🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

MHCとユニバーサルドナー|iPS細胞・再生医療 技術解説

技術・機関・企業解説の一覧へ戻る

TECHNOLOGY EXPLAINER

MHCとユニバーサルドナー
― 「誰にでも使える細胞」は、免疫の目印をどう扱うか

他人の細胞を移植すると、免疫が細胞表面の目印(HLA、動物ではMHC)の違いを見分けて拒絶します。 この壁に対して、型を「合わせる」方法と、目印を「消す・隠す」方法の、正反対の設計が進んでいます。 前者は京都大学iPS細胞研究財団の7名・27株で日本人の約40%に適合するストックが、10以上の臨床試験で使われました。 後者は同財団がHLAを編集した臨床用の株を提供し、海外では免疫抑制なしの移植が1名で14か月追跡されています。 仕組み、数字、材料・製造の接点を、一次情報で整理します。

構成:京都大学iPS細胞研究財団の発表、Med・Cell Stem Cell・Nature Biotechnology・NEJM など査読論文、総説、企業の発表、ClinicalTrials.gov を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

HLA型が合わない移植細胞にT細胞が反応する概念図
① HLAが合わない

移植した細胞のHLAを免疫が異物と認識し、拒絶の原因になります。

HLA型の合うiPS細胞株を選び、免疫反応を抑える概念図
② HLAの型を合わせる

患者に合う型のiPS細胞株を選び、拒絶のリスクを下げます。

HLAの一部を編集し、NK細胞に関わる目印を残す設計の概念図
③ HLAを編集する

HLA-A・Bなどを減らし、C・Eなどを残してT細胞とNK細胞の両方に配慮します。

概念図(AI生成イメージ)。色や細胞表面の形は説明用で、実際のHLA分子・免疫反応を忠実に示すものではありません。②③の方法でも拒絶を必ず防げるわけではありません。
この記事の構成
  1. HLA(MHC)とは何か(3行でつかむ)
  2. 拒絶の仕組み ― T細胞の3つの経路と、NK細胞
  3. 方法①:HLAを「合わせる」― ホモ接合体ドナーとiPS細胞ストック
  4. 素材技術者の視点①:ストックは、規制文書つきの「原料」
  5. 方法②:HLAを「編集する」― ユニバーサルドナー細胞
  6. 素材技術者の視点②:編集は、製造工程の一部になる
  7. 「既製(off-the-shelf)」の中身 ― 自家と同種との整理
  8. 節目の整理と、未確定事項
  9. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料・論文・総説・財団や企業の発表に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=開発中・計画・結果が出ていない事項など、実績が確認できていない事項
このほか、材料・工程の観点からの読み取りは「解説」として区別しています。

医療についてのお断り

本記事は製造・材料・制度の観点からの技術解説です。特定の治療を勧めるものでも、製品や治療の効き目を比べて優劣をつけるものでもなく、医療上の助言でもありません。 臨床の数値は、試験名・対象・評価時点とあわせて、論文と公的な資料に記載されたものだけを引用しています。

1. HLA(MHC)とは何か(3行でつかむ)

HLAは、「細胞の表面に出ている、自分か他人かを見分けるための目印」です。MHC(主要組織適合遺伝子複合体)の産物で、ヒトのMHCをHLA(ヒト白血球抗原)と呼びます。

  • 何か:京都大学iPS細胞研究財団は、HLAを「ヒトの細胞で自己かそうではないかを見分ける目印となるタンパク質の総称」と説明し、白血球以外にも様々な細胞に存在し、組み合わせは数万通りにもなるとしています。大きくクラスIとクラスIIに分かれ、特にクラスIのHLA-A、HLA-B、HLA-Cは、細胞を移植したときの拒絶反応に大きく影響するとされています事実
  • 誰が見るか:総説は、クラスIとペプチドの複合体は多くの有核細胞に出ていてCD8陽性の細胞傷害性T細胞が、クラスIIは主に抗原提示細胞に出ていてCD4陽性のヘルパーT細胞が認識すると整理し、拒絶は主にこの多型の大きなMHCへのT細胞反応によると述べています事実
  • 見えないと危ない:自己のクラスIが見えない細胞は、NK細胞が攻撃します(ミッシングセルフ仮説)事実。つまり目印を消せば済むわけではありません
この記事でいちばん大事な一行

「誰にでも使える細胞」には、正反対の2つの作り方があります。 ひとつは、型を揃えたドナー由来の株を何種類か用意し、患者に合うものを選ぶ方法です。 もうひとつは、遺伝子を編集して目印そのものを消す、または隠す方法です。 前者は10以上の臨床試験で使われた実績がありますが、日本で承認された製品(アムシェプリ)でも免疫抑制剤(タクロリムス)が使われています事実[参考資料27]。 後者は免疫抑制を外せる可能性がありますが、臨床で免疫抑制なしの移植が報告されているのは1名です事実(本記事の調査範囲)。

2. 拒絶の仕組み ― T細胞の3つの経路と、NK細胞

HLA(MHC)を「見る」3種類の免疫細胞(関係を示すブロック図) 細胞の表面に出ているHLAの有無と型が、どの免疫細胞が反応するかを決めます。 ① クラスI:ほぼすべての有核細胞 ② クラスII:主に抗原提示細胞 ③ クラスIがない/合わない細胞 細胞 HLA-I キラー T細胞 HLA-Iとペプチドを CD8 T 細胞が見て、 標的の細胞を直接攻撃する (A、B、C などの型) 抗原 提示細胞 HLA-II ヘルパー T細胞 HLA-IIを CD4 T 細胞が見て、 ほかの免疫細胞の反応を助ける (DR、DQ、DP などの型) 細胞 HLA-I なし NK細胞 自己のHLA-Iが見えない細胞を NK細胞が攻撃する(ミッシングセルフ) → HLA-Iを消すだけでは足りない ※ クラスIとクラスIIの役割、NK細胞のミッシングセルフ仮説は Petrus-Reurer らの総説[参考資料1]によります。 ※ 型の名称と「組み合わせは数万通り」は京都大学iPS細胞研究財団の説明[参考資料6]によります。 ※ 細胞の大きさ・分子の数は表していません。反応の全体像を簡略化した、本記事の整理です。
図1 概念図(ベクター作図)。役割は Petrus-Reurer ら(Commun Biol 2021)[参考資料1]、型の説明は京都大学iPS細胞研究財団[参考資料6]によります。免疫反応の全体像を3つに絞った本記事の簡略図で、分子の数や細胞の大きさを示すものではありません。

