TECHNOLOGY EXPLAINER
バイオプラスチック
― 「植物由来」と「生分解性」は、別々の性質。分けて読むと見えること
「バイオプラスチック」という言葉は、原料がバイオマス(植物など)であることと、使い終わったあとに微生物で分解されることという、 まったく別の二つの性質をひとまとめにして呼びます。 植物由来でも分解しない樹脂(バイオPE)もあれば、石油由来でも分解する樹脂(PBAT)もあります。 この記事では、PLA・PHA・バイオPE/PET・セルロース系・リグニンを、 分子と加工、規格と試験条件、原料の持続可能性の順に、素材技術者の目線で整理します。
- バイオプラスチックとは何か(3行でつかむ)
- 二つの軸 ― 原料(バイオマス)と終末(生分解)
- 主な素材を並べる ― PLA・PHA・バイオPE/PET・セルロース系・リグニン
- 素材技術者の視点①:PLAの物性と加工 ― メーカー公称値を読む
- PHA ― 微生物がつくるポリエステル
- バイオPE・バイオPET ― 「ドロップイン」と、バイオ度の測り方
- 素材技術者の視点②:分子から読む「バイオ度」の数字
- 生分解とコンポスト ― 条件と規格
- 素材技術者の視点③:生分解は「材料+環境+時間」のシステム特性
- 原料(バイオマス)の持続可能性
- 規模の見方と、制度の動き
- 課題と、本稿で確認できなかったこと
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公的機関・業界団体・規格団体・メーカー・査読論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・法令上の期限であり、実績が確認できていない事項
このほか、高分子化学や材料設計の一般的な説明は「解説」として区別しています。物性値はメーカー公称(代表値)であり、グレードの違う値を並べて優劣をつけることはしません。環境への影響は規制当局と査読論文の記述に基づき、確立した知見と議論中の点を分けて書きます。調査会社の市場推計は使っていません。
1. バイオプラスチックとは何か(3行でつかむ)
- バイオプラスチックは「バイオマス由来」「生分解性」、またはその両方を満たすプラスチックの総称です。European Bioplastics は、「バイオベース、生分解性、または両方の性質を持つプラスチック」と定義しています事実。
- 二つの性質は独立です。欧州委員会は、バイオベースのプラスチックには生分解するものとしないものがあり、生分解性のプラスチックにもバイオベースのものと化石由来のものがあると整理しています事実。
- 生分解は材料の性質だけでは決まりません。欧州委員会は、生分解を「システム特性」、つまり材料と環境条件と時間が等しく効くものと位置づけています事実。「バイオ」の語から、環境で自然に分解すると読むのは誤りです。
本シリーズ「プラスチックリサイクル」編では、再生材の数字の読み方を扱いました。バイオプラスチックにも同じ種類の落とし穴があります。 何%が植物由来か、どの条件で分解するのかという数字は、測り方と条件を伴って初めて意味を持ちます。 ポリエステルとしての基礎は「ポリエステルとPET」編、ポリオレフィンは「ポリオレフィン」編と合わせてお読みください。
2. 二つの軸 ― 原料(バイオマス)と終末(生分解)
European Bioplastics は、バイオプラスチックの素材を三つの主なグループに分けています事実。
- バイオベース(部分的を含む)で、生分解しないもの:バイオPE、バイオPP、バイオPETなど(いわゆるドロップイン)と、PTTやTPC-ETなどのバイオベースの高機能ポリマー。
- バイオベースかつ生分解性のもの:PLA、PHA、PBSなど。
- 化石資源由来で、生分解性のもの:PBATなど。
二つの軸が独立するのは、原料の由来は炭素原子の出どころの話で、生分解性は高分子の化学構造の話だからです(以下は高分子化学の一般的な説明を含む「解説」です)。
- バイオPE:植物由来のエタノールからエチレンを得て重合すれば、主鎖は従来のPEと同一の炭素-炭素結合です。原料が変わっても、分子は同じなので、生分解性にはなりません。European Bioplastics も、バイオベースのPE・PET・PVCは従来品と同一の性質を持つとしています事実。
- PLA・PHA・PBAT:主鎖に加水分解や酵素で切れるエステル結合を持つ脂肪族ポリエステルです。生分解性は結合の種類と構造に由来し、原料が植物か石油かは関係しません。European Bioplastics も、「生分解性は資源の由来に依存せず、ポリマーの化学構造に直結する」としています事実。
ただし、エステル結合を持つことは、環境で自然に分解することの保証ではありません。酵素や水が入り込み、微生物が働く条件と時間が要ります(第8章・第9章)。
3. 主な素材を並べる ― PLA・PHA・バイオPE/PET・セルロース系・リグニン
| 素材 | 原料・できかた | 性質のポイント | 根拠(種類) |
|---|---|---|---|
| PLA(ポリ乳酸) | 糖などの発酵でできる乳酸を原料にした脂肪族ポリエステル(バイオベースかつ生分解性の代表) | 透明で剛性が高い。耐熱性は高くない。水分に弱く、乾燥と加工条件の管理が要る(第4章) | メーカー技術資料、査読レビュー |
| PHA(PHB、PHBV、PHBHなど) | 微生物が体内に蓄える脂肪族ポリエステル。カネカのPHBHは植物油などを原料に微生物で生産 | 土中・海水中でも分解するグレードがある。ただし速度は環境により異なる(第5章) | 査読レビュー、メーカー公表 |
| バイオPE・バイオPP | 植物由来のエタノール等から得たモノマーを重合 | 分子は従来品と同一。生分解しない。既存のリサイクルの流れに乗せられる | European Bioplastics |
| バイオPET(部分的にバイオ) | 原料の一部(例:エチレングリコール側)がバイオ由来のPET | 性質は従来のPETと同一。「バイオ度」は測り方で変わる(第6〜7章) | European Bioplastics、規格 |
| セルロース系・デンプン系 | セルロースやデンプンを原料または主成分とする | 新しい機能(コンポスト適合、場合により改善したバリア性)を持つ素材の例として挙げられている | European Bioplastics |
| リグニン | 植物の細胞壁の成分。バイオ精製の副産物として得られる | エンジニアリングプラスチック、熱可塑性エラストマー、発泡体などの新しい用途の可能性が論じられている段階 | 査読論文(Ragauskasら) |
すべて事実(European Bioplastics[1]、Farahら[4]、Chen[5]、Ragauskasら[6]、カネカ[8])。PLAの原料の説明は一般的な化学の説明(解説)を含みます。性質の記述は定性的で、数値の比較はしていません。
4. 素材技術者の視点①:PLAの物性と加工 ― メーカー公称値を読む
