COMPANY PROFILE / iPS細胞・再生医療
クリスパー・セラピューティクス
― ゲノム編集の「道具」を持つ会社が、編集で免疫から隠れるiPS細胞由来の膵島細胞に手を伸ばしている
CRISPR TherapeuticsはiPS細胞の会社ではなく、ゲノム編集の会社です。Vertexと組んで世界初のCRISPR承認治療「CASGEVY」を出し、損益の40%を分け合っています。この分野で注目したいのは、6か所を編集したiPS細胞から膵島細胞を作る「CTX213」(前臨床)です。デバイスに頼らず、細胞の側を編集して免疫から隠すという考え方で、同社の10-Kに明記されています。本稿では何に資金を投じ、誰と組み、何を目指しているかに絞ります。
- 30秒でわかるCRISPR Therapeuticsと、iPS細胞・再生医療での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- iPS細胞・再生医療の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- iPS細胞・再生医療にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はiPS細胞・再生医療で何を目指しているか
- iPS細胞・再生医療分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるクリスパー・セラピューティクスと、iPS細胞・再生医療での立ち位置
米国・ボストン(研究)研究の本拠は米国。製造拠点はマサチューセッツ州フレーミングハム
iPS細胞・細胞治療(従)iPS細胞は1型糖尿病向けの前臨床が1本
(体外と体内の両方)ほかに編集したiPS細胞由来の膵島細胞
(前臨床)編集したiPS細胞から作る膵島細胞。デバイスなしで投与
CRISPR Therapeuticsはゲノム編集そのものの会社で、CRISPR/Cas9の基本特許の一部を使う権利を持ち、Vertexと組んで世界初のCRISPR承認治療CASGEVYを出したという立ち位置です 事実。大手製薬のVertexが販売を担い、CRISPR Therapeuticsは損益の40%を分け合います。
iPS細胞との接点は、6か所の遺伝子を編集したiPS細胞から作る膵島細胞「CTX213」(前臨床)です 事実。会社は10-Kで「幹細胞由来の膵島細胞を使う各社の候補は、いずれも長期の免疫抑制が要る」と述べ、遺伝子編集で免疫から隠れる細胞を作ることで、そこを越えようとしています。ただし臨床試験はまだ始まっておらず、この分野の中核事業ではありません。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は CRISPR Therapeutics AG(Aktiengesellschaft=株式会社にあたるスイスの法人形態)。 「CRISPR」は技術の名前でもあり、社名の一部でもあるため、本稿では技術を「CRISPR/Cas9」、会社を「CRISPR Therapeutics」と書き分けます。 CASGEVYを販売するVertex Pharmaceuticalsは別の会社です(本シリーズに別記事があります)。
公式サイト:https://crisprtx.com/3. iPS細胞・再生医療の世界で、この会社はどこにいるか
| 治療の仕組み | CRISPR Therapeuticsの該当 | 状況 | 区分 |
|---|---|---|---|
| ゲノム編集(CRISPR/Cas9) | CASGEVY(患者自身の造血幹細胞を体外で編集) | 米国・EU・英国・カナダ・スイス・中東の一部で承認。米国は2歳以上 | 事実 |
| ゲノム編集(体内で直接編集) | CTX310(ANGPTL3)、CTX340、CTX460、CTX321。脂質ナノ粒子で肝臓へ届ける | CTX310は第1b相、CTX340・CTX460は第1相、CTX321は前臨床 | 事実 |
| 同種の細胞治療(ゲノム編集CAR-T) | zugo-cel(旧CTX112)。健康な提供者のT細胞を5か所編集 | 第1/2相。自己免疫疾患とB細胞性腫瘍。RMAT指定 | 事実 |
| iPS細胞由来の細胞 | CTX213(編集したiPS細胞由来の前駆膵島細胞) | 前臨床。前身のCTX211は第1相が2025年8月に終了 | 事実 |
| AAV・LNPなどの遺伝子導入 | LNP(脂質ナノ粒子)が体内編集の運び屋。AAVの記載は本分野の品目になし | LNPは臨床段階 | 事実 |
