概要
昭和医科大学統括がん情報センターは、難治性固形がんを標的とする2つのCAR-T療法戦略を発表しました。一つは、腫瘍細胞と支援間質細胞に共通するuPARを標的とする「二刀流」uPAR CAR-T療法で、広範囲な固形がんの克服を目指します。もう一つは、CD40アゴニストを用いて免疫抑制性制御性T細胞(Treg)を攻撃側に転換させることで、腫瘍微小環境を改善するアプローチです。これらの戦略は、固形がんCAR-Tの主要な障壁を克服し、難治性固形がん治療に新たな道を開く可能性を秘めています。
詳細
背景
CAR-T細胞療法は血液がんにおいて目覚ましい成果を上げていますが、固形がんにおいては、その治療効果が限定的であるという課題に直面しています。これは主に、固形がんの複雑な腫瘍微小環境、腫瘍細胞の抗原不均一性、そして免疫抑制性細胞の存在に起因します。これらの障壁を乗り越え、難治性固形がんに対するCAR-T療法の有効性を高める新たな戦略が強く求められています。
主要内容
昭和医科大学統括がん情報センターは、難治性固形がんを攻略するための二つの革新的なCAR-T細胞療法戦略を発表しました。これらの戦略は、従来のCAR-T療法が直面していた課題を克服することを目指しています。
- 「二刀流」uPAR CAR-T療法: このアプローチは、腫瘍細胞と同時に、がんの成長を支援する間質細胞の両方に共通して高発現する「uPAR(ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体)」という分子を標的とします。uPARは、TP53・RAS経路変異を持つ肺がん、膵がん、肉腫など、広範な固形がんで広く発現していることが示され、腫瘍エコシステム全体を標的とすることで、抗原不均一性の問題を克服しようとするものです。マウスモデルを用いた研究では、このuPAR CAR-Tが腫瘍本体と支援間質を同時に攻撃し、全身転移した病巣に対しても強力な抗腫瘍活性を示すことが実証されました。
- CD40アゴニストによる制御性T細胞(Treg)転換: もう一つの戦略は、腫瘍微小環境における免疫抑制性の主要因である制御性T細胞(Treg)の機能を逆転させることを目的としています。CD40アゴニストを併用することで、Tregを攻撃性の免疫細胞へと転換させ、免疫抑制環境を打破します。このアプローチは、膵がんのような免疫チェックポイント阻害剤が効きにくい難治がんにおいて、自己免疫毒性のリスクを伴わずに治療効果を高める可能性を秘めています。
影響と展望
これらの新戦略は、固形がんCAR-T療法の大きな障壁であった「抗原不均一性」と「免疫抑制的な腫瘍微小環境」という二つの課題を同時に解決する可能性を秘めています。uPARを標的とすることで、多様ながん細胞に対して広範な効果が期待でき、また間質細胞への攻撃は腫瘍の兵站を断つことに繋がります。
Tregを攻撃側に転換させるアプローチは、免疫療法をさらに強力なものにし、既存の免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果も期待できます。昭和医科大学の研究は、難治性固形がんの治療パラダイムを根本的に変革し、多くの患者に新たな希望をもたらす潜在力を持っています。これらの研究は、個別化医療の進展にも寄与し、将来的には多様な固形がん患者の予後改善に繋がることが期待され、今後のさらなる研究と臨床開発の進展が切望されています。
元記事: https://www10.showa-u.ac.jp/~sccc/cancer_immuno_site_20260413.html

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