PLAは最も広く使われるバイオベースの生分解性樹脂ですが、物性と加工の条件は一般の汎用樹脂とかなり違います。 ここでは、NatureWorks社の押出・熱成形グレードIngeo 2003Dの技術データシートを読みます。 同社は、このグレードを「生鮮食品包装・食器用の、高分子量の透明な汎用押出グレード」とし、記載の値を「代表値であり、規格値(仕様)ではない」と明記しています事実。 以下の数値はメーカー公称の代表値で、他のグレードや他の樹脂の値と並べて優劣を論じることはできません。
本稿の計算同資料は、粘度の低下を防ぐため水分を0.025%(250 ppm)未満に保つことを推奨しています事実。これを重量に直します。
- 樹脂1 t(1,000,000 g)あたり:1,000,000 g × 0.00025 = 250 g
- 25 kg入りの袋1つあたり:25,000 g × 0.00025 = 6.25 g
前提と限界:0.025%は同資料の推奨値であり、グレードや用途、最終製品の要求で適切な値は変わります。 ごくわずかな水分が分子量に効くのは、PLAがエステル結合を主鎖に持ち、溶融温度で加水分解を受けるためです(解説)。
同資料の次の記述は、加工側から見たPLAの性格をよく表しています事実。
- 乾燥が必須:押出前の乾燥は「結晶化したペレットで90 ℃・2時間、または露点−40 ℃まで」。結晶化していない再粉砕品は、先に結晶化させてから乾燥する、とあります。
- 他の汎用樹脂と相溶しない:「広い範囲の汎用樹脂とは相溶しない」ため、立ち上げ・停止時にはポリスチレンかポリプロピレンでの専用のパージ手順を踏むよう求めています。
- 熱履歴に弱い:主な熱分解生成物はアセトアルデヒド(PETの熱劣化でも生じる物質)で、融点以上の温度で長時間滞留(例:175 ℃で24時間超)すると顕著に分解するとあります。
この三つは、PET加工の知識とほぼ同じ形をしています(本シリーズ「ポリエステルとPET」編)。 一方、機械的性質は別の顔を見せます。引張弾性率は3.5 GPaと高い一方、破断伸びは6.0%、ノッチ付きアイゾット衝撃は16 J/mと小さく、熱変形温度(ASTM E2092)は55 ℃です事実(2003Dの代表値)。 つまり、剛くて透明だが、割れやすく、耐熱が低いという性格です(本記事による解説)。 熱い飲料、高温の輸送、食洗機のような条件は、設計の最初に確認すべき制約になります。
PLAは、結晶化度、分子量、可塑剤やブレンドによって物性が大きく変わることが知られており、 Farahらのレビューは、PLAの安定性、加工性、劣化、他のポリマーとの非相溶性、老化、リサイクル性に影響する物理的・機械的性質と、 その改善策(成分や可塑剤のブレンド、核剤の添加、PLAの変性、ナノ複合化など)を整理しています事実(要旨の趣旨)。
5. PHA ― 微生物がつくるポリエステル
PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)は、多くの細菌が体内に蓄えるバイオポリエステルです。 Chen(2009年)のレビューは、PHAのバイオプラスチック、ファインケミカル、インプラント材料、医薬品、バイオ燃料などへの応用と、 発酵・材料・エネルギー・医療にまたがる産業のバリューチェーンを形成していることをまとめています事実(要旨の趣旨)。
| 項目 | カネカ(Green Planet®、PHBH)の公表内容 |
|---|---|
| 材料 | PHBH(3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体)のブランド名 |
| 原料と製法 | 「植物油などを原料に微生物により生産されたポリマー」。「PHBHを大量生産することに世界で初めて成功」と同社は説明 |
| 生分解の説明 | 「自然界に存在する多くの微生物により生分解され、最終的には二酸化炭素と水になる」。土中だけでなく海水中での生分解を実現したと同社は説明 |
| 認証 | 2017年に海水中で生分解する認証「OK Biodegradable MARINE」を取得(一部の製品グレード)。2019年に欧州連合の全食品接触用途で使用可能に |
| 注意書き | 「海水温などの環境により、生分解速度は異なります」「社内データであり、海水中での分解を保証するものではありません」 |
| 用途の例(同社の掲載) | ストロー、カトラリー、ショッピングバッグ、食品包装材、化粧品容器など |
すべて事実(カネカ Green Planet 紹介ページ[参考資料8])。企業自身の公表であり、第三者による評価ではありません。分解の速度・条件は製品グレードと環境によって異なります。
カネカ自身が、海水中の分解について「環境により速度が異なる」「社内データであり保証するものではない」と書いているのは、重要な手がかりです事実。 認証も「一部のグレード」で取得したものです。生分解性は、後述のとおり材料と環境と時間の組み合わせで決まるためです(第9章)。
材料の設計という点では、PHBHが2種類のモノマーの共重合体であることに意味があります(本記事による解説)。 PHA一般では、ホモポリマー(PHBなど)は結晶性が高く加工しにくい一方、側鎖の長いモノマーを共重合すると結晶性が下がり、柔軟性と加工性が増す、という設計がとられます。 PLAが「加工側の制約」を課すのに対し、PHAは生産(発酵)の側にコストと生産性の課題があり、設備の増強がその焦点です。 カネカは2022年2月に大型の能力増強を決定したと発表しています事実(見出しのみ確認。内容は本稿では未確認)。
6. バイオPE・バイオPET ― 「ドロップイン」と、バイオ度の測り方
European Bioplastics は、バイオベースまたは部分的にバイオベースのPE・PET・PVCなどについて、 「性質は従来のものと同一で、技術的に化石由来と同等であり、既存のリサイクルの流れで機械的リサイクルできる」と説明しています事実。 分子が同じなので、化石由来品との違いは「どの炭素で作られたか」だけです。
そのため、「どれだけバイオ由来か」を製品の分析で確かめる方法が重要になります。
- 放射性炭素(14C)法:European Bioplastics は、バイオベース炭素含有率を測る確立した方法として14C法(EU規格:CEN/TS 16137、米国規格:ASTM D6866)を挙げています事実。ASTMは D6866 を「放射性炭素分析を用いた、固体・液体・気体試料のバイオベース含有率を求める標準試験法」としています事実。
- 質量ベースの含有率:European Bioplastics は、「バイオベースの質量含有率」でも表示でき、炭素以外の酸素・窒素・水素も含めて数えるため14C法と相補的だとしています事実。ISO 16620-1:2015 は、炭素質量または各構成要素の質量に基づくバイオベース含有率の一般原則と計算法を定める規格です事実。
- 両者で数字が違う:European Bioplastics は、「バイオベース炭素含有率」と「バイオベース質量含有率」は単位が違うため、典型的な数値も異なり、比較の際に考慮が必要だと注意しています事実。
7. 素材技術者の視点②:分子から読む「バイオ度」の数字
「バイオ度」の二つの数字が、なぜ同じ材料で違うのかを、PETの繰り返し単位で確かめてみます。
