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熱可塑性と熱硬化性 技術解説 | Troy Technical

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TECHNOLOGY EXPLAINER

熱可塑性と熱硬化性
― 「もう一度溶かせるか」が、成形・性能・リサイクルのすべてを分ける

樹脂を2つに分ける最も基本的な見方が、熱可塑性と熱硬化性です。加熱すると軟らかくなって流れ、冷やすと固まる樹脂と、反応して網目になり、二度と溶けない樹脂。 この記事では、その違いが分子構造から温度への応答、成形方法、使用温度の考え方、リサイクルの難しさへどうつながるかを、素材技術者の目線で整理します。個別の樹脂(ポリオレフィン、エポキシ樹脂など)は、本シリーズの各編に譲ります。

構成:プラスチック循環利用協会、Plastics Europe、ISO規格、査読論文(Enns・Gillham、Pascault・Williams、Postら、Kloxin・Bowman、Montarnalら、Schyns・Shaver)を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

材料試験室の加熱炉の窓の中に、同じ形の2本の棒が渡されている。左の半透明の棒は温められて真ん中がたわみ、右の黒褐色の棒はまっすぐなまま。手前には半透明のペレットと黒褐色の破片のトレーが置かれた概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。同じ形の2本の棒を加熱炉で温めると、熱で軟らかくなる材料(左)はたわみ、熱で形を保つ材料(右)はまっすぐなままである、という対比を試験室の場面として表現したものです。手前のトレーは、再び溶かして使える材料(ペレット)と、溶かして戻せない材料(硬化品の破片)を示します。実在の製品・材料・色や形状、実際のたわみ量や温度を示すものではありません。
この記事の構成
  1. 熱可塑性と熱硬化性とは何か(3行でつかむ)
  2. どれくらい使われているか ― 日本と世界の生産構成
  3. 分子の違いが、温度への応答の違いになる
  4. 熱可塑性の中の2グループ ― 非晶性と結晶性
  5. 素材技術者の視点①:「熱変形温度」は使用温度ではない
  6. 成形方法 ― 射出・押出・圧縮は何が違うのか
  7. 本稿の計算:硬化温度が低いと、途中で反応が止まる
  8. 素材技術者の視点②:硬化は「固まる」のではなく「反応が進む」
  9. リサイクルの違い ― 再び溶かせるか
  10. 素材技術者の視点③:熱硬化性のリサイクルが難しい理由と、設計で変える試み
  11. 選ぶときの目安
  12. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  13. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料・査読論文・規格に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、高分子科学の教科書的な整理や、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。物性値は、試験法・条件・出所とあわせて記載します。

1. 熱可塑性と熱硬化性とは何か(3行でつかむ)

  • 熱可塑性樹脂:加熱すると軟化・溶融して流れ、冷やすと固まる。この変化が可逆で、何度でも繰り返せる(原理的には)。ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ナイロンなど(解説)
  • 熱硬化性樹脂:液体や粉末のうちに成形し、加熱(または硬化剤)で化学反応を起こして三次元の網目にして固める。できた網目は溶けも流れもしない。エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステルなど(解説。網目の考え方は本シリーズ「ポリマーの基礎」編)
  • 2つの違いの核心:鎖が共有結合で結ばれているか、いないか。熱可塑性は鎖どうしが絡み合いと分子間力、結晶でつながっているだけで、熱で外れる。熱硬化性は共有結合の網目なので、熱では外れず、外すには結合を切るしかない(解説)
この記事でいちばん大事な一行

熱可塑性と熱硬化性の違いは、「加工できる温度の違い」ではなく、「一度成形したあとにもう一度形を変えられるか」の違いです。 この性質が、成形工程(冷やして固める/反応させて固める)、使用温度の上限(融点やTgで決まる/網目の耐熱で決まる)、廃棄後の道(再溶融できる/できない)を、すべて分けています。

ただし境界は完全ではありません。架橋ポリエチレンは、成形後に架橋して熱硬化性に近い性質にした熱可塑性の素材で、ASTM D2765 は架橋したエチレン系プラスチックのゲル分率と膨潤比を測る方法を規定しています事実。 逆に、熱可塑性エラストマーのように、結晶や硬いドメインが物理的な「結び目」になる材料もあります(解説。本シリーズ「ポリウレタンとエラストマー」編で扱います)。

2. どれくらい使われているか ― 日本と世界の生産構成

プラスチック循環利用協会は、日本の樹脂生産量を、ポリエチレン・ポリプロピレン・塩化ビニル樹脂・ポリスチレン類・その他熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂の6種類に分けて公表しています。 2024年の樹脂生産量は853万tで、そのうち熱可塑性樹脂が91.3%、熱硬化性樹脂が74万t(8.7%)でした事実。 ここでいう「プラスチック」には、合成ゴム・合成繊維・塗料・接着剤などの液状樹脂は含まれません事実。

日本の樹脂生産量853万tの内訳(2024年) 出所:プラスチック循環利用協会 マテリアルフロー図 2024年。合成ゴム・合成繊維・塗料・接着剤などの液状樹脂を含まない ポリエチレン 194万t(22.7%) ポリプロピレン 193万t(22.7%) その他熱可塑性樹脂 155万t(18.1%) 塩化ビニル樹脂 146万t(17.2%) ポリスチレン類(AS・ABS含む) 90万t(10.6%) 熱硬化性樹脂 74万t(8.7%) 熱可塑性樹脂 91.3%(約779万t)/ 熱硬化性樹脂 8.7%(74万t) 世界(2024年、Plastics Europe)では「その他の熱硬化性」8.3%、PUR 5.3%(熱可塑性のPUも含む) ※ 779万tは 853万t − 74万t の本稿の計算です(91.3%は協会の公表値)。各項目は協会の公表値で、丸めにより合計が一致しない場合があります。 ※ 世界の数値は Plastics the Fast Facts 2025(2024年の暫定値)。対象範囲は接着剤・塗料・一部の繊維などを除きます。
図1 データ図(ベクター作図)。日本の2024年の樹脂生産量の内訳は、プラスチック循環利用協会のマテリアルフロー図[参考資料1]の公表値です。世界の数値は Plastics Europe の Plastics the Fast Facts 2025[参考資料2]によります。集計の範囲(液状樹脂・合成繊維などを除く)が日本と世界で異なるため、両者の割合を直接比べることはできません。