T細胞が他人のMHCを認識する経路には、少なくとも2つあります。Siu らの総説によると、直接経路は、ドナー細胞の表面にある完全な形の他人のMHCをT細胞が直接見る経路で、 間接経路は、ドナーのタンパク質が分解され、レシピエント自身のMHCに載ったペプチドとして見せられる経路です。 さらに、ドナーのMHCがレシピエントの樹状細胞に移って完全な形のまま提示される半直接経路も示されています事実。

従来は、直接経路の反応は強いが短期で急性拒絶に関わり、間接経路の反応は長く続いて慢性拒絶に関わる、と考えられてきました。 ただし同総説は、この見方は意外に乏しい実験的根拠にもとづくもので、半直接経路の発見により単純化しすぎの可能性があると述べています事実。

T細胞が他人のMHCを認識する3つの経路 総説の定義にもとづく簡略図です。 直接経路 ドナー細胞の表面にある、完全な形の他人のMHCを、 T細胞が直接見る 強いが短期。急性拒絶に関わると考えられてきた 間接経路 ドナーのタンパク質が分解され、レシピエント自身の MHCに載ったペプチドとして、T細胞に見せられる 長く続き、慢性拒絶に関わると考えられてきた 半直接経路 ドナーのMHCがレシピエントの樹状細胞に移り、 完全な形のまま提示される 従来の見方が単純すぎる可能性を示す ※ 3つの定義と、直接は強く短期・間接は長く続くという「従来の見方」は Siu らの総説[参考資料2]の要旨によります。 ※ 総説は、この従来の見方の実験的な根拠は意外に乏しく、単純化しすぎの可能性があるとも述べています。
図2 概念図(ベクター作図)。定義は Siu ら(Front Immunol 2018)[参考資料2]の要旨によります。3つに整理した図で、細胞や分子の大きさ・数・配置は表していません。「従来の見方」とされる部分は、総説自身が根拠は乏しいと述べています。

抗体と「感作」

拒絶に関わるのはT細胞とNK細胞だけではありません。LANTIDRA の添付文書は、レシピエントの血清とドナーのリンパ球のT細胞・B細胞のクロスマッチが陽性の患者は、移植片の拒絶のリスクが高い可能性があること、 また製品の投与によってパネル反応性抗体(PRA)が上がり、のちの腎移植の候補になるうえで不利になりうることを記載しています事実。 細胞を他人から作ると、その後の別の移植にも影響しうる、という意味です(本記事による解説)。

脳は「免疫が弱い」とされるが…

Morizane らは、MHCホモ接合体のカニクイザルのiPS細胞から作ったドーパミン神経を、脳に同種移植する実験を行いました。 脳は免疫応答が弱い組織と考えられていますが、MHCが不適合の移植では神経炎症がPETで捉えられ、MHCを合わせると、ミクログリアやリンパ球の集まりが減り、 移植したドーパミン神経(TH陽性)の生存が増えたと報告しています。免疫抑制剤タクロリムスの効果も同じ実験系で確認されました事実。

3. 方法①:HLAを「合わせる」― ホモ接合体ドナーとiPS細胞ストック

HLAの遺伝子は父母から1組ずつ受け継ぎます。ある座の型が父母で同じ「ホモ接合体」のドナーなら、その人の細胞に出る型は1種類だけです。 その型を一組もつ患者には、ドナー細胞の目印はすべて「見慣れたもの」になります(本記事による解説)。 財団は、こうしたドナーから作ったiPS細胞を「多くの日本人にとって免疫拒絶反応が起こりにくいHLA型を持つドナー」由来のストックとして、大学・企業に提供しています事実。

ストックの実績

項目内容
事業の開始2013年に再生医療実現拠点ネットワークプログラムの一環として京都大学iPS細胞研究所が開始。2020年4月に財団へ継承。2015年に提供開始
構成(Medの論文)HLA-A、-B、-DRの3座をホモ接合体でもつ7名のドナーの末梢血またはさい帯血から27株を選び、日本人の頻度上位4位までのHLA型をカバー。日本人の約40%に適合
使用実績10以上の臨床試験で使用。論文時点で移植細胞を原因とする有害事象は報告されていない。60以上の国内外の大学・企業に提供
ドナー募集約90名が同意し、日本国内の上位20位のHLA型、計37名のホモ接合体ドナーから血液の提供を受けた。日本人の約60%をカバーする数。2025年2月にリクルート終了
次の世代HLA型をゲノム編集した「HLAゲノム編集iPS細胞ストック」、患者本人の細胞から作る「マイiPS細胞」の研究開発を進めている

すべて事実(財団の発表[参考資料3・4]、Yoshida ら Med 2023[参考資料7])。

財団のページには、提供株の元になった上位4つのHLA型(A-B-DRB1)の頻度が示されています事実。

順位ABDRB1頻度
1*24:02*52:01*15:028.437%
2*33:03*44:03*13:024.448%
3*24:02*07:02*01:013.843%
4*24:02*54:01*04:052.722%