本稿の計算前提は次のとおりです。
- PETの繰り返し単位は C10H8O4。テレフタル酸の残基(C8H4O2)と、エチレングリコールの残基(C2H4O2)からなる。
- 原子量は C=12.011、H=1.008、O=15.999。したがって、テレフタル酸残基は 132.12、エチレングリコール残基は 60.05、合計 192.17。
- 仮定:エチレングリコール側だけがバイオ由来で、テレフタル酸側は化石由来とする。
計算
- バイオベース炭素含有率(14C法に相当):10個の炭素のうち2個がバイオ由来なので、2÷10 = 20%
- バイオベース質量含有率:60.05 ÷ 192.17 = 約31%
同じ材料が「20%」とも「31%」とも言えることになります。 前提と限界:実際の部分バイオPETの原料構成と公表値は、この仮定とは限りません。 また、ISO 16620-1 の計算は質量の取り方に規定があり、ここでは単純化しています。
欧州委員会の政策枠組みは、バイオベース含有率について、次のように述べています事実。
- 測定は放射性炭素法を優先すべき:「結果が頑健で、広く受け入れられているため」。
- マスバランス方式は慎重に:「バイオマスの利用をチェーン・オブ・カストディで記録し、マスバランスで最終製品に割合を帰属させる方法は、実際のバイオベース含有率を確認する方法としては適切とは見なされない。高い透明性と説明責任があり、合意された規格に裏づけられている場合に限って使うべき」。
- 表示は具体的に:「『バイオプラスチック』『バイオベース』のような一般的な主張はすべきでなく、『製品は50%のバイオベースプラスチックを含む』のように、正確で測定可能な割合に限るべき」。また、義務的な最低含有率や統一された認証・ラベルは現時点でないとしています。
日本バイオプラスチック協会(JBPA)も、国内市場の推計で「マスバランス方式によるバイオマス由来特性を割り当てたプラスチックは含めていません」と明記しています事実。 ケミカルリサイクルのマスバランス(本シリーズ「ケミカルリサイクル」編)と同じく、分子としては区別できない部分を、帳簿で扱うことの是非が、ここでも論点です(本記事による解説)。
材料技術者としては、数字を見たら「14C法か、質量か、帳簿上の割り当てか」を確かめるのが最初の一歩になります。
8. 生分解とコンポスト ― 条件と規格
European Bioplastics は、生分解を「環境中の微生物が材料を水、二酸化炭素、堆肥などの天然の物質に変える化学的プロセス」とし、 「規格の裏づけなしに『生分解性』とだけ主張するのは誤解を招く」と述べています。 主張するなら、期間、生分解の程度、必要な周囲の条件を併記すべきで、可能なら「コンポスト適合性(compostability)」という、より具体的な主張にとどめて規格を引用するよう勧めています事実。
| 規格・制度 | 何を定めるか(案内ページの記述) | 注意点 |
|---|---|---|
| ISO 17088:2021 Plastics — Organic recycling — Specifications for compostable plastics | 有機的リサイクルに適したプラスチックの手順と要求。四つの観点:①コンポスト中での崩壊、②究極の好気的生分解、③コンポストの陸生生物への悪影響がないこと、④構成成分の管理 | 「工業的コンポスト工程」への影響を評価するもの。環境中に出たごみ(リター)の生分解の要求は含まない。家庭で行う小規模な生物処理には適用しない |
| ISO 14855-1:2012 好気的生分解度を、管理されたコンポスト条件で、発生する二酸化炭素の分析で求める方法 | プラスチックの究極の好気的生分解度を、発生するCO2量と試験終了時の崩壊度で求める。試験は一般廃棄物の有機分のコンポストを模擬し、温度・通気・湿度を管理 | 試験の条件は人工的に管理されたもの |
| ISO 16929:2021 パイロット規模のコンポスト試験での崩壊度 | パイロット規模の好気的コンポスト試験での崩壊度を求める。ISO 17088の評価体系の一部 | 「好気的生分解度の判定には使えない」と明記 |
| ISO 16636:2025 水環境条件でのプラスチックの崩壊現場試験 | 水中に浮かべた試料の崩壊度を、自然環境(水深1.5〜3 mの水域)で求める方法 | 崩壊試験であって生分解試験ではない。「海洋で生分解性」のような無条件の主張には使えない、と明記 |
| ASTM D6400 好気的コンポスト向けプラスチックの表示の規格 | 都市・工業の好気的コンポスト施設でコンポストされるよう設計されたプラスチックの要求を定める | 案内ページは本稿確認時点で履歴版(より新しい版の可能性) |
| EN 13432 ほか | European Bioplastics が、工業的コンポスト適合の規格として挙げている(ISO 17088、EN 13432/14995、ASTM D6400/6868) | 題名と本文は本稿では確認していない |
| ISO 16620-1:2015/ASTM D6866 | バイオベース含有率の計算(ISO 16620-1)と、放射性炭素分析(ASTM D6866) | 生分解性とは別の性質(原料の由来)を測る(第6章) |
すべて事実(ISO・ASTMの案内ページ[参考資料14〜20]、European Bioplastics[9・11])。規格本文は有料のため、題名と適用範囲の記載にとどめています。
自然環境では、どうなるのか ― Napper と Thompson(2019年)
Napper と Thompson は、生分解性、酸化型生分解性、コンポスト適合、従来のHDPEのレジ袋を、屋外大気中、土中、海水中と管理された実験室条件で3年間追跡しました。結果は次のとおりです事実。
- 海水中:コンポスト適合袋は3か月以内に完全に消失した。
- 土中:同じ袋は27か月後も残っていたが、重さを支えると破れる状態だった。
- 大気中:9か月後には、すべての袋が断片化した。
- 結論:著者らは、どの環境でも3年間で有意な劣化が確実に見られた袋はなかったとし、酸化型生分解性や生分解性の配合が、従来の袋に比べて海洋ごみの削減に十分な利点を持つかは明らかでないとしています。
規則の動き ― EUと日本
- EU:使い捨てプラスチック指令は、酸化型分解性(oxo-degradable)プラスチックを禁止しています。欧州委員会は、「証明された環境上の利点がなく、完全に生分解せず、従来のプラスチックのリサイクルに悪影響を与える」ためとしています事実。
- EU:PPWR第9条は、2028年2月12日までに、特定の包装(第3条1項(1)(f))と果物・野菜の粘着ラベルを、工業的なコンポストの規格に適合させることを定めています。加盟国は、条件が整えば、非常に軽量なレジ袋などをコンポスト可能な包装に限る要求もできます。それ以外の包装は、生分解性プラスチックの包装を含めて、リサイクルを前提に設計する必要があります(第9条3項)事実。第9条6項は、欧州委員会が2026年2月12日までに、家庭コンポスト向けを含む調和規格の作成を欧州標準化機関に要請すると定めていますが、その実施状況は本稿では確認できていません。
