剥離フリー多機能複合材の開発:熱界面材料におけるEMIシールドと電気絶縁性を両立

概要
本論文は、剥離フリーでサンドイッチ構造を持つ窒化ホウ素(BN)/グラフェンナノプレートレット(GNP)/ポリジメチルシロキサン(PDMS)複合材の拡張可能な製造戦略を提示する。この複合材は、柔軟で高出力の電子デバイス向けに効率的な放熱、強力な電磁干渉(EMI)シールド、信頼性の高い電気絶縁性を提供する多機能熱界面材料(TIM)を目指し、多層構造における界面剥離の課題に対応する。最適化されたMIL複合材は、Xバンドで34 dBのEMIシールド効果、1.10 W·m–1·K–1の熱伝導率、2.35 × 1013 Ω·cmの体積抵抗率を示した。
詳細

背景:高機能電子デバイスにおける複合的な課題

高性能化、小型化、そして柔軟化が進む現代の電子デバイス、特に高出力のAIチップやウェアラブルデバイスでは、複数の複雑な課題が同時に発生しています。一つは、デバイスの動作によって発生する膨大な熱を効率的に外部へ排出するための「高熱伝導性」。二つ目は、電子回路から発生する電磁波が周囲の機器に干渉したり、外部からの電磁波がデバイスに悪影響を与えたりするのを防ぐための「電磁干渉(EMI)シールド」。三つ目は、内部回路の短絡を防ぎ、安全性を確保するための「電気絶縁性」です。これらの機能を単一の材料で、しかも多層構造において界面剥離なく実現することは、非常に困難な課題とされてきました。特に、柔軟性を要求されるデバイスでは、多層界面の安定性が製品の寿命と信頼性に直結します。

主要内容:剥離フリー多機能複合材の開発

本論文では、これらの複合的な課題を解決するため、剥離フリーのサンドイッチ構造を持つ新しい多機能複合材の製造戦略が提示されています。この複合材は、窒化ホウ素(BN)/グラフェンナノプレートレット(GNP)/ポリジメチルシロキサン(PDMS)を基盤としており、熱界面材料(TIM)として、優れた放熱性、強力なEMIシールド効果、そして信頼性の高い電気絶縁性を同時に実現することを目指しています。

製造戦略:

この複合材の鍵となるのは、層間の強力な接着を界面剥離なく実現する「メカニカルインターロッキング(MIL: Mechanical Interlocking)」アーキテクチャです。製造プロセスは、以下のステップで構成されます。

  1. シュガーテンプレーティング:まず、砂糖を犠牲テンプレートとして用いて多孔質構造を形成します。
  2. 層ごとのキャスティングと真空含浸:多孔質なBN/PDMS層とGNP/PDMS層を層ごとにキャスティングし、PDMSポリマーを真空含浸させることで、層間の機械的インターロッキング構造を形成します。このプロセスにより、従来の表面機能化やホットプレスといった複雑な工程なしに、強固な層間接着が実現されます。

最適化された複合材(M-BN25/GNP30)の性能:

最適化されたMIL複合材は、以下のような優れた多機能性を示しました。

  • EMIシールド効果:Xバンドにおいて34 dBという高いEMIシールド効果を達成。これは、デバイス内部からの電磁ノイズ漏洩を大幅に抑制し、外部からの干渉から保護するのに十分な性能です。
  • 熱伝導率:厚み方向(through-plane)で1.10 W·m–1·K–1の熱伝導率を示しました。これは、効果的な放熱を可能にし、デバイスの過熱を防ぎます。
  • 体積抵抗率:2.35 × 1013 Ω·cmという高い体積抵抗率を達成。これにより、信頼性の高い電気絶縁性が確保され、回路の短絡リスクが低減されます。
  • 機械的信頼性:このMIL複合材は、10,000回の曲げサイクルおよび1,000回の熱サイクル後も、剥離することなく機械的完全性と機能的性能を維持しました。これは、柔軟なデバイスや長寿命が求められるアプリケーションにおいて極めて重要な特性です。

影響と展望:次世代電子デバイス設計への貢献

本研究で開発された剥離フリー多機能複合材は、次世代の柔軟で高出力の電子デバイスの設計と製造に大きな影響を与える可能性があります。

  • デバイス性能の向上:効率的な放熱、強力なEMIシールド、そして信頼性の高い電気絶縁性を単一の材料で実現できるため、デバイスの性能向上、小型化、そして長期信頼性に貢献します。
  • 製造プロセスの簡素化:複雑な表面処理やホットプレスが不要な製造戦略は、生産コストの削減と量産性の向上に寄与します。
  • 応用分野の拡大:ウェアラブルデバイス、フレキシブルディスプレイ、IoTセンサー、そして高出力半導体パッケージなど、多様な分野での応用が期待されます。特に、厳しい環境下での使用や、長期的な信頼性が求められるアプリケーションにおいて、その価値は大きいでしょう。

接着・封止材の進化は、単なる材料としての機能を超え、デバイス全体の設計概念を変革する可能性を秘めており、このような多機能複合材の研究は、その最前線を示しています。

元記事: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsanm.6c00430

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