ハーバード大学医学部スチュアート・オーキン教授、2026年ブレークスルー・プライズ受賞

概要
ハーバード大学医学部のスチュアート・オーキン教授が、2026年生命科学ブレークスルー・プライズを受賞した。同教授は、胎児ヘモグロビンから成人ヘモグロビンへのスイッチメカニズム解明と、鎌状赤血球症およびベータサラセミアの治療標的としての検証により評価された。彼の研究は、2024年にFDA承認された世界初のCRISPRベース遺伝子治療薬Casgevyの開発に繋がり、これらの遺伝性血液疾患の治療に革命をもたらした。
詳細

背景:遺伝性血液疾患への挑戦

鎌状赤血球症とベータサラセミアは、世界中で何百万人もの人々が罹患する深刻な遺伝性血液疾患です。これらの疾患は、赤血球の異常やヘモグロビンの欠陥により、貧血、臓器損傷、重度の疼痛発作などを引き起こし、患者の生活の質を著しく低下させ、寿命を縮めることもあります。長年にわたり、これらの疾患に対する治療法は対症療法や骨髄移植に限られており、根本的な治療は困難でした。特に骨髄移植はドナー適合が必須であり、全ての患者に適用できるわけではありませんでした。

主要な研究内容:胎児ヘモグロビン再活性化の発見

ハーバード大学医学部のスチュアート・オーキン教授は、国立心臓・肺・血液研究所のスウィー・レイ・テイン博士と共に、胎児期に存在するヘモグロビン(HbF)が成人期に成人ヘモグロビン(HbA)に切り替わるメカニズムに関する画期的な研究を行いました。彼らは、遺伝子「BCL11A」がこのスイッチの主要な抑制因子であることを特定しました。つまり、BCL11Aの機能を抑制することで、胎児ヘモグロビンの産生を成人期にも再活性化できるという発見です。胎児ヘモグロビンは酸素運搬能力が高く、鎌状赤血球症やベータサラセミア患者の異常なヘモグロビン機能を補うことができるため、この発見は治療標的として大きな可能性を秘めていました。

Casgevyの開発と臨床的影響

オーキン教授らの基礎研究は、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を用いた治療薬「Casgevy」の開発へと直結しました。Casgevyは、患者自身の骨髄細胞を体外に取り出し、CRISPR技術を用いてBCL11A遺伝子の特定の抑制領域を編集します。この編集により、BCL11Aの抑制機能が解除され、骨髄細胞が胎児ヘモグロビンを産生するよう再プログラムされます。その後、編集された細胞を患者の体内に戻すことで、持続的に胎児ヘモグロビンが供給され、疾患の症状が劇的に改善します。2024年には、Casgevyは世界で初めてFDAに承認されたCRISPRベースの遺伝子治療薬となり、鎌状赤血球症とベータサラセミアの患者に機能的な治癒をもたらす画期的な治療選択肢となりました。この功績は、遺伝子編集技術が難治性遺伝性疾患の治療に革命をもたらす可能性を世界に示したものとして、高く評価されています。

元記事: https://hms.harvard.edu/news/harvard-medical-school-professor-stuart-orkin-wins-2026-breakthrough-prize

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