- 日本:JBPAは、生分解性プラ、バイオマスプラ、海洋生分解性プラの三つの識別表示制度を運営しています(海洋生分解性の制度は2023年7月開始)。JBPAは、2022年12月23日に消費者庁が生分解性プラスチック製品を製造・販売する10社に措置命令を出したことに関連して、会員企業にお願いを発信していると記しています事実(命令の内容は本稿では未確認)。
- 国際規格:2025年に実海域での崩壊試験法がISO 16636として発行されましたが、規格自身が「崩壊試験であり、生分解の証明には使えない」と明記しています事実。
9. 素材技術者の視点③:生分解は「材料+環境+時間」のシステム特性
欧州委員会の政策枠組みは、次の点を明確にしています事実。
- システム特性:生分解は、「材料に関する要因と環境に関する要因が等しく重要なシステム特性」として考えるべきである。
- 受け入れ先の環境:土中で生分解するプラスチックが、風や流出で河川や海に移ると、分解しない環境に出てしまうことがある。
- 時間:生分解の時間尺度は、生態系や海洋生物(摂食など)に害を与えないほど短い必要がある。
- 試験の限界:生分解の試験は再現性のために人工環境で行われることが多く、自然環境で実際の条件の下で観察する必要がある。海洋での規格づくりは特に難しい。
- 添加剤:生分解性プラスチックの添加剤も生分解すべきである。毒性は従来のプラスチックと同程度の場合があり、添加剤をより速く環境へ放出する可能性が指摘されている。
- 用途:科学顧問団は、環境中で生分解するプラスチックの使用を、削減・再使用・リサイクルが現実的でない特定の用途に限るよう求め、不適切な廃棄物管理やポイ捨ての解決策とは見なすべきでないとした。農業用のマルチフィルムは、適切な規格に適合する場合の適した用途の例とされる。
材料側の設計変数に当てはめると、システム特性の「材料」の項は次のように読めます(本記事による解説)。
- 分子構造:エステル結合の密度、側鎖の長さ、結晶性。結晶部は加水分解や酵素が入りにくく、非晶部から分解が進みやすいと一般に説明されます。
- 形状:肉厚、比表面積。フィルムと厚い成形品では、同じ樹脂でも分解に要する時間が大きく違います。
- 添加剤・ブレンド:可塑剤、フィラー、他樹脂とのブレンドは分解性にも影響します(欧州委員会は添加剤の分解性と開示を求めています)。
だから、「生分解性」の一語で設計を決めてはいけません。 どの環境(工業的コンポスト、家庭コンポスト、土、海、リサイクルの流れ)に行く製品か、それが現実にそこへ届くか、という廃棄物管理の側の条件を同時に設計する必要があります。 欧州委員会が、工業的にコンポスト可能なプラスチックは「環境上の利点が代替品より高く、コンポストの質に悪影響がなく、適合するバイオ廃棄物の回収・処理の仕組みがある場合に限る」としているのは、そのためです事実。
10. 原料(バイオマス)の持続可能性
欧州委員会の政策枠組みは、バイオベースのプラスチックについて「バイオマス原料の生産は、通常、土地・水と、肥料・農薬などの化学物質を必要とし、直接または間接の土地利用変化を通じて、生物多様性の損失、生態系の劣化、森林減少、水不足、食料作物との競合につながりうる」と述べています事実。 同じ文書は、次のように優先順位を示しています事実。
- 有機廃棄物と副産物を優先:一次バイオマスの使用を最小化し、大きな環境影響を避ける。一次バイオマスを使う場合は、環境面で持続可能で、生物多様性を損なわないこと。
- カスケード利用:バイオマスは、付加価値の高い用途に使う。エネルギーより材料(プラスチックを含む)を優先し、短寿命の製品より長寿命の製品を優先する。
- 炭素貯蔵の注意:長寿命でかつ焼却されないバイオベース製品だけが炭素貯蔵の効果を持ちうる。使い捨て包装などの短寿命の製品では、大気から取り込んだ炭素がすぐに放出される。
- LCAの方法論はまだ発展途上:バイオベースと化石由来のプラスチックを比べる方法は「開発中」で、最も調和した方法は欧州委員会共同研究センターの「Plastics LCA method」。生物起源炭素の取り込みと放出の勘定には、さらなる科学的進展が必要としている。
European Bioplastics は、2024年の世界のバイオプラスチック生産能力2.47 Mtは約62.4万ヘクタールに相当し、世界の農地面積(48億ヘクタール)の0.013%だと公表しています事実(業界団体の主張)。公表値から次の関係を確かめます本稿の計算。
- 0.624百万ha ÷ 4,800百万ha = 0.000130 = 0.013%(公表値と一致)
- 2.47 Mt ÷ 0.624百万ha = 約4.0 t/ha(原料から樹脂までの換算を、この数字がどのように置いているかは公表資料から読めない)
前提と限界:面積換算の前提(原料の種類、収量、副産物の扱い)は、公表資料からは詳しく分かりません。 また、これは現在の規模での割合です。欧州委員会の枠組みが懸念するのは、規模が増えた場合や、土地利用変化の質(どこで、どの作物で)であり、この数字はそれを否定するものでも、肯定するものでもありません。
European Bioplastics は、現在のバイオベースプラスチックの原料がトウモロコシ、小麦、テンサイなどの炭水化物に富む作物が中心であり、 今後リグノセルロース(農業副産物・残渣、林業副産物:麦わら、バガス、木材パルプ、樹皮、リグニンなど)やバイオ廃棄物へ広げたいとしています事実。 リグニンについては、Ragauskasらが、バイオ精製の副産物であるリグニンの利用により、低コストの炭素繊維、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性エラストマー、ポリマー発泡体などが可能になると論じています事実(要旨の趣旨。研究・開発の段階の論考)。
素材技術者にとっては、原料の変更は、プロセスと物性の変更を意味します。 副産物・廃棄物由来の原料は、組成のばらつき、不純物(灰分、色、臭い)、供給の安定性という新しい課題を持ち込みます(本記事による解説)。 「持続可能な原料」であることを示す認証(欧州委員会は、REDIIの持続可能性基準に準じることを求めています)と、分子としての品質は、別々に管理する必要があります。
11. 規模の見方と、制度の動き
バイオプラスチックの規模を示す数字は、団体ごとに範囲が違います。公表されている二つを並べます。
本稿の計算前提は図7のとおりで、いずれも公表値の単純な割り算です。
- 世界(EB、2025年):生産1.67 Mt ÷ 生産能力2.31 Mt = 約72%(公表値と一致)。1.67 Mt ÷ 431 Mt = 約0.39%。生産能力で見ると 2.31 ÷ 431 = 約0.54%(公表は「約0.5%」)
- 日本(JBPA、2024年):バイオマスプラスチック 11.86万t + 生分解性プラスチック 8.59万t = 20.45万t(公表値と一致)
- 日本の戦略の目標(2030年までにバイオマスプラスチックを約200万t導入)に対する国内のバイオマスプラスチック市場規模 11.86万t ÷ 200万t = 約5.9%
