光誘起相転移の”揺りかご”を発見:次世代光デバイスへ道

概要
日本の科学者たちは、光によって材料全体の状態を切り替えられる「光誘起相転移」を開始する量子力学的プロセスを解明した。この発見は、光メモリや書き換え可能な光スイッチングデバイスといった次世代光デバイスおよび量子機能材料の開発に大きく貢献する。コバルトと鉄をドープしたマンガン窒化物において、室温での光照射により電子移動が引き起こされ、不可逆的な磁気的・色的変化が観測された。逆ヤーン・テラー歪み、電荷移動、電荷移動ポラロンの形成という迅速なイベントシーケンスが特定され、特に電荷移動ポラロンが相転移を引き起こす内部圧力源「揺りかご」として機能することが明らかにされた。
詳細

背景:光誘起相転移の謎と応用可能性

光誘起相転移とは、光の照射によって物質の物理的状態(例えば、磁性、電気伝導性、結晶構造、色など)が劇的に変化する現象を指します。この現象は、光で情報を記録・消去する光メモリや、光で電気的特性を制御する光スイッチングデバイスなど、次世代の光エレクトロニクスデバイスや量子機能材料への応用が期待されています。しかし、これまでそのミクロな起源や、光励起からマクロな相転移に至るまでの初期ダイナミクスについては、詳細なメカニズムが不明な点が多かったのが実情です。

光誘起相転移の「揺りかご」の発見

日本の科学者たちは、コバルトと鉄をドープしたマンガン窒化物材料を用いて、この光誘起相転移の初期量子力学的プロセスを詳細に解明することに成功しました。室温での光照射により、材料中の金属イオン間で電子移動が引き起こされ、それによって不可逆的な磁性の変化と色の変化が観測されました。研究チームは、超高速分光技術を駆使し、光励起後の極めて短い時間スケールで発生する一連のイベントシーケンスを特定しました。

  • 50フェムト秒以内に逆ヤーン・テラー歪みが発生。
  • 190フェムト秒後にFe2+からMn3+への電荷移動が起こる。
  • 2.1ピコ秒後に電荷移動ポラロンが形成される。

特に重要な発見は、この「電荷移動ポラロン」が、相転移の引き金となる内部圧力を発揮する「揺りかご(cradle)」として機能することです。このポラロンが、結晶全体にわたる連鎖的な電子移動を開始させ、最終的に材料全体での相転移へと発展させることが明らかにされました。

影響と将来展望

光励起からマクロな相転移に至るまでの時間分解されたプロセスの解明は、先進フォトニクスおよび量子技術における材料設計指針にとって極めて重要な洞察を提供します。この発見は、単に学術的な成果に留まらず、より高速で効率的な光メモリ、光スイッチングデバイス、さらには新たな量子機能材料の開発を加速させるための基盤となるでしょう。光エネルギーを効率的に利用した次世代デバイスの創出に向けた大きな一歩と言えます。

元記事: https://sj.jst.go.jp/news/202605/n0501-01k.html

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次