| 間葉系幹細胞・組織工学 | 記載なし(前身のCTX211は細胞を入れるデバイスを使った) | 確認できず | 未確定 |
本シリーズの技術解説「ゲノム編集」「オフターゲット効果と安全性評価」「脂質ナノ粒子」「MHCとユニバーサルドナー」 「血液疾患のゲノム編集治療」「糖尿病の細胞治療」が、表の各行の背景です。
4. 会社の規模
通貨は米ドル、会計年度は12月期です。CRISPR Therapeuticsは売上のほとんどない開発企業なので、費用と現金の規模で見ます 事実。
| 指標(US$百万) | 2024年 | 2025年 | 2026年上半期 |
|---|---|---|---|
| 総収益 | 37.3 | 3.5 | 11.6 |
| 研究開発費 | 310.2 | 284.8 | 135.7 |
| 仕掛研究開発費(買収・導入) | ― | 96.3 | 2.5 |
| 共同開発費用(純額) | 120.7 | 213.5 | 86.2 |
| 純損失 | 366.3 | 581.6 | 214.1 |
| 現金・有価証券(期末) | 1,903.8 | 1,975.8 | 2,364.4 |
「共同開発費用(純額)」は、Vertexとの契約でCASGEVYの費用と収益を分けた結果、CRISPR Therapeuticsが負担する分です。 2025年は前年より増えましたが、これは2024年まで認められていた費用の繰り延べができなくなったためと10-Kは説明しています。 2026年上半期は、CASGEVYの売上の自社取り分が増えたことで減りました 事実。
従業員数は、本稿が使った10-Kの本文では確認できませんでした 未確定/将来。2025年の研究開発費が減った理由として「人員の減少による人件費の減少US$25.8百万」が挙げられており、規模を絞っていることは読み取れます 事実。総収益の大きさは事業の力を示しておらず、現金の厚みが開発を支えている会社です。
5. iPS細胞・再生医療にかけているリソース
iPS細胞・再生医療に限った数字は開示されていません。会社全体の資源の中で、この分野に関係する部分を示します。
| リソース | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(全社) | 従業員数は10-Kの本文で確認できず。2025年は人員減で人件費が減少 | 確認できず/事実 |
| 人(iPS細胞・再生医療) | CTX213の担当人員は非開示 | 確認できず |
| 拠点 | ツーク(本社)。米ボストンに約263,500平方フィートの研究棟(2034年10月まで賃借)。マサチューセッツ州フレーミングハムに約50,249平方フィートの細胞治療の製造棟(2036年3月まで賃借)。サンフランシスコにも研究室 | 事実 |
| 金(研究開発費) | 全社でUS$284.8百万(2025年)。再生医療分の内訳は非開示 | 事実/確認できず |
| 金(現金) | US$2,364.4百万(2026年6月30日)。会社は24か月以上の営業費用・設備投資を賄えると説明 | 事実 |
| 外部への出資・買収 | Sirius Therapeuticsと提携(2025年5月、仕掛研究開発費US$96.3百万)。siRNAの分野で、再生医療とは別 | 事実 |
| 導入(ライセンス) | Dr. Charpentierから基本特許を独占ライセンス(2014年)。カリフォルニア大学とウィーン大学も権利を共有 | 事実 |
| 導出(ライセンス) | Vertexへ:2015年にUS$75.0百万の前払金とUS$30.0百万の出資、2019年にオプション行使でUS$30.0百万、2021年にUS$900百万の前払金、2024年1〜3月にUS$200.0百万のマイルストン。1型糖尿病向けの非独占ライセンス(2023年)で前払金US$100.0百万+マイルストン計US$105.0百万を受領、追加でUS$125.0百万まで | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | 特許の権利を共有する大学(上記)。HIV向け遺伝子編集の補助金2件を10-Kに記載するが、出所と金額は本稿では確認できず。iPS細胞に関する大学との共同研究は記載なし | 事実/確認できず |