すべて事実(財団の「HLAホモiPS細胞ストック」ページ[参考資料5])。

本稿の計算:頻度から「適合する人の割合」を見積もる

上の頻度から、簡易に確かめます本稿の計算。

  • 前提:ホモ接合体ドナーの細胞は、受け手が少なくとも1本その型をもてば、型の上では「適合」とする。型は集団の中でランダムに組み合わさる(ハーディ・ワインベルク平衡)とする
  • 1位の型:1 − (1 − 0.08437)² = 約16.2%
  • 上位4位の合計:0.08437 + 0.04448 + 0.03843 + 0.02722 = 0.1945。1 − (1 − 0.1945)² = 約35.1%

前提と限界:1位の型の簡易値16.2%は、Nature 論文が示す「日本人の17%に適合」(6座のハプロタイプ)に近い値です事実。 一方、上位4位の簡易値35.1%は、公表されている「約40%」と一致しません。差の理由(座の定義、連鎖の扱い、適合の基準など)は、本稿が参照した資料からは確認できませんでした。 この計算は、考え方の確認であり、財団の適合率の根拠を再現するものではありません。

ドナーを増やすと、カバー率はどう増えるか(実績とモデル推定) 京都大学iPS細胞研究財団の実績と、報告されたモデル推定の比較です。 0% 25% 50% 75% 100% 0 50 100 150 提供されたHLAホモ接合体ドナーの数 7名・27株 → 約40% 37名 → 約60% 約140株 → 約90%(モデル推定) 本稿の計算:3座の頻度から求めた簡易値 1位の型 8.437% → 1−(1−0.08437)² = 約16.2% 上位4型の合計 19.45% → 1−(1−0.1945)² = 約35.1% ※ 7名・27株・約40%は Yoshida ら[参考資料7]、37名・約60%は財団の発表[参考資料4]、   約140株・約90%は Petrus-Reurer らの総説の記載[参考資料1]です。 ※ 頻度(A-B-DRB1)は財団ページの表[参考資料5]。簡易値は頻度を足し、受け手が少なくとも   1本その型をもつと仮定した計算で、公表の「約40%」とは一致しません(差の理由は確認できず)。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。実績は Yoshida ら[参考資料7]と財団の発表[参考資料4・5]、モデル推定は Petrus-Reurer らの総説[参考資料1]によります。16.2%・35.1%は本記事が3座の頻度から求めた簡易値で、公表値ではありません。ドナー数と株数は同じではなく、折れ線は点を結んだだけで、増え方の予測ではありません。

なぜ「140株」が必要なのか

Taylor らの2012年の論文は、既存のHLA型データをもつ150名のホモ接合体ボランティアから作るバンクが、英国人の93%に、免疫抑制を最小限にして適合しうるとモデル化しました事実[参考資料25]。 総説は、英国で150株、日本で140株で、それぞれ93%、90%の集団を十分に適合させうると推定されている、と紹介しています事実。 実際のストックは、37名で約60%(財団の発表)です。つまりカバー率は、後ろのほうほど少しずつしか上がらないことが読み取れます(本記事による解説。ドナー数と株数は同じではなく、直接の比較は厳密ではありません)。

「合わせても免疫抑制は残る」

例細胞とHLA免疫抑制の記載
パーキンソン病(Nature 2025)HLAホモ接合体のiPS細胞株(日本人の17%に適合)由来のドーパミン神経前駆細胞タクロリムス(12か月で半減、15か月で中止)
加齢黄斑変性(Sugita ら 2020)HLAホモ接合体のiPS細胞由来RPEを、HLAが適合する患者5名に移植全身の免疫抑制剤なしで局所ステロイド。1名で免疫反応が疑われ、局所ステロイドで対処
サルの脳移植(Morizane ら 2017)MHCホモ接合体のiPS細胞由来ドーパミン神経MHC適合で反応が減少。タクロリムスの効果も確認

すべて事実(Sawamoto ら[参考資料21]、Sugita ら[参考資料24]、Morizane ら[参考資料10])。総説は、HLA適合の限界として、マイナー抗原(HLA以外の抗原)が合わせられないこと、免疫抑制が必要になりうることを挙げています[参考資料1]。

これは、HLAを合わせることが免疫抑制を不要にするわけではないという、本シリーズ「自家と同種」編で見た点と同じです。

4. 素材技術者の視点①:ストックは、規制文書つきの「原料」

素材技術者の読みどころ:iPS細胞のストックは、「規格・証明書・適格性」を備えた原料として流通している

財団のページと発表から、ストックが「原料」としてどう整えられているかが読み取れます事実。

  • 3つの階層:臨床用株を研究室で拡大培養した研究用株、臨床用株、そして臨床用株を拡大培養してGMP省令に基づく品質管理の試験を実施したマスターセルバンク(ICH-Q5A試験済み)。臨床用株は原則、各細胞株について1機関あたり1バイアルが提供される
  • 品質評価で除かれた理由:選ばれなかった株の上位の理由は、iPS細胞の樹立に使ったエピソーマルベクターの残存、がん関連遺伝子の変異(SNV/indel)、コピー数変化や構造異常(11番染色体の構造変異など)、未分化マーカー、核型の異常でした。無菌試験を含む汚染検査で除外された株はありませんでした
  • 製法の改良:残存ベクターが最も目立つ除外理由だったため、単一細胞のクローニング(Method 2)を導入して残存の低下を確認し、さらにコロニーを拾う工程を減らして製造時間と継代数を減らした(Method 3)
  • ドナー適格性の国際整合:日本の規制とFDAの規制の違い(問診票、一部の検査項目、FDA承認キットの使用など)から、FDAはドナーの再問診・再採血・再検査を強く推奨。財団と住友ファーマの対応の結果、2022年4月29日付で「パーキンソン病の臨床試験では、QHJIドナー由来のiPS細胞はFDAが要求するドナー適格性を満たす」との回答を得た
  • 米国のドラッグマスターファイル:HLAホモストックのうち2株を、FDAのドラッグマスターファイル(DMF)に登録している