世界の側では、Plastics Europe の「Plastics the Fast Facts 2025」が、2024年の世界のプラスチック生産量を430.9 Mtと示し、種類別にポリプロピレン19.0%、PE-LD・LLD 13.9%、PE-HD・MD 12.1%、PVC 12.8%、PET 6.2%、PS 5.1%、PUR 5.3%、その他の熱可塑性7.1%、その他の熱硬化性8.3%などとしています事実。 PURはポリウレタン全体で、熱硬化性の発泡体・エラストマーと熱可塑性ポリウレタンの両方を含むため、熱可塑性と熱硬化性には分けられません(解説)。

素材技術者の読みどころ:熱硬化性は「量は少ない」が、「要求の厳しいところ」にいる

熱硬化性は、量で見ると1割に満たない少数派です。にもかかわらず、本シリーズで扱う半導体封止材、プリント基板、電池のバインダー、複合材料のマトリックスなど、高温での寸法安定、電気絶縁、耐薬品性が要求される用途に集中しています(本記事による解説)。 量の統計だけで重要度を判断すると見誤る領域です。

逆に、廃棄の側から見ると、熱硬化性は統計に現れにくいという問題があります。協会の廃プラスチックの内訳は、ポリエチレン・ポリプロピレン・塩化ビニル樹脂・ポリスチレン類と「その他樹脂」に分けられ、熱硬化性は「その他」に含まれます事実。 熱硬化性だけの回収・再資源化率は、本稿が参照した資料からは読み取れませんでした。

3. 分子の違いが、温度への応答の違いになる

温度を上げたときの弾性率の変化を並べると、3つの材料の違いがひと目で分かります(図2)。

温度を上げると、弾性率はどう変わるか(概念図) 縦軸は弾性率(対数目盛・数値なし)、横軸は温度。曲線の形は模式で、特定の樹脂の測定結果ではありません 温度 → 高 低 弾性率 ガラス状(硬い) ゴム状(柔らかい) 分解 Tg Tg(網目) Tm 流動(溶融) 結晶が溶けて流動 非晶性 結晶性 熱硬化性:流れずゴム状のまま 熱可塑性は最後に「流れる」。熱硬化性は流れずに保ち、高温では分解に至る 結晶性の樹脂は、Tg を超えても結晶が残るあいだ(Tm まで)は形を保つ ※ 動的粘弾性(DMA)の弾性率-温度曲線の典型的な形を模式化したもの。Tg の測り方は ISO 6721-11[参考資料8]に規定されています。 ※ 実際の曲線は、分子量・結晶化度・架橋密度・昇温速度・周波数で大きく変わります。
図2 概念図(ベクター作図)。熱可塑性(非晶性・結晶性)と熱硬化性の、弾性率の温度変化を並べた模式図です。Tg を動的機械分析で求める方法は ISO 6721-11[参考資料8]に規定されています。曲線の形・位置は模式的なもので、特定の樹脂の測定値ではありません。
  • ガラス状から、ゴム状へ:どの材料も、低温では鎖の動きが凍結した「ガラス状」で硬く、ガラス転移点(Tg)を超えると鎖が動き出して急に柔らかくなります。Tgを動的機械分析(DMA)で求める方法は ISO 6721-11:2019 が規定しています。同規格は、Tgを硬く比較的もろいガラス状から、ゴム状または粘性液体状へ移る転移の指標と位置づけ、温度センサーが試料に触れていないため昇温速度によって測定値が変わりうるとして、熱遅れを補正する手順を含めています事実
  • 非晶性の熱可塑性:Tgを超えると柔らかくなり、さらに温度を上げると流れ出す。使用温度の上限は、実質的にTgの近くになる(解説)
  • 結晶性の熱可塑性:Tgを超えても結晶が残るあいだは、結晶が骨格となって形を保つ。結晶が溶ける融点(Tm)で一気に流れる。融点直下まで形を保てる反面、Tgをまたぐ温度域では弾性率が一段下がる(解説)
  • 熱硬化性:Tgを超えても、共有結合の網目があるため流れず、ゴム状の平坦な領域(ゴム状プラトー)を保つ。さらに高温では、網目そのものが分解する(解説)。Tgを超えると弾性率は大きく下がるため、「流れない」ことと「硬いまま」であることは別です
項目熱可塑性熱硬化性
鎖のつながり絡み合い・分子間力・結晶(物理的)共有結合の三次元網目(化学的)
加熱したとき軟化・溶融して流れる流れない。高温で分解
溶媒に対して溶ける(結晶性は溶けにくい)膨潤するが溶けない
成形冷却で固まる(物理変化)硬化反応で固まる(化学変化)
成形後の再加工再成形・溶着ができる再成形できない
未使用材料の保管安定(ペレットは長期保管できる)反応が進むため、保存期間や可使時間に制限がある
端材・不良品粉砕して再投入できる再利用できない