この表で目立つのは、CRISPR Therapeuticsが「払う側」ではなく「受け取る側」にいることです。 表に書いたVertexからの受領額(2015年US$75.0百万、2019年US$30.0百万、2021年US$900.0百万、2024年US$200.0百万、1型糖尿病ライセンスの前払金とマイルストンUS$100.0百万+US$105.0百万)を単純に足すと、US$1,410.0百万です 本稿の計算(出資US$30.0百万は含まない。本稿の足し算)。これが現金の厚みの土台になっています。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2014年4月 | Dr. Charpentierと、CRISPR/Cas9の基本特許を使う独占ライセンス契約を結ぶ | 編集の道具の権利を押さえた |
| 2015年 | Vertexと共同研究契約(前払金US$75.0百万、出資US$30.0百万) | 資金と開発力を持つ提携先を得た |
| 2017年12月 | Vertexと共同開発契約。鎌状赤血球症とβサラセミアの治療を共同で開発・販売へ | CASGEVYの母体になった契約 |
| 2018年末 | 最初の臨床試験を開始 | 臨床段階に入った |
| 2021年 | Vertexとの契約を改定(前払金US$900百万、CASGEVYの損益はCRISPR 40%:Vertex 60%に)。ViaCyteと糖尿病の共同開発契約 | 開発・製造・販売の主導をVertexに渡した |
| 2022年 | VertexがViaCyteを買収 | 糖尿病の提携先が変わった |
| 2023年1月 | VCTX211(のちのCTX211にあたると本稿は見る)の第1相試験が始まる(ClinicalTrials.gov上の開始日2023年1月20日) | 編集した幹細胞由来の膵島細胞を、デバイスに入れて移植する試み |
| 2023年3月 | Vertexへ糖尿病向けの非独占ライセンス(前払金US$100.0百万)。ViaCyteとの契約を修正 | 編集の権利をVertexにも許諾 |
| 2023年12月8日 | FDAが鎌状赤血球症でCASGEVYを承認(CRISPR/Cas9を使う初のFDA承認治療)。2024年1〜3月にVertexからUS$200.0百万のマイルストンを受領 | 承認が収益に直結した |
| 2024年2月 | ViaCyteが共同開発契約から離脱。進行中の資産はCRISPR Therapeuticsが完全に保有(ViaCyteに将来売上のロイヤルティ) | iPS細胞由来の膵島細胞を自社で進める下地になった |
| 2025年5月 | Sirius Therapeuticsと提携(siRNA。仕掛研究開発費US$96.3百万を計上) | 再生医療とは別の領域に資金を振り向けた |
| 2025年8月 | VCTX211の第1相試験が終了(ClinicalTrials.gov上。登録5人) | デバイス方式の試験は幕を閉じた |
| 2025年11月 | CTX310(体内の肝臓編集)の第1相結果がNEJMに掲載 | 体内編集の人でのデータが出た |
| 2025年10〜12月 | ToolGenが、CASGEVYが自社特許を侵害すると主張して提訴 | 特許をめぐる争いが続く |
| 2026年7月 | FDAがCASGEVYを2歳以上へ拡大承認 | 対象が年齢で広がった |
10-Kには、前身のCTX211の第1相試験で、移植から12か月後も持続的なC-ペプチド産生と、移植した膵島細胞の組織での生存が確認されたと書かれています 事実。同時に、細胞を入れたデバイスの線維化と免疫細胞の浸潤があったとも書かれています。この点が、次の「デバイスなし」の方針につながります。
7. 今後の計画
審査FDAは2026年7月に2歳以上へ拡大承認済み
(第2相に進む)2025年12月までの良好なデータが根拠
表のうち、iPS細胞・再生医療に直結するのはCTX213と、Vertexからの追加マイルストンの2つだけです。他は、ゲノム編集の技術基盤を広げる計画です 事実。計画どおりに進む保証はなく、見通しは 未確定/将来です。
次はいずれも、本稿が使った資料に記載がありません 未確定/将来。
CTX213の臨床試験の開始時期/対象人数/製造委託先/Vertexへの追加マイルストンがいつ発生するか/CTX213に使うiPS細胞株の提供元。報道にある時期や金額は一次資料で確認できないため、本稿では採用しません。
8. この会社はiPS細胞・再生医療で何を目指しているか