これを素材の目で読むと、次のような点が見えてきます(本記事による解説)。

  • ストックは「細胞そのもの」というより、ドナー適格性、ウイルス・無菌試験、ゲノム解析、製造記録がセットになった原料です。化学品の「試験成績書つきの原料」に近い
  • 除外理由の最上位がエピソーマルベクターの残存であることは、iPS細胞の「樹立に使った材料」が、最終製品の品質に最後まで影響しうることを示す
  • ドナーの適格性は国ごとに基準が違うため、同じ株でも海外で使うには追加の試験が要る。「既製」でも国境を越えると追加の手間が生じる

GMPの考え方は本シリーズ「GMP」編、セルバンクの管理は「細胞製造とセルバンク」編で扱います。

5. 方法②:HLAを「編集する」― ユニバーサルドナー細胞

型を合わせる方法の弱点は、ドナーの募集と株の数です。Xu らは、まれなドナーを集める必要があることを課題に挙げ、遺伝子編集で免疫適合性を高める2つの方法を示しました事実。

戦略狙い報告された内容報告に記載の課題
B2M欠失(クラスI全体を消す)CD8 T細胞の反応を避けるRiolobos ら(2013):B2M欠失のES細胞で混合リンパ球反応とCD8 T細胞の反応が減少。クラスIIを出さない用途でユニバーサルドナーになりうるとしたNK細胞が反応しうる(ミッシングセルフ)
B2M遺伝子座にHLA-E(B2M融合)を導入NK細胞による溶解を防ぐGornalusse ら(2017):HLA-A、-B、-Cを出さず、CD8 T細胞に同種と認識されず、抗HLA抗体に結合せず、NK細胞の溶解に抵抗。AAVによる導入クラスIIをもたない分化細胞の用途に限られる
HLA-A・Bを欠失しCを残す(+クラスII欠失)NK細胞を抑えつつ、抗原提示を保つXu ら(2019):T細胞とNK細胞を in vitro・in vivo で回避。HLA-C保持の12株とクラスII欠失で世界人口の90%超に適合と推定(推定値は集団の頻度にもとづくモデル)
MHCクラスI・IIの不活化+CD47の過剰発現免疫抑制なしでMHC不適合の同種に生着Deuse ら(2019):マウス・ヒトのiPS細胞由来の血管内皮、平滑筋、心筋が、完全にMHC不適合の免疫の正常な受け手で長期生存(動物実験)(実験は動物モデル)
同じ編集の応用島細胞に適用Hu ら(2024):B2M−/−、CIITA−/−、CD47+ の霊長類の膵島(偽島)が、免疫抑制なしでインスリン非依存を達成(霊長類)(実験は動物モデル)

すべて事実(Riolobos ら[参考資料11]、Gornalusse ら[参考資料12]、Xu ら[参考資料13]、Deuse ら[参考資料14]、Hu ら[参考資料15])。5つの戦略を並べたのは本記事の整理で、優劣を示すものではありません。

細胞表面のHLAをどう設計するか(3つの型) 色の箱は表面分子の有無を表す模式図です。 ① 野生型(編集なし) HLA-A:あり HLA-B:あり HLA-C:あり HLA-II:あり CD47:なし T細胞とNK細胞から 見える(型が合わないと拒絶) ② HLA-C保持型 HLA-A:なし HLA-B:なし HLA-C:あり HLA-II:なし CD47:なし A、B、IIをなくし、Cなどを残して NK細胞を抑える設計 ③ ハイポイミューン型 HLA-I:なし HLA-II:なし CD47:あり B2MとCIITAをなくし、CD47を 多く出す設計 ※ ②は京都大学iPS細胞研究財団のゲノム編集株(HLA-A、-B、CIITAを欠失し、HLA-C、-E などを残す)の説明[参考資料6]にもとづく概念図です。 ※ ③は Deuse ら[参考資料14]と Hu ら[参考資料15]の遺伝子編集(B2M・CIITAの欠失、CD47の過剰発現)の記述にもとづく概念図です。 ※ 実際の細胞表面には多数の分子があります。ここでは編集の対象になった分子だけを示した簡略図です。
図4 概念図(ベクター作図)。②は京都大学iPS細胞研究財団[参考資料6]、③は Deuse ら[参考資料14]と Hu ら[参考資料15]によります。編集の対象になった分子だけを示した本記事の簡略図で、細胞表面の実際の分子構成を示すものではありません。

日本の臨床用ゲノム編集株

財団は、HLAホモのストックにCRISPR-Cas9で編集を施し、HLA-A、HLA-B、CIITAを欠失させたiPS細胞を製造し、品質評価のうえ保管・提供しています。 HLA-C や HLA-E などを残すことで、キラーT細胞やヘルパーT細胞だけでなくNK細胞を介した拒絶のリスクを小さくすることが期待できる、と説明しています事実。 臨床用の株は、ドナー2名(QHJI、YZWJ)から計5クローンです事実。 一方、財団は課題として、すべての拒絶反応を回避できない可能性と、ゲノム編集技術を用いた臨床応用例が国内に先例がなく、安全性や品質を確認する必要があることを挙げています事実。

臨床で何が確認されているか

  • UP421(遺伝子編集した同種のドナー膵島):NEJM 2025の論文は、CRISPR-Cas12bによる編集とレンチウイルスによる遺伝子導入で拒絶を避けるように編集した同種の膵島を、長年1型糖尿病のある男性1名の前腕の筋肉に移植した例を報告しました。免疫抑制薬なしで、12週時点で編集された細胞への免疫反応はなく、C-ペプチドは血糖に応答して安定して検出されました事実。 2026年7月には14か月の追跡が NEJM に Letter として掲載され、Sana の発表によれば、C-ペプチドは14か月時点でも検出され、安全性の問題は確認されなかったとされています事実。ClinicalTrials.gov では早期第1相(推定2名、募集中)です事実
  • VX-017(Vertex):血液型にかかわらずすべての対象患者を治療できるよう設計された幹細胞由来の島細胞療法で、FDAがIND(治験開始届)を受理しました。第1/2相試験の開始は「近く」とされています事実
  • HLA-I欠失のiPS細胞由来血小板(前臨床):Suzuki らは、HLA-Iを欠失した血小板がNK細胞の細胞傷害反応を引き起こさず、ヒトNK細胞をもつマウスで循環したと報告しました。血小板にはNK細胞を活性化するリガンドがないことが理由かもしれない、としています事実。細胞の種類によって、HLA-Iを消してもNK細胞が反応しない場合があるという例です
「ユニバーサル」という言葉に注意