高分子科学の一般的な整理(解説)です。「ガラス転移点の定義と測定法」の行のみ、ISO 6721-11:2019 の適用範囲によります[参考資料8]。

4. 熱可塑性の中の2グループ ― 非晶性と結晶性

熱可塑性樹脂は、鎖が結晶になるかどうかでさらに2つに分かれます(結晶化の条件は本シリーズ「ポリマーの基礎」編)。使い方の上で、この違いは大きく出ます(解説)。

項目非晶性結晶性(半結晶)
代表例ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、PET、ポリアセタール
温度を決める点TgTg と Tm(融点)
溶融の仕方Tg を過ぎて徐々に軟らかくなる。粘度の変化が緩やかTm で急に流動する。溶融後は粘度が低く、薄肉を流しやすい
透明性透明にしやすい結晶が光を散乱して白濁しやすい(造核・急冷・延伸で透明にもできる)
成形収縮・反り小さい結晶化で収縮が大きく、反りやすい
耐薬品性溶剤によるクラック(環境応力亀裂)に敏感になりやすい結晶部が溶剤を通しにくく、耐薬品性が高い

高分子物性の一般的な整理(解説)です。個々の樹脂の数値は、本シリーズの各編で、試験法・条件とともに扱います。

5. 素材技術者の視点①:「熱変形温度」は使用温度ではない

素材技術者の読みどころ:カタログの「荷重たわみ温度」を設計温度に使わない

樹脂のカタログによく載る荷重たわみ温度(HDT)は、ISO 75-1:2020 の方法で測られる値です。同規格は、この方法を、一定の昇温速度のもとで異なる材料の高温での相対的な挙動を評価するのに適した方法だとしたうえで、 得られた結果は必ずしも最高使用温度を表さないと明記しています。実際の使用では、時間、荷重条件、表面応力などが試験条件と異なるためです事実。

つまり、HDTが150 ℃の材料を「150 ℃まで使える」と読むのは誤りです。理由は、第3章の図2を見れば分かります(本記事による解説)。

  • 非晶性や熱硬化性では、Tg を超えると弾性率が桁で下がる。HDTの試験はこの落ち込みを見ているにすぎず、長時間の荷重下の変形(クリープ)は別に評価しなければならない(クリープは本シリーズ「ガラス転移点とクリープ」編で扱います)
  • 結晶性では、HDTはTg と Tm のあいだのどこかに現れる。充填材の有無(ガラス繊維強化など)で大きく動く
  • 熱硬化性では、Tg が硬化度で変わる(第7章)ため、同じ配合でも硬化条件で HDT が変わる

金属で言う「融点」「再結晶温度」「クリープ温度」を分けて考える習慣が、樹脂でも要ります。短時間の耐熱(HDT)、長時間の耐熱(熱老化・クリープ)、瞬間的な耐熱(はんだリフローなど)は、別の試験で別の数字になります。

6. 成形方法 ― 射出・押出・圧縮は何が違うのか

成形方法の名前(射出・押出・圧縮)は、材料の種類ではなく形の作り方を表します。同じ名前の成形でも、熱可塑性と熱硬化性では、材料の中で起きていることがまったく違います(図3)。

熱可塑性と熱硬化性の成形工程

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
成形の流れ ― 「冷やして固める」と「温めて固める」(概念図) 射出・押出・圧縮のいずれも、材料の状態の変わり方は上段の流れ(熱可塑性)か、下段の流れ(熱硬化性)のどちらかです 熱可塑性(ポリエチレン、PET、ナイロンなど) 原料の供給 ペレット 加熱して溶融 スクリュで混練 賦形 型・ダイを通す 冷却して固化 結晶化・ガラス化 取り出し 端材は再投入可 時間を決めるのは「冷却」。反応は起きない(物理変化) 熱硬化性(エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステルなど) 原料の準備 樹脂+硬化剤+充填材 型へ充填 圧縮・注入・含浸 加熱して硬化 架橋反応が進む 硬いまま取り出し 型内で網目が完成 後硬化(必要時) オーブンで反応を完了 時間を決めるのは「硬化反応」。化学変化なので元には戻らない ※ 工程名は一般的な整理(解説)です。射出成形・圧縮成形の試験片作成条件は ISO 294-1・ISO 293(熱可塑性)、ISO 295(熱硬化性)に規定されています。 ※ 実際の工程には、予熱・脱ガス・型の温度管理・離型処理など多くの工程が加わります。
図3 概念図(ベクター作図)。熱可塑性は「溶かして冷やす」、熱硬化性は「反応させて固める」という工程の違いを模式化したものです。試験片作成の規格は ISO 294-1[参考資料4]、ISO 293[参考資料5]、ISO 295[参考資料6]です。工程は代表例で、実際の工程はこれより複雑です。
成形法熱可塑性での姿熱硬化性での姿
射出成形溶融樹脂を冷たい型に押し込み、冷えて固まったら取り出す。サイクルは短い反応前の材料を温めた型に注入し、型の中で硬化させる。型を高温に保つ
押出成形溶融樹脂をダイから連続的に押し出し、冷やして引き取る(パイプ、フィルム、シート)連続成形は限られる(引抜成形など)。通常はダイの先で反応を終えて固める
圧縮成形加熱した型の間で圧縮して賦形し、冷却して取り出す(シート、大型成形品)型の中の材料を加熱・加圧して硬化させる(フェノール、SMC、エポキシ成形材料など)

成形法の整理は一般的な解説です。試験片を作る条件は規格に定められています(下記)。

試験片の作り方を定めた規格が、この違いをよく表しています。

  • ISO 294-1:2017(射出成形):熱可塑性の試験片を射出成形で作るときの一般原則を定め、成形条件の報告の仕方を統一することを目的とします事実
  • ISO 293:2023(圧縮成形):熱可塑性の試験片の圧縮成形について、8種類の冷却方法を規定し、再現できる状態の成形品を得るとしています事実
  • ISO 295:2004(熱硬化性の圧縮成形):熱硬化性の試験片を、フェノール、アミノプラスト、メラミン/フェノール、エポキシ、不飽和ポリエステルの粉末成形材料から熱と圧力で作る手順を定めています事実
素材技術者の読みどころ:熱可塑性は「冷却の履歴」、熱硬化性は「硬化の履歴」が物性を決める

