AI/HPCデータセンターにおける光相互接続の課題
AI(人工知能)およびHPC(高性能コンピューティング)データセンターでは、膨大なデータを高速で処理する必要があるため、光相互接続は極めて重要な役割を担っています。しかし、従来の直接変調型VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)送信機は、その性能において限界に直面しています。特に、次世代の高性能データセンターファブリックにおいては、レーンあたりのシンボルレートを継続的にスケーリングしていく必要がありますが、これは従来の直流直接変調方式の物理的限界を超えつつあります。
この限界は、主にVCSELの変調速度と光出力特性のトレードオフ、そしてチャープ(周波数変調)特性に起因します。データレートが向上するにつれて、信号品質の劣化が顕著になり、伝送距離や信頼性に悪影響を及ぼすことが課題となっています。したがって、より高いデータ転送速度と優れた信号整合性を短距離光相互接続で実現するためには、革新的な変調技術が求められています。
VCSEL-EAM送信機の開発と技術的進歩
2026年4月に発行された『Photonics』誌に掲載された研究では、この課題を克服するため、横方向統合型VCSEL-電気吸収変調器(EAM)送信機の開発と実証に成功したと報じられています。EAMは、印加電圧によって光吸収特性を変化させることで光強度を変調するデバイスであり、VCSELと集積化することで、高い消光比と低チャープ特性を持つ高速な光信号生成が可能になります。
この統合型EAM送信機は、従来のVCSELの持つ本質的な制限を克服し、より高いデータ転送レートと優れた信号整合性を実現するものです。具体的には、EAMを使用することで、VCSELの変調特性に依存せずに、独立して高速変調が可能となり、結果としてより高品質な光信号を生成できます。このような技術的進歩は、次世代のAIおよびHPCインフラストラクチャにおける帯域幅要求と電力効率要件を満たす上で不可欠です。
今後の展望とAIワークロードへの影響
VCSEL-EAM送信機のような先進的な技術は、AIワークロードの指数関数的な成長をサポートし、データセンターの能力を持続的に進化させるために不可欠です。短距離光相互接続におけるこの技術の導入は、データセンター内のサーバーラック間やチップ間の通信ボトルネックを解消し、システム全体の性能向上に貢献します。将来的に、このような光変調技術は、AIアクセラレータのコパッケージドオプティクス(CPO)など、より高度な光集積技術と組み合わされることで、AIシステムの処理能力をさらに飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

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