産総研、酸化物系固体電解質のイオン伝導率向上で全固体電池ブレークスルーの可能性

公開日 2026年03月13日

目次

概要

産業技術総合研究所(産総研)は、次世代の「全固体電池」の心臓部となる、新しい「酸化物系固体電解質」を開発しました。これまで酸化物系は「安全だけど電気が通りにくい(イオンが動きにくい)」のが弱点でしたが、今回の研究で、従来の液体タイプの電池に匹敵するほどの高い伝導率(イオンの動きやすさ)を達成。これにより、燃えにくくて超高速充電ができる夢の電池の実現に大きく近づきました。

詳細

全固体電池と「酸化物」の課題

現在のスマホや電気自動車(EV)に使われているリチウムイオン電池は、中に燃えやすい液体(電解液)が入っています。これを固体の材料に変えたのが「全固体電池」です。中でも「酸化物系(セラミックスのような材料)」は、熱に強く、空気に触れても有害ガスが出ないため非常に安全です。しかし、固体の中をイオンが移動するのは難しく、液体の電池に比べてパワーが出にくいという大きな壁がありました。

「パイロクロア型」と特殊な焼き方で壁を突破

産総研のチームは、日本で見つかった「パイロクロア型」という特殊な結晶構造を持つ材料に注目しました。さらに、「通電焼結(SPS)」という、電気を流しながら一気に焼き固める最新技術を使い、材料を隙間なくぎっしりと詰め込むことに成功(理論密度の98%まで緻密化)。これにより、リチウムイオンがスイスイ動ける「高速道路」のような構造が出来上がり、酸化物系としては世界最高レベルのイオン伝導率(15 mS/cm)を記録しました。

  • 液体の電池と同等: これまで難しかった「液体並みの速さ」でイオンが動けます。
  • 寒さにも強い: 氷点下のような低温環境でも性能が落ちにくいことが確認されました。
  • 究極の安全性: 燃えない・漏れない・壊れにくい電池が作れます。

私たちの生活はどう変わる?

この技術が実用化されると、電気自動車の充電が数分で終わるようになったり、一度の充電で走れる距離が大幅に伸びたりすることが期待されます。また、ドローンや宇宙空間、医療機器など、絶対に燃えてはいけない場所での電池利用がさらに広がります。産総研は今後、この新しい材料を使った電池そのものの設計を進め、数年以内の実用化を目指すとしています。

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