ここは会社が直接述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 細胞治療の核は「免疫から隠れる編集」 | 10-Kに「幹細胞由来の膵島細胞は、いずれも慢性の免疫抑制が要る」「編集で免疫から守る」と明記。CTX213はB2MとTXNIPの欠失と、PD-L1・HLA-E・MANF・A20の導入の6か所を編集 | 事実 |
| 膵島細胞は、デバイスに入れる方式からデバイスなしの方式へ舵を切った | CTX211のデバイスで線維化と免疫細胞の浸潤があったと記載し、次の候補CTX213は「デバイスなし」と明記。理由は明言されていない | 推測 |
| iPS細胞の1型糖尿病は、Vertexと並走させるつもり | Vertexへの許諾は非独占で、CRISPR Therapeuticsは自社のCTX213を持ち続けている。Vertexの進展でマイルストンも入る | 推測 |
| 体内編集に軸足を移している | 体内編集は複数が臨床段階(CTX310は第1b相、CTX340・CTX460は第1相)。再生医療はまだ前臨床で、2025年は研究開発費も減らしている | 推測 |
| CASGEVYの費用負担は重い | 2025年から費用の繰り延べができなくなり、共同開発費用(純額)がUS$120.7百万からUS$213.5百万へ増えた。会社は費用が自社取り分の収益を上回る状態が当面続くと述べている | 事実 |
デバイスなしへの転換は、材料の面から見ても大きな意味を持つ、と本稿は読みます 推測。細胞を膜やデバイスに入れる方式は、免疫から物理的に隔てられる反面、10-Kが書くようにデバイスのまわりが線維化すると、酸素や栄養が届きにくくなります 事実。そこで細胞の側を編集して免疫に見つからないようにすれば、デバイスという「材料の問題」を細胞の設計という「遺伝子の問題」に置き換えられる――これがCTX213の発想だと読めます。一方で、編集を増やすほど安全性の評価項目も増えます。CTX213はまだ前臨床で、人での結果はありません 未確定/将来。
9. iPS細胞・再生医療分野の提携マッピング
この図で見てほしいのは、提携の中心がVertex 1社に偏っている点です。10-Kも「CASGEVYについてはVertexが大きな支配権を持つ」とリスクに書いています 事実。膵島細胞に関わる提携で、一次資料で確認できたのはVertexとViaCyteだけでした。
10. 提供している技術・製品・サービス
| 品目 | 仕組み | 対象 | 状況 |
|---|---|---|---|
| CASGEVY | 患者自身の造血幹細胞を体外でCRISPR/Cas9により編集(BCL11A遺伝子の赤血球特異的エンハンサー領域)。非ウイルス。Vertexが開発・製造・販売を主導 | 鎌状赤血球症、輸血依存性βサラセミア | 承認済み(米国は2歳以上) |
| CTX213 | 6か所の遺伝子を編集したiPS細胞から作る未成熟の膵島細胞。デバイスに入れず直接投与 | 1型糖尿病 | 前臨床(ラットで血糖の改善とC-ペプチド産生を確認と会社が記載) |
| CTX211(VCTX211) | 編集した幹細胞由来の膵島細胞を、細胞を入れるデバイスごと移植 | 1型糖尿病 | 第1相が2025年8月に終了 |
| zugo-cel(CTX112) | 健康な提供者のT細胞を5か所編集した同種CAR-T | 自己免疫疾患、B細胞性腫瘍 | 第1/2相。RMAT指定(FDA) |
| CTX310ほか | LNPにCas9のmRNAとガイドRNAを包み、点滴で肝臓の遺伝子を編集 | 高コレステロール血症など | 第1b相 |
| SyNTase | 小型のCas9と改変した酵素を組み合わせた、新しい遺伝子修正の方式 | ―(基盤技術) | 研究段階 |
試験結果(数値は論文または10-Kから。比較対照と評価時点つき)
| 試験 | 対象と方法 | 結果 | 評価時点・注意 |
|---|---|---|---|
| CTX211の第1相(10-Kの記述) | 1型糖尿病。細胞を入れるデバイスを移植 | 移植12か月後も持続的なC-ペプチド産生と、移植した膵島細胞の組織での生存 | デバイスの線維化と免疫細胞の浸潤あり。人数・個別の数値は10-Kに記載なし |
| CTX310の第1相(NEJM) | 高コレステロール血症などの成人。用量漸増。15人が単回投与(60日以上追跡) | ANGPTL3の血中濃度は、0.7 mg/kgで平均79.7%減、0.8 mg/kgで73.2%減(0.1・0.3 mg/kgでは減少せず、平均はわずかに増加) | 比較対照なし。1人が投与179日後に突然死、別の1人に椎間板ヘルニア。用量制限毒性はなし |