実際には、特定の免疫の経路を避けるように設計した細胞であって、あらゆる免疫反応を避けられると確認された細胞ではありません。 総説は、遺伝子編集した細胞の課題として、オフターゲット効果と、悪性化・感染した細胞が認識されなくなることを挙げています事実。 Xu らも、B2M欠失は NK細胞の活性化と抗原提示の欠如を招きうると述べています事実。 オフターゲットの評価は、本シリーズ「オフターゲット効果と安全性評価」編で詳しく扱います。

6. 素材技術者の視点②:編集は、製造工程の一部になる

素材技術者の読みどころ:編集の「道具」と「検査」が、すべて原料・資材になる

HLAを編集した細胞は、編集という工程を製造に組み込むことを意味します。報告された編集の方法は一つではありません事実。

  • AAVによる遺伝子ターゲティング:Riolobos らは、遺伝毒性の可能性があるヌクレアーゼを使わずにAAVベクターで効率よく遺伝子を標的化したと述べている。Gornalusse らもAAVでHLA-Eを導入した
  • CRISPR-Cas9:財団の臨床用ゲノム編集株、Xu らの研究
  • CRISPR-Cas12bとレンチウイルス:UP421

これを素材・製造の目で読むと、次のような点が見えます(本記事による解説)。

  • 編集酵素、ガイドRNA、ベクターが「原料」になる:どの方法を選んでも、酵素(またはその遺伝子)、核酸、ウイルスベクターが製造資材になる。ウイルスベクターは本シリーズ「ウイルスベクター」編、核酸の合成と送達は「mRNA」「脂質ナノ粒子」編の知見と共通する
  • クローン選択という工程:財団の編集株が「QHJI14s04/AB II-KO-03」「-11」「-12」のようにクローンごとに管理されている事実ことは、編集後に単一細胞から増やしたクローンを選抜し、品質評価したうえで保管していることを示す。株ごとに品質試験が要る
  • 評価に使う「生きた試薬」:総説が挙げる免疫原性の評価法(NK細胞の細胞傷害、末梢血単核球とのT細胞の増殖反応、抗HLA抗体の測定など)事実は、ヒト由来の初代細胞や血清を使う。評価系の再現性も、製品品質の一部になる
  • 編集株自体がマスターセルバンクの単位:編集した株ごとに、バンクの管理、特性解析、安全性評価が必要になる

さらに総説は、細胞を材料で包む「シールディング」(アルギン酸ビーズや機能化ハイドロゲルなど)も免疫への対処のひとつとして整理し、 その課題として免疫適合性のある材料、細胞の血管形成と機能、必要な可溶性因子の透過性を挙げています事実。 この方向は、本シリーズ「糖尿病の細胞治療」編と「ハイドロゲル」編で扱います。

7. 「既製(off-the-shelf)」の中身 ― 自家と同種との整理

本シリーズ「自家と同種」編は、既製(off-the-shelf)を「あらかじめ製造・品質試験を済ませて在庫し、必要なときにすぐ使える状態」と整理し、 同種でも、承認されたiPS細胞由来の2品目では免疫抑制が使われ、手術の都度製造される製品もあることを見ました。 ここでは、免疫の目印の扱いという軸だけで、3つの道を並べ直します(本記事による整理)。

道免疫の目印事前に用意するもの公表資料で確認できること
自家自分のものなし(患者ごとに製造)患者自身のiPS細胞由来のドーパミン前駆細胞を、免疫抑制なしで1名に移植した報告事実[参考資料26]
同種:HLAを合わせる型を揃えた他人のものホモ接合体ドナーの株(27株・7名で約40%)10以上の臨床試験で使用。パーキンソン病では免疫抑制(タクロリムス)を併用事実
同種:HLAを編集する消した、または隠した他人のもの編集した株(財団の臨床用株は5クローン)島細胞で1名、免疫抑制なしで14か月事実。国内の臨床応用例は先例なし事実

自家の例は Schweitzer ら(NEJM 2020)[参考資料26]、他は本文の出典によります。3つの道の優劣を示すものではありません。

ここから見えるのは、「既製」にするために必要なものが、道によって違うことです(本記事による解説)。 合わせる道は「ドナーの網羅」(どれだけ多くの型の株を持つか)、編集の道は「編集の安全性の証明」(編集によって増えるリスクを、どこまで証明できるか)が課題の中心です。

8. 節目の整理と、未確定事項

「合わせる」から「編集する」へ、主な節目 等間隔に並べた図で、時間軸の縮尺ではありません。 2005年 HLAホモ接合体バンクの 必要数の試算(Lancet) 2013年 日本で iPS細胞 ストック事業を開始 2017年 サルでMHC適合が 神経細胞の生着を改善 2019年 HLA-Iを編集した iPS細胞の報告 2022年11月 ストックの10年の まとめ論文(Med) 2025年2月 HLAホモの ドナー募集を終了 2025〜26年 編集した膵島を 1名に移植・追跡 ※ 2005年は Taylor ら、2013年・2022年・2025年2月は財団の発表[参考資料3・4]、2017年は Morizane ら[参考資料10]によります。 ※ 2019年は Deuse ら・Xu ら[参考資料13・14]、2025〜26年は Carlsson ら[参考資料16・17]によります。 ※ 7つの出来事を選んだのは本記事によるもので、分野の歴史を網羅した年表ではありません。
図5 概念図(ベクター作図)。各節目は Taylor ら[参考資料8]、京都大学iPS細胞研究財団[参考資料3・4]、Morizane ら[参考資料10]、Deuse ら・Xu ら[参考資料13・14]、Carlsson ら[参考資料16・17]によります。7つの出来事を選んだのは本記事によるもので、網羅した年表ではありません。

