説 |
| 365 nm そのものの透過率、他のガラス・着色ガラス・Low-E・合わせ・強化ガラスの UV 透過率の公式な数値。DELO のデータシートの数値。AA 3492 の硬化後の屈折率・硬化条件・破壊モード。市販の1液 UV 接着剤のシラン系接着促進剤の有無。ガラス家具・ガラス製品の荷重・耐久の規格。建築でのガラスの UV 接着の認証・基準。接着線の見え方の定量 | 公開資料で確認できなかったため、本稿では記載していない(DELO のデータシートは専用ポータル経由で、本稿の調査では取得できなかった) | 解説 |
| 図1・図2・図4・図5が説明のための概念図であること。図3が本稿の計算を含む作図であること。ヒーロー画像と図6がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月3日/出典はメーカー(Dymax、Henkel、DELO、SCHOTT、Gelest)の公式資料・製品データシート、査読論文と学会要旨、規格団体のページに限定しています。 製品データシートの値はメーカー公称(代表値)で、仕様や保証ではありません。構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 365 nm そのものの透過率、他のガラスの紫外域の数値、DELO のデータシートの数値、AA 3492 の硬化後の屈折率と破壊モード、シラン系接着促進剤の有無、ガラス家具・建築での規格・認証、接着線の見え方の定量については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用です。図1・図2・図4・図5はベクター作図、図3は本稿の計算を含むベクター作図、ヒーロー画像と図6はAI生成イメージであり、いずれも実際の製品・装置・測定結果を示すものではありません。