ISO 293 が冷却方法を8種類も用意しているのは、冷却速度が結晶の量と大きさを変え、剛性・透明性・収縮が変わるからです(解説)。 ISO 294-1 が成形条件の報告を重視するのも同じ理由です。

  • 熱可塑性:物性は「材料+冷却のしかた」で決まる。厚肉の中心と表面で冷却速度が違えば、同じ成形品の中で結晶化度が違う。試験片の物性値を製品にそのまま当てはめられない理由はここにある
  • 熱硬化性:物性は「材料+硬化の温度と時間」で決まる。硬化が不十分なら、網目が粗く、Tgが低く、耐熱・耐薬品が落ちる(次章で計算)。同じ配合でも硬化条件で別の材料になる
  • 共通の落とし穴:どちらの場合も、カタログの数値は標準の試験片を、標準の条件で作った場合の値。実際の製品の成形条件が違えば、数値は変わる

7. 本稿の計算:硬化温度が低いと、途中で反応が止まる

熱硬化性樹脂は、反応が進むにつれて網目が密になり、Tgが上がっていきます。ここに熱硬化性特有の落とし穴があります。Tgが硬化温度に追いつくと、網目が動けなくなって反応が鈍るのです。この現象をガラス化(vitrification)と呼びます。

  • EnnsとGillhamは、アミン硬化エポキシ樹脂(Epon 828/PACM-20)の等温硬化で、ゲル化に至る時間とガラス化に至る時間を、動的粘弾性・赤外分光・ゲル分率の実験で測り、「時間-温度-変態(TTT)硬化線図」を理論的にモデル化しました。ガラス化の曲線の「S字形」は、反応速度論と、未硬化樹脂のTg(Tg0)、完全硬化樹脂のTg(Tg∞)、ゲルのTgに依存するとしています事実
  • PascaultとWilliamsは、Tgと転化率xの関係を表すのに、DiBenedettoの式が便利な構成式であること、そして部分的に反応した樹脂のTgはエンタルピー緩和により、熱履歴と測定の昇温速度に依存しうることを示しています事実
本稿の計算

DiBenedettoの式で、ガラス化が起きる転化率を計算します本稿の計算。

  • 式:(Tg − Tg0) / (Tg∞ − Tg0) = λx / (1 − (1 − λ)x) (x:転化率)
  • 仮定(説明のための値):Tg0 = 0 ℃、Tg∞ = 180 ℃、λ = 0.6
  • ガラス化の目安:Tg が硬化温度に等しくなる転化率。解くと x = r / (λ + r(1 − λ))、r = (T − Tg0) / (Tg∞ − Tg0)
  • 硬化温度 80 ℃ → r = 0.444、x = 約0.57
  • 硬化温度 120 ℃ → r = 0.667、x = 約0.77
  • 硬化温度 160 ℃ → r = 0.889、x = 約0.93

前提と限界:Tg0・Tg∞・λは本稿の仮定で、特定の樹脂の値ではありません。また「Tg=硬化温度」はガラス化の目安で、実際には反応速度がしだいに落ちる過渡的な現象です。 実際の硬化は、ゲル化・粘度上昇・発熱も絡むため、TTT線図で整理します。

硬化温度が低いと、途中で「ガラス化」して反応が止まる(本稿の計算) DiBenedetto の式 (Tg − Tg0) / (Tg∞ − Tg0) = λx / (1 − (1 − λ)x)。仮定:Tg0=0 ℃、Tg∞=180 ℃、λ=0.6 0 50 100 150 200 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 反応の進み具合(転化率 x) Tg (℃) 硬化温度 80 ℃ x = 0.57 硬化温度 120 ℃ x = 0.77 硬化温度 160 ℃ x = 0.93 Tg が硬化温度に追いついた点で、網目の動きが凍結して反応が鈍る(ガラス化) 硬化温度 120 ℃なら転化率 約0.77、80 ℃なら約0.57で止まりやすい。完全硬化には Tg∞ 以上での後硬化が要る ※ パラメータ(Tg0、Tg∞、λ)は説明のための仮定で、特定の樹脂の値ではありません。Tg=硬化温度となる点をガラス化の目安としています。 ※ 実際の系ではゲル化・反応速度・熱履歴も効き、時間-温度-変態(TTT)図で整理されます[参考資料12]。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。DiBenedettoの式[参考資料14]は、熱硬化性樹脂のTgと転化率の関係の式として整理されています[参考資料13]。Tg0・Tg∞・λは本稿の仮定で、特定の樹脂の実測値ではありません。ガラス化の転化率(0.57・0.77・0.93)は、この仮定のもとで本稿が算出した値です。
素材技術者の読みどころ:硬化は温度の「階段」で設計する

図4から、硬化条件の考え方が読み取れます(本記事による解説)。

  • 低温で長時間硬化しても、Tg∞には届かない:硬化温度が低いと、ガラス化した時点で反応がほとんど止まる。網目は完成していない
  • 段階硬化(ステップキュア)が一般的な理由:低温で硬化→Tgが上がる→温度を上げてガラス化を溶かし→反応を進める、を繰り返すと、Tg∞に近づける。成形後のオーブンでの後硬化はこのため
  • 硬化度は測れる:DSCで反応熱から転化率を求める方法が ISO 11357-5:2025 に規定されている(モノマー、プレポリマー、ポリマーを対象とし、充填材を含んでもよい)事実。製品の硬化度の確認には、この残存反応熱とTgが使われる(解説)
  • 性能の落とし穴:硬化不足の製品は、使用中に高温にさらされると後硬化が進み、寸法や物性が使いながら変わる。封止材や基板材料の「Tgの規格値」が硬化条件とセットで書かれるのはこのため