(1) 編集した細胞の長期の安全性

UP421 の追跡は14か月で、人数は1名です事実。長期の生着、腫瘍化、感染の見逃しといった課題は、今後の追跡と試験で明らかになる事項です未確定/将来。

(2) HLAを編集した細胞の、多人数での結果

HLAを編集した細胞を多人数に使った臨床試験の結果は、本稿の調査時点(2026年10月)では確認できませんでした未確定/将来。Sana は、幹細胞由来の同様の製品(SC451)のIND申請と第1/2相試験の開始を、早ければ2026年としています未確定/将来。

(3) 本稿で確認できなかったこと

  • 財団の「約40%」と、本稿の簡易計算(約35%)の差の理由
  • 財団のHLAゲノム編集株を用いた臨床試験の計画・実施
  • UP421 で編集された遺伝子の正確な構成(公表された論文と発表の範囲では、遺伝子編集とレンチウイルスの導入が行われたこと以外は確認できなかった)
  • 日本でHLAゲノム編集細胞を承認するための規制上の要件
この記事のまとめ
  • HLAは「自分か他人か」の目印で、T細胞(クラスIとII)とNK細胞(ミッシングセルフ)が見ています。目印を消すだけではNK細胞が反応しうるため、設計は単純ではありません事実
  • 型を合わせる道:7名・27株で日本人の約40%、37名で約60%。10以上の臨床試験で使われたが、承認された製品でも免疫抑制剤が使われています事実
  • 型を編集する道:財団は、HLA-A、-B、CIITA を欠失しCを残した臨床用の株を提供。免疫抑制なしの移植は、島細胞の1名・14か月が報告されています事実
  • 簡易計算では、1位の型で約16.2%、上位4位で約35.1%(公表の約40%とは一致せず)本稿の計算
  • 素材の面では、ストックも編集株も「規制文書つきの原料」であり、編集の道具と評価系が新たな資材・検査になります(本記事による解説)

9. 用語集

MHC/HLA
主要組織適合遺伝子複合体。ヒトではHLA(ヒト白血球抗原)と呼ぶ。自己と他人を見分ける目印。
HLAクラスI
A、B、Cなど。ほぼすべての有核細胞に出て、CD8陽性のT細胞に認識される。
HLAクラスII
DR、DQ、DPなど。主に抗原提示細胞に出て、CD4陽性のT細胞に認識される。
ホモ接合体
父母から同じ型を受け継いでいる状態。出る目印の種類が少ない。
ハプロタイプ
1本の染色体上にまとまって受け継がれるHLAの型の組み合わせ。
ハーディ・ワインベルク平衡
型が集団の中でランダムに組み合わさると仮定した場合の、型の頻度の関係。
直接/間接/半直接経路
T細胞が他人のMHCを認識する3つの経路。
ミッシングセルフ
自己のHLAクラスIが見えない細胞を、NK細胞が攻撃すること。
NK細胞
ナチュラルキラー細胞。自然免疫の細胞で、HLAクラスIの欠如を感知する。
PRA(パネル反応性抗体)
抗HLA抗体の保有の程度を示す指標。高いと適合する移植片が見つかりにくい。
B2M
β2ミクログロブリン。クラスIの細胞表面での発現に必要な部品。
CIITA
クラスIIの遺伝子の発現を制御する因子。欠失させるとクラスIIが出なくなる。
HLA-E/CD47
NK細胞などの攻撃を抑える信号を出す分子。編集で補う設計が試みられている。
ハイポイミューン
免疫に見つかりにくいように編集した細胞。
マスターセルバンク
品質を確認した細胞を凍結して保管した、製造の元になるバンク。
ドラッグマスターファイル(DMF)
原料などの製造・品質の情報を、規制当局に登録しておく仕組み。

10. 参考資料(一次情報)

