主要成果
第一三共とアストラゼネカは、HER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるEnhertu(トラスツズマブ デルクステカン)とpertuzumab(パージェタ)の併用療法が、欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)より、HER2陽性転移性乳がんの初回治療薬として承認勧告を受けたことを発表しました。この肯定的な勧告は、DESTINY-Breast09第III相臨床試験で示された画期的な結果に基づいています。同試験では、この併用療法が標準治療と比較して病勢進行または死亡のリスクを44%低減し、無増悪生存期間(PFS)の中央値が3年を超えるという優れた効果を示しました。
技術・臨床詳細
Enhertuは、HER2を標的とするDXd抗体薬物複合体であり、がん細胞のHER2受容体に結合した後、細胞内でDNAトポイソメラーゼI阻害剤であるDXd(デキストルカン)を放出することで、がん細胞の増殖を阻害し、アポトーシスを誘導します。pertuzumabは、HER2二量体化を阻害する抗体であり、Enhertuと併用することで、HER2シグナル伝達をより強力に遮断し、抗腫瘍効果を増強すると考えられています。DESTINY-Breast09試験は、未治療のHER2陽性転移性乳がん患者を対象とした大規模な第III相ランダム化比較試験です。この試験において、Enhertuとpertuzumabの併用療法群は、標準的なHER2標的治療(トラスツズマブとタキサン系薬剤の併用など)と比較して、PFSにおいて統計的かつ臨床的に有意な改善を示しました。中央値PFSが3年を超えるという結果は、HER2陽性転移性乳がんの初回治療における新たな治療パラダイムを確立する可能性を示唆しています。
背景・業界文脈
HER2陽性乳がんは、全乳がんの約15〜20%を占め、HER2タンパク質が過剰発現していることでがん細胞の増殖が促進されます。このタイプのがんは、HER2を標的とする薬剤の登場により予後が改善されましたが、転移性乳がんの初回治療においては、さらなる効果向上と生存期間の延長が求められています。Enhertuは、その高い有効性により既に様々な適応で承認されていますが、初回治療としての承認勧告は、より早期の段階からその優れた効果を患者に提供できることを意味し、HER2陽性乳がん治療の標準をさらに高めるものとなります。第一三共とアストラゼネカの協業は、ADC技術の進化と、がん治療におけるアンメットメディカルニーズへの対応を象徴しています。
今後の展望
CHMPの承認勧告は、欧州委員会による最終的な承認への重要な一歩です。この併用療法が欧州で承認されれば、HER2陽性転移性乳がんの初回治療において、患者に新たな強力な治療選択肢を提供することになります。これにより、患者の無増悪生存期間が延長され、生活の質の向上が期待されます。今後、この併用療法の長期的な全生存期間データや、異なる患者集団での有効性と安全性に関するさらなる研究が注目されます。Enhertuを中心としたADC技術の進化は、今後もがん治療の進歩を牽引し、より効果的で個別化された治療法の開発に貢献するでしょう。
元記事: https://www.daiichisankyo.com/files/news/pressrelease/pdf/202607/20260724_E.pdf
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