| CASGEVY 鎌状赤血球症(NEJM、Vertexとの共同) | 12〜35歳。単群・非盲検の第3相。44人が投与 | 評価できた30人のうち29人(97%)が12か月以上連続して重い血管閉塞発作なし | 追跡期間の中央値19.3か月。比較対照なし |
体内編集のCTX310は、脂質ナノ粒子(LNP)にCas9のmRNAとガイドRNAを包んで点滴する方式です 事実。この方式では、脂質の組成、粒子の大きさをそろえる混合プロセス、mRNAとガイドRNAの合成純度が品質を決めます。10-Kは「独自のLNP送達基盤を持つ」と述べており、材料と製造の知見が中核資産であることが分かります 事実。
iPS細胞のCTX213では、6か所を編集した細胞株を安定して増やせるかが鍵です。編集を重ねた細胞株の品質管理(意図しない切断がないか、増やしても性質が変わらないか)と、培地・足場・凍結保存液の再現性が量産の壁になります 推測。なお、前身のCTX211で問題になった細胞を入れるデバイスは、膜の素材と細胞周囲の線維化の相性が課題でした 事実。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| Vertexへの依存 | 10-Kは「CASGEVYについてVertexが大きな支配権を持つ」とリスクに記載。販売・製造の主導権は相手にある | 事実 |
| 費用が収益を上回る | CASGEVYの費用負担は当面、自社取り分の収益を上回ると会社が記載。2025年の純損失はUS$581.6百万 | 事実 |
| 特許 | 基本特許はDr. Charpentier、カリフォルニア大学、ウィーン大学の共有で、CRISPR Therapeuticsは単独で独占できる立場にない。CVC側とBroad側などの特許争い(抵触審査)が続く。2025年第4四半期にToolGenがCASGEVYをめぐって提訴 | 事実 |
| iPS細胞由来の膵島細胞が前臨床 | CTX213はまだ人に投与されておらず、時期も未公表。前身のデバイス方式(CTX211)は2025年8月に試験が終了 | 事実 |
| 体内編集の安全性 | CTX310の第1相で、1人が投与179日後に突然死(論文に記載)。体内で編集した結果は元に戻せない | 事実 |
| 資金の使い方 | 2026年6月末の現金US$2,364.4百万は厚いが、純損失は上半期だけでUS$214.1百万 | 事実 |
| 前処置の負担(CASGEVY) | CASGEVYの安全性は「自家幹細胞移植と骨髄破壊的前処置に一般に沿う」と会社が記載。前処置を軽くする研究は前臨床 | 事実 |
12. 用語集
- CRISPR/Cas9
- DNAの狙った場所を切る道具。ガイドRNAが場所を指定し、Cas9が切る。
- ガイドRNA(gRNA)
- 切る場所をCas9に教えるRNA。
- 体外(ex vivo)/体内(in vivo)編集
- 体外は細胞を取り出して編集してから戻す方式。体内は薬を点滴して体の中で直接編集する方式。
- LNP(脂質ナノ粒子)
- 核酸を包んで細胞に届ける、脂質でできた微小な粒子。
- SyNTase
- CRISPR Therapeuticsが開発中の新しい遺伝子修正の方式。
- 同種CAR-T
- 健康な提供者のT細胞にがん等を狙う受容体を持たせ、多くの患者に使う細胞治療。
- 低免疫原性(ハイポイミューン)
- 免疫に見つかりにくいよう編集した細胞。移植後の拒絶を避ける狙い。
- C-ペプチド
- インスリンと一緒に作られる物質。移植した膵島細胞が働いているかの目安に使う。
- 前臨床
- 人に投与する前の段階の研究。動物や細胞での実験。
- マイルストン
- 開発が一定の段階に達したときに、提携先から支払われる一時金。
AI生成による概念図13. 出典
- CRISPR Therapeutics Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年2月12日)。事業の概要、Vertexとの契約条件、再生医療(CTX213・CTX211)、特許、拠点、財務。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1674416/000119312526048957/crsp-20251231.htm