前提と限界:EBの数字はnova-Instituteと共同で作成された市場データで、生産「能力」と実際の生産は別です(実際は能力の72%)。 JBPAの推計はポジティブリスト登録のプラスチックの量で、各プラスチックのバイオマス度によらず全体の量で計算し、マスバランス方式の割り当てを含みません。 日本政府の目標200万tは「導入」の目標で、JBPAの市場規模とは定義が異なる可能性があります。この5.9%は桁を見るための参考値です。 EBのページ間でも数字は更新・改訂されており(例:別ページには2024年の能力2.47 Mtの記載)、集計の範囲や時点が変わる点に注意が必要です。
日本の設計指針とバイオプラスチック
本シリーズ「プラスチックリサイクル」編で見た、環境省・経産省のプラスチック資源循環促進法の設計指針は、材料の項目の一つとして「バイオプラスチックの利用」を挙げ、 「バイオプラスチック導入ロードマップを踏まえ、バイオマスプラスチックを利用すること、生分解性プラスチックを利用すること」と記載しています事実。 その一方で、同指針は、これらの項目が互いにトレードオフになりうること、製品のライフサイクル全体で環境負荷を評価することを求めています事実(本シリーズ「プラスチックリサイクル」編)。
12. 課題と、本稿で確認できなかったこと
(1) 「バイオ」の語が、二つの性質を混ぜてしまう
欧州委員会は、バイオベース・生分解性・コンポスト適合のプラスチックが「従来のプラスチックより環境に優しい」と広く受け止められている一方で、 全体として環境にプラスになるには満たすべき条件が多いという科学的な証拠が増えていると述べています事実。 材料技術者としては、「植物由来だから」「生分解性だから」という理由だけで、設計や調達の判断を行わないことが出発点です。
(2) 物性・加工と、リサイクルの流れとの関係
PLAのように、既存の汎用樹脂と相溶しない樹脂は、混ざるとリサイクルの流れの品質を下げるおそれがあります(解説)。 PPWR第9条3項は、生分解性プラスチックを含む包装に対し、2028年2月12日までにリサイクルを前提とした設計を求めており事実、分別・回収の仕組みとの整合は今後の課題です。
(3) 本稿で確認できなかったこと
- PLA以外の素材の物性値:PHA(PHB、PHBV、PHBH)、セルロース系、デンプン系、バイオPEなどの具体的な物性値は、グレードの違う値を並べると誤解を招くため載せていません。
- EN 13432などの規格の題名と本文:European Bioplastics が挙げる規格として名前のみ記載し、題名と要求値は未確認です。ASTMの案内ページは履歴版の表示で、より新しい版がある可能性があります。
- コンポスト試験の温度などの数値:ISOの案内ページに数値が記載されていないため載せていません。
- 消費者庁の措置命令の内容:JBPAの記載で存在を確認したのみで、命令の対象や理由は未確認です。
- 各素材のライフサイクルでの環境負荷の比較:欧州委員会が述べるとおり方法論が発展途上のため、本稿では結論を示していません。比較の考え方は本シリーズ「マイクロプラスチックとライフサイクルアセスメント」編で扱います。
- リグニン、セルロース系の実用化の規模:論考・列挙にとどまり、生産実績は確認していません。
確立している点:バイオ由来であることと生分解性であることは別の性質。バイオPE・PETは分子が従来品と同一で、リサイクルの流れに乗せられる。生分解はコンポスト条件や環境条件に依存する。酸化型分解性プラスチックはEUで禁止されている事実。
議論が続いている点:バイオベースのプラスチックの気候影響(LCAの方法論、炭素貯蔵の扱い)、原料の土地利用、マスバランスによるバイオ度の割り当て、環境中での生分解の評価方法(特に海洋)、生分解性プラスチックが廃棄物管理や海洋ごみ対策として有効かどうか。本稿は特定の素材や企業を推奨・非難せず、公的文書と査読論文の記述にとどめています。
- バイオプラスチックは、原料(バイオマス)と終末(生分解)の二軸で読みます。バイオPEは植物由来でも分解せず、PBATは石油由来でも分解します事実。
- PLAは剛くて透明だが、割れやすく熱に弱く、水分と熱履歴に敏感です。Ingeo 2003Dの代表値は、弾性率3.5 GPa、破断伸び6.0%、熱変形温度55 ℃、水分250 ppm未満での加工推奨です事実(メーカー公称)。
- 「バイオ度」は測り方で変わります。エチレングリコール側だけがバイオ由来のPETなら、炭素基準で20%、質量基準で約31%です本稿の計算。
- 生分解は材料と環境と時間のシステム特性です。コンポスト適合の袋は、海水中で3か月以内に消えた一方、土中では27か月後も残りました事実。
- 原料の持続可能性は、副産物・廃棄物の優先、カスケード利用、土地利用変化の回避が論点で、LCAの方法論は発展途上です事実。
13. 用語集
- バイオプラスチック
- バイオマス由来、生分解性、またはその両方のプラスチックの総称(European Bioplastics の定義)。
- バイオベース
- 原料の一部または全部がバイオマス(植物など)に由来すること。
- 生分解
- 微生物が材料を水・二酸化炭素・堆肥などに変える化学的プロセス。環境と時間に依存する。
- コンポスト適合
- 工業的なコンポスト条件で生分解することを、規格で確認されたもの。
- ドロップイン
- 従来品と分子が同一で、既存の設備・用途にそのまま使えるバイオベース樹脂。
- PLA
- ポリ乳酸。乳酸を原料にした脂肪族ポリエステル。
- PHA/PHBH
- 微生物が蓄えるポリエステルの総称/3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体。
- PBAT/PBS
- 生分解性の脂肪族-芳香族ポリエステル(PBAT、化石由来)/ポリブチレンサクシネート。
- 14C法
- 放射性炭素を測って、炭素のうちバイオマス由来の割合を求める方法。
- バイオベース炭素含有率/質量含有率
- 炭素基準の割合/炭素以外の元素も含めた質量基準の割合。同じ材料でも数字が違う。
- システム特性
- 材料と環境条件の双方で決まる性質。欧州委員会は生分解をこう位置づける。
- 酸化型分解性
- 添加剤で断片化を促すプラスチック。生分解とは異なり、EUでは使い捨てプラスチック指令で禁止。
14. 参考資料(一次情報)
- European Bioplastics「Bioplastic materials」 — european-bioplastics.org
- 欧州委員会「EU policy framework on biobased, biodegradable and compostable plastics」COM(2022) 682 final、2022年11月30日 — eur-lex.europa.eu
- NatureWorks「Ingeo Biopolymer 2003D Technical Data Sheet」(PDF) — natureworksllc.com