8. 素材技術者の視点②:硬化は「固まる」のではなく「反応が進む」

素材技術者の読みどころ:熱硬化性は、時間とともに粘度が上がる「生きた材料」

熱可塑性のペレットは、倉庫で何年置いても同じ材料です。熱硬化性は違います(本記事による解説)。

  • 粘度は、はじめ下がり、やがて上がる:加熱すると一度粘度が下がって流れやすくなり、反応が進むにつれて分子量が増えて粘度が上がり、ゲル化点で流動を失う。EnnsとGillhamは、ゲル化やガラス化に至る前の反応系のバルク粘度も記述しています事実
  • 流動と硬化の競争:型の隅まで流れ込むには、ゲル化する前に充填を終えなければならない。薄肉・長流動の部品ほど、反応の遅さが設計の鍵になる
  • 保存・可使時間:混合した二液や、プリプレグ、成形材料は、保管温度と期限が品質を左右する
  • 網目の完成度が物性:熱可塑性では「どう冷やしたか」、熱硬化性では「どこまで反応したか」

この性質は短所だけではありません。反応前は低粘度の液体なので、繊維の隙間やフィラーの間に深く染み込ませられます。複合材料や封止材に熱硬化性が多いのは、この性質の恩恵でもあります。

9. リサイクルの違い ― 再び溶かせるか

熱可塑性:溶かし直せるが、無傷ではない

熱可塑性は、粉砕して再溶融すれば再び成形できます。日本の統計(プラスチック循環利用協会、2024年)では、廃プラスチックの総排出量911万tのうち、有効利用されたのは810万t(有効利用率89%)でした事実。 ただし、この有効利用の中身は、マテリアルリサイクル180万t(20%)、ケミカルリサイクル23万t(3%)、サーマルリサイクル(エネルギー回収)608万t(67%)です事実。 同協会はサーマルリサイクルに、ガス化(燃料利用)、固形燃料/セメント原・燃料、発電焼却、熱利用焼却を含めており、「有効利用率89%」には、焼却してエネルギーを回収した分が大きく含まれます。 「再び樹脂になった」割合ではありません(定義:有効利用率=有効利用量/廃プラ総排出量)。

再溶融には劣化が伴います。SchynsとShaverは、PET・ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・塩化ビニル樹脂の5つの主要な包装用プラスチックについて、機械的リサイクルは、コスト、力学特性の劣化、品質の不均一によって限定されていると整理しています事実。 Patelらは高密度ポリエチレンの再処理で、初期には主鎖の切断(分子量の低下)が支配的で、酸素が増えると長鎖分岐が支配的になることを報告しています事実。

熱硬化性:溶かせない

Postらのレビューは、熱硬化性の優れた性能は共有結合の網目から生まれるが、それがそのままリサイクルの限界になると述べています。 商用またはそれに近い手法は、機械的・熱的・化学的な処理に分けられますが、多くは高いエネルギーを要し、熱硬化性のマトリックス自体の再利用ではなく、価値の高い繊維・充填材・基材の回収を狙ったものだと整理しています事実。

熱可塑性と熱硬化性のリサイクルの道

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
リサイクルの道 ― 「再び溶かせる」ことが出発点になる(概念図) 各項目は主な選択肢の整理です。矢印は技術的に取りうる道を示し、実施の規模や経済性を示すものではありません 熱可塑性 熱硬化性 使用済み・端材 粉砕・洗浄・再溶融 マテリアルリサイクル 再生ペレット・再生品 再溶融のたびに、分子量の低下・分岐・不純物の混入が 起こりうる(Schyns と Shaver、Patel ら) 別の道:解重合などのケミカルリサイクル(別編) 使用済み・端材 再び溶かすことはできない 粉砕して充填材に 低付加価値の用途 セメント原燃料・エネルギー回収 日本ではサーマルリサイクルに分類 熱分解・溶媒分解 網目を切る(高いエネルギー) 網目の設計から変える 動的結合(CAN)・ビトリマー ※ 日本の統計(プラスチック循環利用協会)では、セメント原燃料化・発電焼却などはサーマルリサイクル(エネルギー回収)に分類されます[参考資料1]。 ※ CAN=共有結合性適応ネットワーク(Kloxin と Bowman)。ビトリマー=網目を組み換えられる架橋ポリマー(Montarnal ら)。 ※ 左右の箱の数や順序は説明のための整理で、処理量の大きさを表すものではありません。
図5 概念図(ベクター作図)。熱可塑性は再溶融が出発点になり、熱硬化性は網目を切るか、網目の設計自体を変える道になります。熱硬化性の現行手法の整理は Post らのレビュー[参考資料15]、動的網目は Kloxin と Bowman[参考資料16]、Montarnal ら[参考資料17]によります。各道の実施規模・経済性・環境負荷は本図では示していません。

10. 素材技術者の視点③:熱硬化性のリサイクルが難しい理由と、設計で変える試み

素材技術者の読みどころ:難しさは3つの要因が重なっている

熱硬化性のリサイクルは、次の3つが同時に立ちはだかる問題です(本記事による解説)。

  • 網目は溶けない:再溶融という最も安い道がない。熱可塑性の端材は粉砕して再投入できるが、熱硬化性は成形ロス(ランナー、バリ)もそのまま使えない
  • 網目を切るには、強い結合を切らなければならない:化学分解や熱分解は、共有結合を切るために高い温度や強い薬品を要する(Postら[参考資料15]が「高いエネルギー」と整理)
  • 複合材料である:熱硬化性は繊維や無機充填材との複合材として使われることが多く、マトリックスを分解したい場合でも、混ざったものを分ける工程が要る