  1. Petrus-Reurer S, et al.「Immunological considerations and challenges for regenerative cellular therapies」Commun Biol 4:798, 2021 — doi.org
  2. Siu JHY, et al.「T cell Allorecognition Pathways in Solid Organ Transplantation」Front Immunol 9:2548, 2018 — doi.org
  3. 京都大学iPS細胞研究財団「iPS細胞ストックプロジェクト 10年のまとめ論文公開」2022年11月17日 — cira-foundation.or.jp
  4. 京都大学iPS細胞研究財団「医療用iPS細胞ストックプロジェクト HLA型ホモ接合体ドナーのリクルート終了について」2025年2月3日 — cira-foundation.or.jp
  5. 京都大学iPS細胞研究財団「HLAホモiPS細胞ストック」(提供ページ) — cira-foundation.or.jp
  6. 京都大学iPS細胞研究財団「HLAゲノム編集iPS細胞ストック(ゲノム編集株)」(提供ページ) — cira-foundation.or.jp
  7. Yoshida S, et al.「A clinical-grade HLA haplobank of human induced pluripotent stem cells matching approximately 40% of the Japanese population」Med 4(1):51-66.e10, 2023 — doi.org
  8. Taylor CJ, et al.「Banking on human embryonic stem cells: estimating the number of donor cell lines needed for HLA matching」Lancet 366:2019-2025, 2005 — doi.org
  9. Nakatsuji N, et al.「HLA-haplotype banking and iPS cells」Nat Biotechnol 26:739-740, 2008 — doi.org
  10. Morizane A, et al.「MHC matching improves engraftment of iPSC-derived neurons in non-human primates」Nat Commun 8:385, 2017 — doi.org
  11. Riolobos L, et al.「HLA Engineering of Human Pluripotent Stem Cells」Mol Ther 21(6):1232-1241, 2013 — doi.org
  12. Gornalusse GG, et al.「HLA-E-expressing pluripotent stem cells escape allogeneic responses and lysis by NK cells」Nat Biotechnol 35:765-772, 2017 — doi.org
  13. Xu H, et al.「Targeted Disruption of HLA Genes via CRISPR-Cas9 Generates iPSCs with Enhanced Immune Compatibility」Cell Stem Cell 24(4):566-578, 2019 — doi.org
  14. Deuse T, et al.「Hypoimmunogenic derivatives of induced pluripotent stem cells evade immune rejection in fully immunocompetent allogeneic recipients」Nat Biotechnol 37:252-258, 2019 — doi.org
  15. Hu X, et al.「Hypoimmune islets achieve insulin independence after allogeneic transplantation in a fully immunocompetent non-human primate」Cell Stem Cell 31:334-340, 2024 — doi.org
  16. Carlsson PO, et al.「Survival of Transplanted Allogeneic Beta Cells with No Immunosuppression」N Engl J Med 393(9):887-894, 2025 — doi.org
  17. Carlsson PO, et al.「Long-Term Survival of Hypoimmune Allogeneic Islets without Immunosuppression」N Engl J Med 395:825-827, 2026(Letter to the Editor) — doi.org
  18. Sana Biotechnology「Sana Biotechnology Announces Follow-On Publication in The New England Journal of Medicine (NEJM) Highlighting Groundbreaking Long-Term Data and Durability of Hypoimmune-Modified Islet Cell Transplantation Without Immunosuppression in Type 1 Diabetes」2026年7月13日 — ir.sana.com
  19. Vertex Pharmaceuticals「Vertex Reports Second Quarter 2026 Financial Results」2026年8月3日 — news.vrtx.com
  20. Suzuki D, et al.「iPSC-Derived Platelets Depleted of HLA Class I Are Inert to Anti-HLA Class I and Natural Killer Cell Immunity」Stem Cell Reports 14:49-59, 2020 — doi.org
  21. Sawamoto N, et al.「Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease」Nature 641:971-977, 2025 — doi.org
  22. U.S. FDA「LANTIDRA (donislecel-jujn) Package Insert」Revised 06/2023(PDF) — fda.gov
  23. ClinicalTrials.govNCT06239636「First-in-human Safety Study of Hypoimmune Pancreatic Islet Transplantation in Adult Subjects With Type 1 Diabetes」 — clinicaltrials.gov
  24. Sugita S, et al.「HLA-Matched Allogeneic iPS Cells-Derived RPE Transplantation for Macular Degeneration」J Clin Med 9(7):2217, 2020 — doi.org
  25. Taylor CJ, et al.「Generating an iPSC bank for HLA-matched tissue transplantation based on known donor and recipient HLA types」Cell Stem Cell 11(2):147-152, 2012 — doi.org
  26. Schweitzer JS, et al.「Personalized iPSC-Derived Dopamine Progenitor Cells for Parkinson’s Disease」N Engl J Med 382:1926-1932, 2020 — doi.org
  27. 厚生労働省 中医協「再生医療等製品の取扱いについて(アムシェプリ)」総-11-4、令和8年4月8日(PDF) — mhlw.go.jp

11. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
クラスI・IIの役割(CD8 T細胞/CD4 T細胞)、拒絶が多型の大きなMHCへのT細胞反応によること、NK細胞のミッシングセルフ、HLA-E・CD47による抑制、B2MとCIITAの欠失、HLAマッチングの限界(マイナー抗原・免疫抑制が必要になりうる)、英国150株・日本140株で93%・90%の推定、遺伝子編集の課題(オフターゲット、悪性化・感染細胞が認識されなくなる)、シールディング(アルギン酸、機能化ハイドロゲル)の課題、免疫原性の評価法出典1 https://doi.org/10.1038/s42003-021-02237-4事実
直接・間接・半直接経路の定義、従来の見方(直接は強く短期で急性拒絶、間接は長く続き慢性拒絶)と、その根拠の乏しさ出典2 https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.02548事実
7名・27株・約40%、上位4位のHLA型、10以上の臨床試験、有害事象の報告なし、60以上の提供先、2013年開始・2020年4月に財団へ継承・2015年提供開始、除外理由、Method 2・3、47名・28型・約60%(2021年末)出典3 https://www.cira-foundation.or.jp/j/news/2022/11/17-000302.html事実
ドナー募集の終了(2025年2月)、約90名の同意、上位20位・計37名・約60%、約40%のカバー、10以上の臨床研究・治験、2023年の米国での治験開始、HLAゲノム編集ストックとマイiPS細胞の研究開発出典4 https://www.cira-foundation.or.jp/j/news/2025/02/03-001045.html事実
HLAホモiPS細胞ストックの提供形態(研究用・臨床用・MCB、ICH-Q5A、1バイアルずつ)、FDAのドナー適格性の対応(2022年4月29日付の回答)、DMF登録(2株)、上位4位のHLA頻度(8.437%・4.448%・3.843%・2.722%)出典5 https://www.cira-foundation.or.jp/j/provision-of-ips-cells/homozygous/事実
HLAの説明(自己か否かの目印、数万通りの組み合わせ、クラスI・II、HLA-A・B・C)、HLAゲノム編集株(HLA-A・B・CIITAをCRISPR-Cas9で欠失、C・Eを残す、NK細胞を含む拒絶リスクの低減への期待)、課題(全ての拒絶を回避できない可能性、国内に臨床応用の先例なし)、臨床用株のクローン(QHJI 3クローン、YZWJ 2クローン)出典6 https://www.cira-foundation.or.jp/j/provision-of-ips-cells/genome-edited/事実
27株・7名・約40%のHLAハプロバンク、GMP、10以上の臨床試験、除外理由出典7 https://doi.org/10.1016/j.medj.2022.10.003事実
HLAホモ接合体バンクの必要数の試算(2005年)出典8 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(05)67813-0事実
HLAハプロタイプバンクとiPS細胞(2008年)出典9 https://doi.org/10.1038/nbt0708-739事実
MHCホモ接合体のカニクイザルiPS細胞由来ドーパミン神経の同種脳移植、MHC適合でミクログリア・リンパ球が減り、TH陽性ニューロンの生存が増加、タクロリムスの効果出典10 https://doi.org/10.1038/s41467-017-00926-5事実
B2M欠失ES細胞での混合リンパ球反応とCD8 T細胞反応の減少、AAVによる遺伝子ターゲティング、HLAホモ接合体のES細胞サブクローン出典11 https://doi.org/10.1038/mt.2013.59事実
B2M遺伝子座へのHLA-E(B2M融合)の導入(AAV)、HLA-A・B・Cを出さず、CD8 T細胞に同種と認識されず、抗HLA抗体に結合せず、NK細胞の溶解に抵抗、クラスIIをもたない分化細胞に限られる出典12 https://doi.org/10.1038/nbt.3860事実
HLA疑似ホモ接合体とHLA-C保持iPS細胞、T細胞・NK細胞の回避、12株とクラスII欠失で世界人口の90%超、B2M欠失のNK細胞活性化と抗原提示の欠如出典13 https://doi.org/10.1016/j.stem.2019.02.005事実
MHCクラスI・IIの不活化とCD47過剰発現、完全にMHC不適合の同種の受け手で長期に生存(動物モデル)出典14 https://doi.org/10.1038/s41587-019-0016-3事実
B2M−/−・CIITA−/−・CD47+ の霊長類の膵島(偽島)、免疫抑制なしでインスリン非依存出典15 https://doi.org/10.1016/j.stem.2024.02.001事実
UP421(CRISPR-Cas12bとレンチウイルスで編集した同種膵島、前腕の筋肉、免疫抑制なし、12週で免疫反応なし、C-ペプチド、有害事象4件)出典16 https://doi.org/10.1056/NEJMoa2503822事実
UP421 の14か月の追跡のLetter(NEJM 2026)出典17 https://doi.org/10.1056/NEJMc2604408事実
Sana の2026年7月13日の発表(14か月のC-ペプチド、安全性の問題なし、SC451のIND申請と第1/2相を早ければ今年)出典18 https://ir.sana.com/news-releases/news-release-details/sana-biotechnology-announces-follow-publication-new-england事実
Vertex の2026年8月3日の発表(VX-017:血液型にかかわらずすべての対象患者を治療できるよう設計、FDAがIND受理、近く第1/2相を開始予定)出典19 https://news.vrtx.com/news-releases/news-release-details/vertex-reports-second-quarter-2026-financial-results事実
HLA-I欠失のiPS細胞由来血小板(NK細胞の細胞傷害を起こさず、ヒトNK細胞をもつマウスで循環、NK活性化リガンドの欠如が理由かもしれない)出典20 https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2019.11.011事実
パーキンソン病の治験の細胞株のHLA型(日本人の17%に適合)、タクロリムスの投与(12か月で半減・15か月で中止)出典21 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08700-0事実
アムシェプリの用法に、タクロリムス水和物の投与(1年を目安に、以後12週間かけて漸減し中止)が含まれること出典27 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001687606.pdf事実
LANTIDRA 添付文書のクロスマッチ陽性での拒絶リスク、PRAの上昇出典22 https://www.fda.gov/media/169920/download?attachment事実
NCT06239636(早期第1相、推定2名、前腕の筋肉への移植、募集中)出典23 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06239636事実
HLAホモ接合体のiPS細胞由来RPEをHLA適合の患者5名に移植、局所ステロイド、1名で免疫反応が疑われ局所ステロイドで対処出典24 https://doi.org/10.3390/jcm9072217事実
既存のHLA型データをもつ150名のホモ接合体ボランティアから作るバンクが英国人の93%に適合しうるというモデル出典25 https://doi.org/10.1016/j.stem.2012.07.014事実
患者自身のiPS細胞由来ドーパミン前駆細胞を、免疫抑制なしで1名に移植した報告出典26 https://doi.org/10.1056/NEJMoa1915872事実
簡易値(1位の型 約16.2%、上位4位 約35.1%)本稿の計算。受け手が少なくとも1本その型をもつこと、ハーディ・ワインベルク平衡を仮定した簡易計算で、公表の約40%とは一致しない(差の理由は確認できていない)本稿の計算
財団の約40%と本稿の簡易値の差の理由、HLAゲノム編集株の臨床試験の計画、UP421 の編集された遺伝子の正確な構成、日本でのHLAゲノム編集細胞の承認要件、編集細胞の長期安全性、多人数での結果本稿の調査時点(2026年10月)で公表資料に記載がない、または結果が出ていない事項である未確定/将来
ストックが「試験成績書つきの原料」に近いという読み取り、除外理由の最上位が樹立の材料(ベクター)であること、国ごとのドナー適格性の違い、編集の道具が原料になるという整理、クローン選択、評価系の再現性、3つの道の整理(合わせる道は網羅、編集の道は安全性の証明)公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
図1〜図5が実際の細胞表面・設計図・統計図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月1日/出典は一次情報(京都大学iPS細胞研究財団の発表と提供ページ、Med・Cell Stem Cell・Nature Biotechnology・NEJM など査読論文、総説、FDAの添付文書、企業の発表、ClinicalTrials.gov)に限定しています。 材料・工程の観点からの読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 財団の約40%と本稿の簡易値の差の理由、HLAゲノム編集株の臨床試験の計画、UP421 の編集された遺伝子の正確な構成、日本でのHLAゲノム編集細胞の承認要件については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 本記事は製造・材料・制度の観点からの技術解説であり、医療上の助言ではありません。図はすべて説明用の概念図です。