- Farah, Anderson, Langer “Physical and mechanical properties of PLA, and their functions in widespread applications — A comprehensive review”, Advanced Drug Delivery Reviews 107, 367–392 (2016). DOI 10.1016/j.addr.2016.06.012 — doi.org
- Chen “A microbial polyhydroxyalkanoates (PHA) based bio- and materials industry”, Chemical Society Reviews 38, 2434 (2009). DOI 10.1039/B812677C — doi.org
- Ragauskas ほか “Lignin valorization: improving lignin processing in the biorefinery”, Science 344, 1246843 (2014). DOI 10.1126/science.1246843 — doi.org
- Napper, Thompson “Environmental deterioration of biodegradable, oxo-biodegradable, compostable, and conventional plastic carrier bags in the sea, soil, and open-air over a 3-year period”, Environmental Science & Technology 53, 4775–4783 (2019). DOI 10.1021/acs.est.8b06984 — doi.org
- カネカ「カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®」 — kaneka.co.jp
- European Bioplastics「What are bioplastics?」 — european-bioplastics.org
- European Bioplastics「Biobased plastics」 — european-bioplastics.org
- European Bioplastics「Biodegradable plastics」 — european-bioplastics.org
- European Bioplastics「Renewable feedstock」 — european-bioplastics.org
- European Bioplastics「Market」(Bioplastics market development update 2025、nova-Instituteと共同で作成) — european-bioplastics.org
- ISO ISO 17088:2021 “Plastics — Organic recycling — Specifications for compostable plastics” — iso.org
- ISO ISO 14855-1:2012 “Determination of the ultimate aerobic biodegradability of plastic materials under controlled composting conditions — Method by analysis of evolved carbon dioxide — Part 1: General method” — iso.org
- ISO ISO 16929:2021 “Plastics — Determination of the degree of disintegration of plastic materials under defined composting conditions in a pilot-scale test” — iso.org
- ISO ISO 16636:2025 “Plastics — Disintegration field test of plastics under water environmental conditions” — iso.org
- ISO ISO 16620-1:2015 “Plastics — Biobased content — Part 1: General principles” — iso.org
- ASTM International ASTM D6866 “Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Solid, Liquid, and Gaseous Samples Using Radiocarbon Analysis” — store.astm.org
- ASTM International ASTM D6400 “Standard Specification for Labeling of Plastics Designed to be Aerobically Composted in Municipal or Industrial Facilities” — store.astm.org
- 欧州議会・理事会規則(EU)2025/40「包装及び包装廃棄物に関する規則」(第9条 堆肥化可能な包装) — eur-lex.europa.eu
- 日本バイオプラスチック協会(JBPA)トップページ(国内市場の推計値、識別表示制度、ISO 16636の発行、措置命令に関する案内) — jbpaweb.net
- 経済産業省・環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律について」(パンフレット、PDF。プラスチック資源循環戦略のマイルストーン、設計指針を含む) — plastic-circulation.env.go.jp
15. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| バイオプラスチックを「バイオベース、生分解性、または両方の性質を持つプラスチック」とする定義。バイオベースは「バイオマスに(一部)由来」、生分解は「環境中の微生物が材料を水・CO2・堆肥などの天然物質に変える化学プロセス」 | European Bioplastics「What are bioplastics?」[参考資料 9]https://www.european-bioplastics.org/bioplastics/ | 事実 |
| 三つの主なグループ(バイオベースで非生分解:バイオPE・PP・PETとPTT・TPC-ET/バイオベースかつ生分解性:PLA・PHA・PBS/化石由来で生分解性:PBAT)。バイオベースのPE・PP・PET・PVCが従来品と同一の性質で、既存の流れで機械的リサイクルできること。PLA・PHA・セルロース・デンプン系が新しい機能(コンポスト適合、場合により改善したバリア性)を持つ例として挙げられていること | European Bioplastics「Bioplastic materials」[参考資料 1]https://www.european-bioplastics.org/bioplastics/materials/ | 事実 |