この結果、現状の道は、図5の右側のように充填材として使う、エネルギー回収に回す、熱分解・溶媒分解で繊維を回収するといったものが中心です。 日本の統計でも、セメント原燃料化や発電焼却は「サーマルリサイクル」に分類されています事実。

網目の設計を変える:動的共有結合

もう一つの道は、「溶かせない」という前提そのものを設計で変えることです。 KloxinとBowmanは、共有結合の網目でありながら、刺激(熱・光など)で可逆的に組み変わる化学構造を網目全体に持たせた「共有結合性適応ネットワーク(CAN)」という新しい枠組みを整理しています。 従来の熱硬化性は一般に再成形も、再処理も、リサイクルもできないのに対し、CANは刺激によって構造を永続的に組み変えられる、というのがその要点です事実。 Montarnalらのエポキシ網目(ビトリマー)は、交換反応で解重合せずに網目のトポロジーを組み換え、不溶のまま加工できると報告されています(詳細は本シリーズ「ポリマーの基礎」編)事実。

ただし、Postらは、リサイクル可能な熱硬化性に関する学術研究の大多数は、産業への適用の可能性が限られると評価しています事実。 動的網目が実際の製品に広く採用されるかどうかは、本稿の調査範囲では確認できません未確定/将来。

素材技術者の読みどころ:「リサイクルしやすい設計」は、成形とセットで考える

リサイクルの難しさは、廃棄の段階で突然現れるのではなく、材料を選ぶ段階で決まっています(本記事による解説)。

  • 材料を選ぶ時点で、廃棄時の道が決まる:熱硬化性を選んだ時点で「再溶融」の道は閉じる。それでも選ぶ理由(耐熱・寸法安定)が、リサイクルの難しさと釣り合うかを問う
  • 端材の出方も、材料で違う:熱可塑性は端材を工程内で戻せるが、熱硬化性はランナーやバリがそのまま廃棄物になる。歩留まりの設計が効く
  • 混ぜると、どちらも難しくなる:熱可塑性でも、異種樹脂の混合やフィラーの混入で再生品の品質は落ちる(Schynsらの整理)

11. 選ぶときの目安

要求傾向理由(解説)
高温での寸法安定・クリープ耐性熱硬化性が有利になりやすい共有結合の網目は、Tgを超えても流れない(図2)
量産性・サイクルの短さ熱可塑性が有利になりやすい冷却で固まるだけ。反応待ちがない
溶着・再成形・補修熱可塑性再び溶かせる
リサイクルしやすさ熱可塑性が有利になりやすい再溶融の道がある(ただし劣化は伴う)
繊維・フィラーへの含浸、複雑な充填熱硬化性が有利になりやすい反応前は低粘度の液体
電気絶縁・耐薬品が要求される高温用途熱硬化性が多い網目が溶剤で溶けず、温度で流れない

傾向の整理であり、例外が多い領域です(PEEKのように高い耐熱を持つ熱可塑性もあります。本シリーズ「PEEKとスーパーエンプラ」編)。選定は用途ごとの要求と試験で行います。

12. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) ISO 472(用語規格)の条文

ISO 472:2013 は、プラスチックの用語を定める規格として存在を確認しましたが、本文は有料で、熱可塑性・熱硬化性の定義条文は確認していません。本稿の定義は、一般的な高分子科学の整理(解説)です。

(2) 熱硬化性のリサイクル率

日本の廃プラスチック統計は、樹脂別の内訳が「その他樹脂」にまとめられ、熱硬化性だけの回収・再資源化率は公表資料から読み取れませんでした。世界の統計(Plastics Europe)も、熱硬化性のリサイクル率を示していません。

(3) 図4の計算の仮定

DiBenedettoの式のパラメータは、説明のための仮定です。特定の樹脂について、実測のTg-転化率曲線は確認していません。

(4) 動的網目の産業採用

CAN・ビトリマーの産業での採用状況は確認していません。

この記事のまとめ
  • 違いの核心は、共有結合の網目があるかないか。日本の2024年の樹脂生産853万tのうち、熱可塑性は91.3%、熱硬化性は8.7%(74万t)でした事実
  • 温度を上げると、熱可塑性は流れ、熱硬化性はゴム状のまま保つ。HDTは最高使用温度ではありません事実
  • 熱可塑性の物性は冷却の履歴で、熱硬化性の物性は硬化の履歴で決まる。ISO 293 は冷却方法を8種類用意しています事実
  • 硬化温度が低いと途中でガラス化する。仮定の系では、120 ℃で転化率約0.77、80 ℃で約0.57です本稿の計算
  • 熱可塑性は再溶融できるが、劣化は伴う。日本の「有効利用率89%」の67%はエネルギー回収です事実
  • 熱硬化性のリサイクルは、網目を切るか、網目の設計を変えるかの二択。後者の産業採用は確認できていません未確定/将来

13. 用語集

熱可塑性樹脂
加熱で軟化・溶融し、冷却で固まる、可逆な変化を示す樹脂。
熱硬化性樹脂
反応して三次元の網目になり、溶けなくなる樹脂。
ガラス転移点 Tg
ガラス状から、ゴム状(または粘性液体)へ移る温度。昇温速度などで値が動く。
融点 Tm
結晶が溶ける温度。結晶性樹脂が流動する温度。
非晶性/結晶性(半結晶)
鎖が結晶にならないもの/結晶部と非晶部が混在するもの。
ゴム状プラトー
Tg を超えたあとの、弾性率がほぼ平坦な領域。網目があると高温まで続く。
荷重たわみ温度 HDT
一定荷重・一定昇温で、決めた量たわむ温度。最高使用温度ではない。
DMA(動的機械分析)
温度を変えながら弾性率と損失を測り、Tg を求める方法。
ゲル化
網目が全体につながり、流動を失う点。
ガラス化(vitrification)
硬化中に Tg が硬化温度に追いつき、反応が鈍る現象。
TTT線図
等温硬化で、ゲル化・ガラス化に至る時間と温度の関係をまとめた線図。
後硬化(ポストキュア)
成形後に高温で保持し、残った反応を進めて Tg を上げること。
共有結合性適応ネットワーク(CAN)
共有結合の網目に、可逆な結合の組み換えを持たせたもの。
ビトリマー
交換反応で網目のつなぎ方を組み換えられる網目。
マテリアルリサイクル
廃プラスチックを再生樹脂・再生品にする再資源化。
サーマルリサイクル
日本の統計では、焼却・固形燃料化などで熱エネルギーを回収する利用。