- CRISPR Therapeutics Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月3日)。2026年上半期の財務、CASGEVYの2歳以上への拡大承認、各プログラムの現況。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1674416/000119312526330672/crsp-20260630.htm
- Vertex Pharmaceuticals Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出)。CASGEVYの損益配分(Vertex 60%:CRISPR 40%)、CRISPRとの1型糖尿病ライセンスの支払い額の確認用。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/875320/000087532026000056/vrtx-20251231.htm
- Vertex Pharmaceuticals Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月4日)。CASGEVYの5〜11歳に関する英国・サウジアラビアへの申請。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/875320/000087532026000259/vrtx-20260630.htm
- 米国FDA(CBER) CASGEVY(exagamglogene autotemcel)の承認製品ページ。2023年12月8日などの承認通知を掲載。 https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/casgevy
- 米国FDA FDA News Release「FDA Approves First Gene Therapies to Treat Patients with Sickle Cell Disease」(2023年12月8日)。CASGEVYはCRISPR/Cas9を使う初のFDA承認治療。 https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-gene-therapies-treat-patients-sickle-cell-disease
- ClinicalTrials.gov NCT05565248「VCTX211併用製品を1型糖尿病で評価する第1相試験」(スポンサーはCRISPR Therapeutics AG)。開始2023年1月20日、終了2025年8月8日、登録5人。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT05565248
- N Engl J Med(PubMed収載) Laffin LJ ほか「Phase 1 Trial of CRISPR-Cas9 Gene Editing Targeting ANGPTL3」N Engl J Med 2025;393(2025年11月27日号)。CTX310の第1相。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41211945/
- N Engl J Med(PubMed収載) Frangoul H ほか「Exagamglogene Autotemcel for Severe Sickle Cell Disease」N Engl J Med 2024;390:1649-1662。12〜35歳の第3相単群試験。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38661449/
- CRISPR Therapeutics 公式サイト(会社概要・ロゴの確認用)。 https://crisprtx.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月1日/Troy Technical
本稿の数値はすべて、CRISPR TherapeuticsとVertexが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類、米国FDAの公開情報、ClinicalTrials.gov、査読論文に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は企業の取り組みを整理したもので、特定の治療を勧めるものでも、医療上の助言でもありません。