| COM(2022) 682 final(2022年11月30日)の記述:バイオベースにも生分解するもの・しないものがあり、生分解性にもバイオベースと化石由来があること。コンポスト適合が生分解性のサブセットであること。工業的コンポスト向けの欧州規格はあるが家庭コンポスト向けはないこと。生分解を「システム特性」とすること。受け入れ環境の移動、時間尺度、試験の人工環境と自然環境での観察の必要、海洋の規格の難しさ、添加剤の毒性・放出、科学顧問団の意見(特定の用途に限る、不適切な廃棄物管理の解決策ではない)、ラベル表示の要件。酸化型分解性プラスチックの禁止。工業的コンポスト可能なプラスチックの用途条件。バイオマス原料の土地利用リスク、有機廃棄物・副産物の優先、カスケード利用、REDII基準、LCA方法論が発展途上でPlastics LCA methodがあること、短寿命製品の炭素の再放出。バイオベース含有率について、放射性炭素法の優先、マスバランスの慎重な扱い、一般的な主張の禁止、義務的な最低含有率や統一認証がないこと | 欧州委員会 COM(2022) 682 final[参考資料 2]https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:52022DC0682 | 事実 |
| Ingeo 2003Dの代表値(比重1.24、MFR 6 g/10 min(210 ℃・2.16 kg)、融点140〜155 ℃、引張降伏強さ60 MPa、引張弾性率3.5 GPa、破断伸び6.0%、ノッチ付きアイゾット16 J/m、熱変形温度55 ℃)と試験法。水分0.025%(250 ppm)未満の推奨、90 ℃・2時間(結晶化ペレット)、露点−40 ℃、再粉砕品は先に結晶化、広い範囲の汎用樹脂と非相溶でPSまたはPPでのパージ、アセトアルデヒドが主な熱分解生成物、175 ℃で24時間超の滞留で顕著な分解、「代表値であり仕様ではない」 | NatureWorks Ingeo 2003D 技術データシート[参考資料 3]https://natureworksllc.com/getContentAsset/c6e20928-e3c4-4cc7-b47a-75e57eb9fd27/53ffd608-340f-457b-b656-6b8cc0000bd4/TechnicalDataSheet_2003D_FFP-FSW.pdf?language=en | 事実 |
| PLAのレビューの趣旨(物理的・機械的性質、安定性・加工性・劣化・非相溶性・老化・リサイクル性、改善策:ブレンド、核剤、変性、ナノ複合化) | Farah ほか(2016年)要旨[参考資料 4]https://doi.org/10.1016/j.addr.2016.06.012 | 事実 |
| PHAが細菌が作るバイオポリエステルで、バイオプラスチック等に応用され、発酵・材料・エネルギー・医療にまたがる産業のバリューチェーンを形成していること | Chen(2009年)要旨[参考資料 5]https://doi.org/10.1039/B812677C | 事実 |
| リグニンの利用により、低コストの炭素繊維、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性エラストマー、ポリマー発泡体などが可能になると論じていること | Ragauskas ほか(2014年)要旨[参考資料 6]https://doi.org/10.1126/science.1246843 | 事実 |
| 3年間の実験の結果(海水中でコンポスト適合袋が3か月以内に消失、土中で27か月後も残り荷重で破れる、大気中で9か月後に断片化、3年間で有意な劣化が確実に見られた袋はなかった、利点は明らかでない) | Napper, Thompson(2019年)要旨[参考資料 7]https://doi.org/10.1021/acs.est.8b06984 | 事実 |
| カネカ Green Planet®(PHBH):3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体、植物油などを原料に微生物で生産、世界で初めて大量生産に成功したとする説明、海水中でも生分解するとする説明、2017年「OK Biodegradable MARINE」認証(一部グレード)、2019年にEU全食品接触用途で使用可能、「海水温などの環境により速度は異なる」「社内データで保証ではない」、採用例、2022年2月の大型能力増強決定 | カネカ Green Planet® 紹介ページ[参考資料 8]https://www.kaneka.co.jp/solutions/phbh/ | 事実 |
| バイオベース炭素含有率とバイオベース質量含有率の単位の違いと比較時の注意、14C法(CEN/TS 16137、ASTM D6866)、質量ベースの方法が補完的であること | European Bioplastics「Biobased plastics」[参考資料 10]https://www.european-bioplastics.org/bioplastics/materials/biobased/ | 事実 |
| 生分解性は資源の由来に依存せず化学構造に直結すること。規格の裏づけなしの「生分解性」の主張は誤解を招くこと、期間・程度・条件を併記すべきこと、コンポスト適合に絞り規格(ISO 17088、EN 13432/14995、ASTM D6400/6868)を引用するよう勧めていること。酸化型分解性は断片化であり生分解ではないこと | European Bioplastics「Biodegradable plastics」[参考資料 11]https://www.european-bioplastics.org/bioplastics/materials/biodegradable/ | 事実 |
| 原料の例(トウモロコシ、小麦、テンサイ。リグノセルロース、林業副産物、リグニン、バイオ廃棄物)。2024年の世界の生産能力2.47 Mtが約0.624百万ヘクタールで、世界の農地48億ヘクタールの0.013%であるという主張 | European Bioplastics「Renewable feedstock」[参考資料 12]https://www.european-bioplastics.org/bioplastics/feedstock/ | 事実 |
| 2025年の生産能力2.31 Mt、生産1.67 Mt(能力の72%)、世界のプラスチック生産量431 Mt(2024年、Plastics Europe)の約0.5%、nova-Instituteとの共同作成 | European Bioplastics「Market」[参考資料 13]https://www.european-bioplastics.org/market/ | 事実 |