14. 参考資料(一次情報)

  1. プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 マテリアルフロー図 2024年」2025年12月発行(PDF) — https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
  2. Plastics Europe「Plastics the Fast Facts 2025」2025年10月(2024年の暫定値、PDF) — https://plasticseurope.org/wp-content/uploads/2025/09/PE_TheFacts_25_digital-1pager-scrollable.pdf
  3. ISO ISO 472:2013「Plastics — Vocabulary」 — https://www.iso.org/standard/44102.html
  4. ISO ISO 294-1:2017「Plastics — Injection moulding of test specimens of thermoplastic materials — Part 1」 — https://www.iso.org/standard/67036.html
  5. ISO ISO 293:2023「Plastics — Compression moulding of test specimens of thermoplastic materials」 — https://www.iso.org/standard/83779.html
  6. ISO ISO 295:2004「Plastics — Compression moulding of test specimens of thermosetting materials」 — https://www.iso.org/standard/28180.html
  7. ISO ISO 75-1:2020「Plastics — Determination of temperature of deflection under load — Part 1: General test method」 — https://www.iso.org/standard/77576.html
  8. ISO ISO 6721-11:2019「Plastics — Determination of dynamic mechanical properties — Part 11: Glass transition temperature」 — https://www.iso.org/standard/74988.html
  9. ISO ISO 11357-5:2025「Plastics — Differential scanning calorimetry (DSC) — Part 5: Determination of characteristic reaction-curve temperatures and times, enthalpy of reaction and degree of conversion」 — https://www.iso.org/standard/88107.html
  10. ASTM International ASTM D2765「Standard Test Methods for Determination of Gel Content and Swell Ratio of Crosslinked Ethylene Plastics」 — https://store.astm.org/d2765-16r24.html
  11. Schyns, Shaver「Mechanical recycling of packaging plastics: a review」Macromol. Rapid Commun. 42(3), 2000415(2020年にオンライン公開) — https://doi.org/10.1002/marc.202000415
  12. Enns, Gillham「Time–temperature–transformation (TTT) cure diagram: Modeling the cure behavior of thermosets」J. Appl. Polym. Sci. 28, 2567–2591(1983年) — https://doi.org/10.1002/app.1983.070280810
  13. Pascault, Williams「Glass transition temperature versus conversion relationships for thermosetting polymers」J. Polym. Sci. B 28, 85–95(1990年) — https://doi.org/10.1002/polb.1990.090280107
  14. DiBenedetto「Prediction of the glass transition temperature of polymers: A model based on the principle of corresponding states」J. Polym. Sci. B 25, 1949–1969(1987年) — https://doi.org/10.1002/polb.1987.090250914
  15. Post ら「A review on the potential and limitations of recyclable thermosets for structural applications」Polym. Rev. 60(2), 359–388(2019年にオンライン公開) — https://doi.org/10.1080/15583724.2019.1673406
  16. Kloxin, Bowman「Covalent adaptable networks: smart, reconfigurable and responsive network systems」Chem. Soc. Rev. 42, 7161–7173(2013年) — https://doi.org/10.1039/c3cs60046g
  17. Montarnal ら「Silica-like malleable materials from permanent organic networks」Science 334, 965–968(2011年) — https://doi.org/10.1126/science.1212648
  18. Patel ら「Defining quality by quantifying degradation in the mechanical recycling of polyethylene」Nat. Commun. 15, 8733(2024年) — https://doi.org/10.1038/s41467-024-52856-8

15. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
日本の2024年の樹脂生産量853万t。熱可塑性91.3%、熱硬化性74万t(8.7%)。内訳:ポリエチレン194万t(22.7%)、ポリプロピレン193万t(22.7%)、その他熱可塑性155万t(18.1%)、塩化ビニル樹脂146万t(17.2%)、ポリスチレン類90万t(10.6%)。「プラスチック」に合成ゴム・合成繊維・塗料・接着剤等の液状樹脂は含まれないプラスチック循環利用協会 マテリアルフロー図 2024年出典1 https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf事実
廃プラ総排出量911万t、有効利用810万t(有効利用率89%)。マテリアルリサイクル180万t(20%)、ケミカルリサイクル23万t(3%)、サーマルリサイクル608万t(67%)。サーマルリサイクルの範囲(ガス化〔燃料利用〕、固形燃料/セメント原・燃料、発電焼却、熱利用焼却)。有効利用率の定義。廃プラの樹脂別内訳が「その他樹脂」を含む5区分であること同上(協会の資料の概要ページと内訳ページ)出典1 https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf事実
世界のプラスチック生産430.9 Mt(2024年)。PP 19.0%、PE-LD・LLD 13.9%、PE-HD・MD 12.1%、PVC 12.8%、PET 6.2%、PS 5.1%、PUR 5.3%、その他の熱可塑性7.1%、その他の熱硬化性8.3%。対象範囲から接着剤・塗料・一部の繊維などが除かれていることPlastics Europe「Plastics the Fast Facts 2025」出典2 https://plasticseurope.org/wp-content/uploads/2025/09/PE_TheFacts_25_digital-1pager-scrollable.pdf事実
ISO 472:2013 がプラスチックの用語規格であること(定義条文は未確認)ISO の書誌ページ出典3 https://www.iso.org/standard/44102.html事実
ISO 294-1:2017 が射出成形試験片の一般原則と成形条件の報告の統一を定めること題名・適用範囲出典4 https://www.iso.org/standard/67036.html事実
ISO 293:2023 が熱可塑性の圧縮成形試験片について8種類の冷却方法を定めること題名・適用範囲出典5 https://www.iso.org/standard/83779.html事実
ISO 295:2004 が熱硬化性の圧縮成形試験片(フェノール、アミノプラスト、メラミン/フェノール、エポキシ、不飽和ポリエステルの粉末成形材料)の作成手順を定めること題名・適用範囲出典6 https://www.iso.org/standard/28180.html事実
ISO 75-1:2020 の荷重たわみ温度が、相対的な挙動の評価に適し、結果が必ずしも最高使用温度を表さないこと題名・適用範囲出典7 https://www.iso.org/standard/77576.html事実
ISO 6721-11:2019 がDMAによるTgの測定法を定め、Tgをガラス状からゴム状/粘性液体状への転移の指標とし、昇温速度で値が変わりうるため熱遅れを補正する手順を含むこと題名・適用範囲出典8 https://www.iso.org/standard/74988.html事実
ISO 11357-5:2025 がDSCによる反応温度・反応熱・転化率の求め方を定め、モノマー・プレポリマー・ポリマーに適用でき、充填材を含んでもよいこと題名・適用範囲出典9 https://www.iso.org/standard/88107.html事実
ASTM D2765 が架橋したエチレン系プラスチックのゲル分率と膨潤比を測る方法を定めること題名・適用範囲出典10 https://store.astm.org/d2765-16r24.html事実
主要5種の包装用プラスチックの機械的リサイクルが、コスト・力学特性の劣化・品質の不均一によって限定されていることSchyns, Shaver のレビューの要旨出典11 https://doi.org/10.1002/marc.202000415事実
アミン硬化エポキシ樹脂でゲル化・ガラス化の時間を測り、TTT線図をモデル化したこと。ガラス化曲線のS字形がTg0・Tg∞・ゲルのTg・反応速度論に依存すること。ゲル化・ガラス化の前の反応系のバルク粘度も記述していることEnns, Gillham の要旨出典12 https://doi.org/10.1002/app.1983.070280810事実
DiBenedettoの式が熱硬化性のTg-転化率の構成式として整理されること。部分反応樹脂のTgが熱履歴・昇温速度に依存しうることPascault, Williams の要旨出典13 https://doi.org/10.1002/polb.1990.090280107事実
DiBenedettoの式が対応状態の原理にもとづくTgの予測モデルに由来すること(架橋度の影響を表す式を含む)DiBenedetto の要旨出典14 https://doi.org/10.1002/polb.1987.090250914事実
熱硬化性の性能と限られたリサイクル性が同じ網目に由来すること。商用手法は機械的・熱的・化学的に分けられ、高いエネルギーを要し、樹脂自体の再生ではなく繊維・充填材・基材の回収を狙うこと。リサイクル可能な熱硬化性の学術研究の多くは産業適用の可能性が限られることPost らのレビューの要旨出典15 https://doi.org/10.1080/15583724.2019.1673406事実
CANの枠組み:従来の熱硬化性は再成形・再処理・リサイクルが一般にできず、CANは刺激で構造を永続的に組み変えられることKloxin, Bowman の要旨出典16 https://doi.org/10.1039/c3cs60046g事実
エポキシ網目が交換反応で解重合せずにトポロジーを組み換え、不溶のまま加工できることMontarnal らの要旨出典17 https://doi.org/10.1126/science.1212648事実
高密度ポリエチレンの再処理で、初期は主鎖切断が支配的で、酸素が増えると長鎖分岐が支配的になることPatel らの要旨出典18 https://doi.org/10.1038/s41467-024-52856-8事実
ガラス化の転化率(硬化温度80・120・160 ℃で約0.57・0.77・0.93)。779万t=853万t−74万t本稿の計算。前提:Tg0=0 ℃、Tg∞=180 ℃、λ=0.6(説明のための仮定)、Tg=硬化温度をガラス化の目安とした本稿の計算
熱可塑性・熱硬化性の一般的な定義と性質の比較表、非晶性と結晶性の比較表、成形法の比較表、「熱可塑性は冷却の履歴、熱硬化性は硬化の履歴」「硬化は階段で設計する」「熱硬化性の粘度は時間で変わる」「難しさは3つの要因が重なる」「選ぶときの目安」「熱硬化性は要求の厳しい用途に集中している」「HDTを使用温度に使わない」の整理、PURが熱可塑性・熱硬化性に分けられないこと高分子科学の一般的な整理にもとづく本記事の解説。各機関が表明した見解ではない解説
熱硬化性だけのリサイクル率。ISO 472 の定義条文。動的網目(CAN・ビトリマー)の産業での採用状況本稿の調査範囲では確認できなかった(熱硬化性は統計上「その他樹脂」に含まれる、規格本文が有料、など)未確定/将来
図1〜図5が説明用の作図であること。ヒーロー画像がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月2日/出典は一次情報(プラスチック循環利用協会・Plastics Europe の統計資料、ISO・ASTM規格の題名と適用範囲、査読論文の書誌と要旨)に限定しています。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 ISO 472 の定義条文、熱硬化性だけのリサイクル率、動的網目の産業採用状況は、確認できなかったため記載していません。 図4の計算は、説明のための仮定にもとづく例です。図はすべて説明用の概念図、データ図、または本稿の計算です。図1〜図5はベクター作図、ヒーロー画像はAI生成イメージであり、いずれも実際の測定曲線・製品の実物を示すものではありません。