主要成果
中国科学院(CAS)の研究者チームは、ビス(2-ピリジルメチル)スルフィド(2PyS)を基盤とした配位工学を導入することで、29.71%という高い光電変換効率(PCE)を持つ四端子ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池の開発に成功しました。この革新的なアプローチは、ワイドバンドギャップ(WBG)ペロブスカイト太陽電池の安定性を飛躍的に向上させ、欠陥形成、ハロゲン化物移動、および相分離といった主要な劣化メカニズムを効果的に抑制します。
技術・臨床詳細
この四端子タンデム太陽電池は、上層のペロブスカイト太陽電池と下層のCIGS(銅インジウムガリウムセレン)太陽電池がそれぞれ独立して動作し、電気的に分離されているため、各セルの電流を個別に最適化できる利点があります。研究の核心は、2PyS配位子を用いることで、WBGペロブスカイトの安定性を高めた点にあります。2PySはペロブスカイト結晶表面の欠陥を効果的にパッシベーションし、イオン(特にハロゲン化物イオン)の移動を抑制します。これにより、光照射下や熱ストレス下で発生しがちな相分離が大幅に抑制され、高効率と長期安定性の両立が可能となりました。CIGSは確立された薄膜技術であり、これとペロブスカイトを組み合わせることで、両者のスペクトル吸収特性を最大限に活用し、従来の単一接合太陽電池の効率限界を突破することを目指しています。
背景・業界文脈
太陽光発電は主要な再生可能エネルギー源ですが、さらなる普及には高効率化と長期信頼性の向上が不可欠です。ペロブスカイト太陽電池は、その高い光電変換効率と低コストでの製造可能性から「次世代」と期待されていますが、特にWBGペロブスカイトの安定性、特にハロゲン化物混合系の相分離は、タンデム応用における大きな課題でした。CIGSのような成熟した薄膜技術とペロブスカイトの組み合わせは、既存の技術基盤を活用しつつ、高効率化を実現する有望なアプローチです。この研究は、材料工学的なアプローチでペロブスカイトの不安定性を克服し、実用化を加速させるものとして注目されます。
今後の展望
29.71%という高効率と向上した安定性を持つこのペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池の成功は、次世代薄膜太陽電池の商業化を加速させるでしょう。四端子構造は、部分陰影耐性や異なるスペクトル条件への適応性において有利であり、ビル統合型太陽光発電(BIPV)、ポータブルデバイス、フレキシブル太陽電池など、幅広い用途での採用が期待されます。今後、大面積化における製造スケーラビリティの検証、コスト最適化、そして国際的な耐久性基準への適合が、市場導入に向けた主要な焦点となります。この技術は、高効率と信頼性を両立させながら、太陽光発電の新たなフロンティアを切り拓く可能性を秘めています。
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