| ISO 17088:2021 の題名・適用範囲(四つの観点、家庭の小規模処理は対象外、リター環境の生分解性の要求は扱わない) | ISO 17088:2021 の案内ページ[参考資料 14]https://www.iso.org/standard/74994.html | 事実 |
| ISO 14855-1:2012 の題名・適用範囲(CO2発生量と崩壊度、一般廃棄物の有機分のコンポストを模擬) | ISO 14855-1:2012 の案内ページ[参考資料 15]https://www.iso.org/standard/57902.html | 事実 |
| ISO 16929:2021 の題名・適用範囲(パイロット規模の崩壊度、ISO 17088の一部、生分解度の判定には使えない) | ISO 16929:2021 の案内ページ[参考資料 16]https://www.iso.org/standard/80302.html | 事実 |
| ISO 16636:2025 の題名・適用範囲(水深1.5〜3 mの現場崩壊試験、生分解試験ではなく「海洋で生分解性」の主張に使えない)、2025年4月発行 | ISO 16636:2025 の案内ページ[参考資料 17]https://www.iso.org/standard/84746.html | 事実 |
| ISO 16620-1:2015 の題名・適用範囲(炭素質量または各構成要素の質量に基づくバイオベース含有率の計算法) | ISO 16620-1:2015 の案内ページ[参考資料 18]https://www.iso.org/standard/63766.html | 事実 |
| ASTM D6866 の題名(放射性炭素分析によるバイオベース含有率の標準試験法)。案内ページは履歴版表示 | ASTM D6866 の案内ページ[参考資料 19]https://store.astm.org/d6866-24.html | 事実 |
| ASTM D6400 の題名・範囲(都市・工業の好気的コンポスト施設でコンポストされるよう設計されたプラスチックの表示の規格)。案内ページは履歴版表示 | ASTM D6400 の案内ページ[参考資料 20]https://store.astm.org/d6400-23.html | 事実 |
| PPWR第9条(2028年2月12日までの、特定の包装と果物・野菜の粘着ラベルの工業的コンポスト規格への適合、加盟国による軽量レジ袋等の要求、その他の包装は生分解性プラスチックを含めリサイクル設計、2026年2月12日までの調和規格の要請) | 規則(EU)2025/40[参考資料 21]https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng | 事実 |
| JBPAの国内市場推計(2024年20.45万t、バイオマスプラ11.86万t、生分解性8.59万t、うちバイオマス成分を含むもの1.59万t、ポジティブリスト登録品が対象、マスバランスの割り当てを含まない)。三つの識別表示制度、海洋生分解性の制度の2023年7月開始、ISO 16636の発行、2022年12月23日の消費者庁の措置命令(対象10社)への言及 | 日本バイオプラスチック協会 トップページ[参考資料 22]https://www.jbpaweb.net/ | 事実 |
| プラスチック資源循環戦略のマイルストーン(2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入)。設計指針の「バイオプラスチックの利用」の項目(バイオマスプラスチックの利用、生分解性プラスチックの利用)とトレードオフへの言及 | 経済産業省・環境省 パンフレット[参考資料 23]https://plastic-circulation.env.go.jp/wp-content/themes/plastic/assets/pdf/pamphlet.pdf | 事実 |
| 日本政府の「2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入」の目標。PPWR第9条の2028年2月12日の期限 | 政府の目標、および法令上の期限であり、実績ではない[参考資料 23]https://plastic-circulation.env.go.jp/wp-content/themes/plastic/assets/pdf/pamphlet.pdf | 未確定/将来 |
| PLA 25 kg袋あたり6.25 g、1 tあたり250 g。PETの繰り返し単位の質量(C=12.011、H=1.008、O=15.999から132.12、60.05、192.17)とバイオ炭素20%、質量約31%(エチレングリコール側だけがバイオ由来と仮定)。0.624百万ha÷4,800百万ha=0.013%、2.47 Mt÷0.624百万ha=約4.0 t/ha。1.67÷2.31=約72%、1.67÷431=約0.39%、2.31÷431=約0.54%、11.86万t÷200万t=約5.9% | 本稿の計算。いずれも公表値または原子量にもとづく単純計算。PETの例は仮定であり実在の製品の公表値ではない。土地利用の換算の前提は公表資料から読み取れない。JBPAの市場規模と政府目標の定義は異なる可能性がある | 本稿の計算 |
| PLAのエステル結合の加水分解、PETの加工知識との類似、PHAの共重合による結晶性の制御、バイオPEの製法と分子の同一性、生分解性の分子構造的な要因(エステル結合、結晶性、側鎖、肉厚、比表面積)、原料変更に伴うプロセスと物性の課題、混ざり物のリサイクル品質への影響 | 高分子化学と材料設計に関する一般的な説明、および公表内容にもとづく本記事の整理。各機関・各社が表明した見解ではない | 解説 |
| PLA以外の素材の物性値、EN 13432などの題名と本文、コンポスト試験の温度などの数値、消費者庁の措置命令の内容、素材別のLCA比較、リグニン・セルロース系の実用化規模 | 本稿の調査範囲では公開された一次情報で確認できなかった、または有料・範囲外のため記載していない | 解説 |
| 図1・図2・図4・図5・図6・図7が実際の測定データの原図・製品図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図3がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月2日/出典は一次情報(欧州委員会の政策文書・法令、業界団体の公表、規格団体の案内ページ、メーカーの技術資料と公表、査読論文)に限定しています。調査会社の市場推計は使っていません。 物性値はメーカー公称の代表値であり、グレードの違う値を並べて優劣を論じていません。環境への影響は規制当局と査読論文の記述にもとづき、確立した点と議論中の点を分けて書いています。特定の素材や企業を推奨・非難するものではありません。 PLA以外の素材の物性値、EN 13432などの規格の本文、コンポスト試験の数値、消費者庁の措置命令の内容、素材別のLCA比較については、確認できなかったため記載していません。 図1・図2・図4〜図7はベクター作図、ヒーロー画像と図3はAI生成イメージであり、いずれも実際の製品・測定データ・分解の進行を示すものではありません。